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●『恋泥棒に魅せられて』ジュリー・アン・ロング

●『恋泥棒に魅せられて』ジュリー・アン・ロング(二見文庫)
 両親を亡くしたリリーは、幼い妹を養うため、スリになった。ある日、身なりのいい紳士から金時計を抜こうとした時、腕をつかまれる。彼は法廷弁護士のギデオン。二人が再会したのは、リリーがまたスリに失敗した時だった。ギデオンは彼女を救い出し、突拍子もない計画に巻き込もうとする。リリーを極上のレディに仕立て上げ、彼が狙う侯爵令嬢の嫉妬心を煽ろうというのだ。("To Love A Thief" by Julie Anne Long, 2005)



 ヒーローが、ひどいけどいい奴。そして、ヒロインもスリで生計立てているけど、いい子。
 キャラ造形が光ります。めんどくさい社交界にすがりつかないと生きていけず、本来の自分を押し殺して金持ちの妻を勝ち取ろうとするヒーローと、底辺の生活の中でも誇りと夢を大切に生きるヒロイン。
 ヒーローは、敏腕弁護士として活躍し、とても評判がいいけど、なぜかついつい儲からない依頼ばかり受けてしまう。そして、伯父の持つ美しい荘園と屋敷と爵位をいつか受け継ぐことも決まっているけど、それはまだ先のことだし、その荘園も実は金食い虫で、伯父さんが金持ちであるわけでもないし、不幸な結婚生活を送っている妹を救う力もない。
 それらを全部、美貌と才覚でもってヒーローは隠している。まさに「色男、金と力はなかりけり」
 白鳥は水面下で必死に水をかいている、ということです。そこから脱却するために、彼は侯爵令嬢を嫁にしたい。彼女の金とコネが喉から手が出るほど欲しい。たとえ彼女がどうしようもなく自分本位なつまんない女でも(けど美人なだけマシなのか?)。
 庶民のヒロインからすると、

「愛しているわけでもないのに、何で?(゚Д゚)」

 みたいな状況ですが、彼女には彼女なりのプライドと妹のことがある。彼がなけなしの30ポンドを使って彼女を失敗から救ってくれたので(そうじゃないと監獄に入れられてしまっていた)、彼の計画を手伝ってあげることにする。
『マイ・フェア・レディ』を下敷きにしているそうなので、その後、ヒーローとその友人キルマーティン卿から特訓を受けることになる。
 そういえば、ヒーローが彼女に歩き方のコツを伝授する時、

「白鳥の泳ぐ姿勢を見てくれ」

 と言ってたなあ。彼女も結局、水面下で必死に水をかきながら、ヒーローのためにがんばることになる。愛しているから。彼が金持ちの侯爵令嬢と結婚できるように。
 脇役が、みんないいです。特に幼い妹とヒロインの会話や、キルマーティン卿のヒーローへの友情には泣いてしまった。
 そして、意味はちょっと違うけど、ヒーローが狙っている侯爵令嬢コンスタンスのキャラもいい。なんというか……本当に「何もない」人で。その「何もなさ」が絶妙だった。その分、最後の逆転の爽快感がほんの少し薄れたようにも思うけど、それはつまり、リアルだったからじゃないだろうか。
 お金の問題が都合よく解決するとかいうのではなく、これまたリアルで、でもほのぼのしたラストなところがとても好ましいです。
(★★★★)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : ヒストリカル 二見文庫 ★★★★

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    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
    評価は★★★★★が満点、★★★が標準点クリア。
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