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▲『たんぽぽ娘』ロバート・F・ヤング

▲『たんぽぽ娘』ロバート・F・ヤング(集英社文庫コバルトシリーズ)
 一人で山小屋での休暇を過ごすことになってしまったマークは、丘の上で若く美しい女性ジュリーと出会う。彼女は240年未来からタイムマシンでやってきたと言う。屈託ない彼女のおしゃべりを聞いているうちに、次第に惹かれてゆくマーク。ずっと妻一筋だったのに、眠る時に浮かぶのはたんぽぽ色の髪を揺らし笑うジュリーの言葉──「おとといは兎を見たわ。きのうは鹿。今日はあなた」("The Danderion Girl" by Robert F. Young, 1961, 1965)
・アンソロジー『海外ロマンチックSF傑作選2 たんぽぽ娘』



 最近、小耳にはさんだのですが、この作品が収録されているコバルト文庫古本の値段がAmazonで急騰しているという──。
 何で? と思ったら、某ドラマで取り上げられたのですね……。うおっ、私の持ってる奴ってお宝!?(´∀`;)
 手放す気はもちろんないですが。買った時から、ずーっと大切にしています──と言いたいけど、今手元にあるのは古本っぽい。っていうか、よくわからない……憶えてないくらい昔のこと。
 実はこのアンソロジーは、このブログを立ち上げた時から紹介しようと思っていたのですが、作品数も多いしどうしようかなあ、と思っているうちに時が立っていたのでした。今この作品を取り上げるのは世間の話題におもねるみたいでありますが、これもまた読書や感想書くきっかけということですね。
 他の作品は追々。(気が向いたら?orz)

 で、短編なので読み返しはすぐです。
 私はこの作品、「やったもん勝ち」なものだと思うのです。中年になってから出会った若く美しい未来人の女性に、妻に罪悪感を抱きながらも恋をしたら、実は彼女と妻は同じ人だった、という──もちろん、他にもこういうストーリーはあるんでしょうが、すぐに思い浮かばないし、これほど短く美しく、簡潔でしかも印象深い物語というのはあまりないかもしれない。
 言いたいことがすべて言われている、みたいなね。こういうプロットですごくいい物語を書いても、最初に思い出されるのはきっと『たんぽぽ娘』なんだろうなあって……。
 ただ本国アメリカでもそうなのか、というのは知りませんが(^^;)。日本人が好きそうな物語ではあるよね。
 それはさておき。
 私、この作品大好きですけど、一つだけ、昔読んだ時からモヤモヤしている部分がある。それは、主人公マークがジュリーを見ても妻のアンだとわからなかったところ。
 初めて読んだ時、私は高校生だったと思うのですが、ちょっと腑に落ちなかった。それは多分、

「彼女ほど若さを失わない美しい女性が、なぜ老いをおそれたのだろう?」

 ということに実感が湧かなかったから、というのが今ならわかる。自分が年をとって、若い頃の自分のような魅力がもうない、と夫が気づくことを恐れるというのは、高校生にはわからないよな(´ω`;)。
 でも、この文のあとにはこう続く。

「彼の目には、妻が決して若さを失わないことぐらいわからなかったのだろうか?」

 ん? 「彼の目には」?
 これは……これはつまりもしかして──ノロケ、ですか?( ゚Д゚)

「あんなに若くてはつらつしてたのに、こんなおばちゃんになってがっかりしたでしょ?」
「そんなことないよ! 君は全然変わってないよ!ヽ(゚∀゚)ノ」


 というのを社交辞令ではなく、本気で思っているということ?
 いや、妻は変わってないわけじゃなく変わっているんだよね。変わっていないのは、彼の気持ちだ。初めて会ってひと目惚れした時からずっと。「若さを失わない」というのは、そのひいき目なんだ(´Д`;)。
 それじゃ若いジュリーを別人と思ってもしゃあないか。一応、既視感があったということだし。
 あと、ジュリーと同年代の頃とマークと同年代の今ではやはり感じ方が違うんだな、と改めて考える。
 先ほどの「老い」についてもそうだけど、今ならあの若さだったからこそジュリーの選択があったと思えるし、その後の不安や秘密に怯える気持ちより、彼と一緒にいる幸せの方が優っていたというのもわかる。旦那のひいき目だけでなく、それが彼女の雰囲気を変えた──つまり、成長したというのも。
 ──と、いろいろ深読みができて楽しい(´д`*)。
 高価な古本を手に入れるのは大変でしょうが、この『たんぽぽ娘』が収録されたロバート・F・ヤングの短篇集が新たに出るようですので、興味のある方はそちらをどうぞ。

[3/14追記]
 ネットを回ったら、けっこう「どうしマークはジュリーとアンが同一人物だとわからなかったのか」という疑問が飛び交っていたので、私個人の見解をちゃんと書こうかしらと思った。
 いや、単に、

「会った当時から変わっていないから愛している」

 のではなく、

「変わっているのに気づかないくらい、今の妻を愛している」

 ということでしかないのですが。「彼の目には」という一文から推測するに。
 妻が歳をとって別人のように変わっていても、まったく気にしていない旦那だと私は思う。秘密がバレるまでも幸せだったんだろうから、夫婦ともどもいい変化をしているんでしょうね。

[16/8/12追記]
 読み返したら何か足りないような気がして、また考えました(しつこい)。
 若いワインとヴィンテージワイン、というのが頭に浮かぶ。同じ畑のぶどうで同時期に作られたものでも、若い時期と熟成したあとでは味が違うじゃないですか。毎日飲んでいたって、毎日少しずつ熟成していったら、味が変わったってわからないよね? もちろん両方おいしいんですよ。しかし、若い時と今では全然味は違う。
 遠い昔に飲んだ味は忘れても、今の味が一番好き──そういうことなんじゃないか、と思ったりした。
(★★★★★)
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genre : 小説・文学

tag : パラノーマル 集英社文庫 ★★★★★ アンソロジー

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    Author:三原 白
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    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
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