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2013 · 01 · 29 (Tue) 15:09

●『愛の陰影』ジョージェット・ヘイヤー

●『愛の陰影』ジョージェット・ヘイヤー(MIRA文庫)
 18世紀のパリの裏通りで、悪魔と呼ばれる英国のエイヴォン公爵ジャスティンは一人の少年を買い上げる。レオンという名のその美少年は小姓として公爵に仕え、パリ社交界の人々の目を奪った。だが公爵は、レオンが実は女性で、しかもその出自までわかっていた。長年のある恨みを晴らすため、彼女を利用するつもりだったのだ。("These Old Shades" by Georgette Heyer, 1926)

 仕事その他が忙しくて時間がかかりましたが、面白かったです。
「ヒストリカルロマンスの始祖」と言われているだけあって、そのプロットは秀逸。ヒーローの傲慢な思惑に利用されるヒロイン。彼女の父親に恨みがなければ、彼はヒロインに目を止めることはなかったはず。良好な関係であっても、それならさらにその可能性は低かったんじゃないか。
 かつて自分にもあった良心が、ヒロインの純真さ、誠実さに触れるうちに目を覚まし、自らを恥じ入り、いつしか彼女を愛するようになる。「自分は彼女にふさわしくない」と思いながら……。
 彼の思惑が、現代では瑣末にしか思えないのがいいです。名誉の問題なので、あの当時ではどうにも我慢ならないことだったんでしょうが、

「こんなことに利用されたなんてヒロインが知ったら、彼は捨てられちゃうのではないか(´Д`;)」

 とハラハラできる(なんか楽しむポイントが違う気が……)。
 現代だとヒロインの逆襲があったりしますが、ひどい状態の自分を拾ってくれたことにひたすら感謝する彼女は、改心した彼のすべてを受け入れる。ヒーローが復讐にこだわるようなつまらない人間だったからこそ、彼は彼女と出会い、真人間になれたと言えるよね。
 昔の小説ですから、登場人物の葛藤が単純に見えて物足りないという人もいるかと思いますが、いろいろと想像の余地(もしかしてこれってつまり萌え!?)があるので充分補完できます。特にヒロインの生意気な言動に次第に変化していくヒーローの心情を妄想すると楽しい。

 ところで、読んでいてどうもヒロインの口調というか、物言いが気になって仕方なかった。
 小姓だった時はよかったんだけど、女の子になってもあまり変わらない感じで、自分の嫌いな人に対してはみんな、

「あの人、ばかなんです!」

 で済ます。
 不快というわけではなく、まるっきり子供。12歳から19歳まで男の子として育てられたから、女の子を12歳からやり直しているみたい。
 ヒーローの弟ルパートの方が年上なのに、とても上から目線で偉そう。なんか本気でケンカしてそうだし。
 この態度、この会話に、なぜか既視感を覚える。
 異国で拾った女の子を養女にするとか、男の子みたいなしゃべり方をする女の子とか、どこかで読んだ気が──と考えて、はたと気づく。

「よつばだ──!」

『よつばと!』というマンガに出てくる小岩井よつばとヒロインのレオニーは似てる。おそらく、公爵との歳の差はとーちゃんと同じくらい。となると、公爵の友人ミスター・タヴェナントはジャンボで、ルパートはやんだか!
 そりゃ、

やんだルパートはバカだな」

 と言われるはずだ(^^;)。
 レオニーの世話を焼く女性陣は、お隣り綾瀬家の姉妹か……。しかも、ダンボーまでいる! 「ムッシュー・ダンヴォー」という人が出てくるんだよ!
 ──と、想像の余地がありすぎて、無駄なことまで考えてしまったよ(´∀`;)。
(★★★★)

最終更新日 : -0001-11-30

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