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2016 · 07 · 19 (Tue) 08:19

▽『刑事マルティン・ベック 煙に消えた男』マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー

▽『刑事マルティン・ベック 煙に消えた男』マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー(角川e文庫)
 1966年。夏の休暇中だったマルティン・ベックは、ストックホルム警察に急遽呼び戻される。ジャーナリストのアルフ・マッツソンという男が東欧ハンガリーで行方不明になったのだ。マッツソンを雇う雑誌社は事件として記事を出したいと言っているが、外交上の問題があり、それを避けたいスウェーデン政府がマルティン・ベックをブダペストへ派遣することにしたのだった。("Mannen Som Gick Upp I Rok" by Maj Sjowall & Per Wahloo, 1966)
・〈刑事マルティン・ベック〉シリーズ第2作

 今回、読んでいる時は使わなかったけど、感想を書く時に「超便利だな(゚д゚)!」と思ったのが、KindleのX-Rayという機能。登場人物や用語が作品のどの部分にあるかがひと目でわかり、すぐそこへ飛べるという……。ミステリーにはうってつけの機能だけど、先に見ちゃうとネタバレにもなりそうな諸刃の剣(´ω`;)。「ラストの方に集中して出てくる名前って犯人じゃないの?」とか。
 面白かったんですけど、今回苦労したのはとにかく北欧東欧諸国特有の名前です。目撃者や関わる人間もすごく多く、途中途中でそれらの人間の証言などがまとめられているところもあり、正直誰が誰だかわからなくなってました(´・ω・`)。翻訳ものを好む私ですが、慣れない国の名前はやはり憶えにくい。
 前作の『ロセアンナ』同様、マルティン・ベックはコツコツと事件の手がかりを集め、整理し分析し、そこから推理をする。すごく……「仕事」って感じがする。天才的な閃きも派手なアクションもサービスシーンもなく、どちらかといえば「職人」の地味な一日をひたすら描いているに近い。その過程が、今回はさらによくわかるようになっていました。丁寧に証拠を観察して、わからないところをあぶり出し、それでも何も出てこなければ、また最初からやり直して──というのをくり返す。めっちゃ地味で、それに耐えられない人もいるだろうけど、私は嫌いじゃない、その作業。
 今回ちょっと名前でつまずいてしまったところはあるけれど、しっかり読んでいれば、おそらくマルティン・ベックと同様の推理を一緒に味わうことができるんじゃないか、と思った。訳者のあとがきや解説などにも書いてあったけど、「ミステリー」というより犯罪のことを描いている「犯罪小説」。
 冷戦時代、いわゆる「東側」であったハンガリーのブダペストの描写も印象的でした。なんと、ごはんがおいしそうだった。私にとってはそれが一番のサービスシーン。
 冷戦の頃、私は子供だったし、やはり島国の日本にいるとまったく実感としてつかめないところはあるんだけど、地続きでつながっている国であっても、入りにくい国、出にくい国、パスポートにスタンプも押さない国などいろいろあって、体制が違う場合には緊張感もある。淡々とした描写だけど、時代と異国の空気を大いに感じました。
 それにしてもマルティン・ベックのワーカホリックぶりはね──何も感情が見えてこないけど、これだけのことして結局あの結末に文句一つも言わない、というところに倦怠感のような読後感が伴う。事件はちゃんと片づくにもかかわらず、すっきりとしない読み口──けど、「犯罪」を相手にする「仕事」に、すっきりするなんてことはしょせん無理だよな、ということを改めて知るのです。ここら辺がこのシリーズの肝だと思うし、普遍性があります。今も昔も変わらぬ、犯罪とそれに関わる人間たちを描いた骨太な小説です。これは比較的短めで読みやすかったです。
(★★★★)

最終更新日 : 2018-01-10

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2016-07-24-11:03

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Re: はじめまして

>Oさま
 コメントありがとうございます!
 私、すごく昔、それこそ高見浩さん訳のマルティン・ベックシリーズがリアルタイムで出ていた頃はミステリーをよく読んでいたんですけど、最近の北欧ミステリーにはとんと疎くて……すみません。存じてはいますけど、ヴァランダーシリーズも読んでないんです。私が好きなのは、『煙に消えた男』のあとがきにも書いてあった87分署シリーズです。勉強不足ですね(´・ω・`)。ていうか古い……。あ、北欧だけではないですね。ロマンス以外はダメダメです(´ω`;)。
 ロマンスの感想も思いっきり自分本位なので、ほんと参考程度になさってくださいませ。でも、ロマンス好きになってくださってうれしいです。ミステリーもロマンスも、というなら、カレン・ローズがおすすめです。
2016-07-24-16:32

三原 白 URL [ 返信 ]