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2013 · 12 · 02 (Mon) 14:51

▽『火災捜査官』スザンヌ・チェイズン

▽『火災捜査官』スザンヌ・チェイズン(二見文庫)
 ニューヨーク市消防局(FDNY)の火災捜査官ジョージアは、友人で科学捜査研究所のフランクルから超高熱火災〈HTA〉による連続放火事件の資料を見せられ、FDNY上層部がその事実を揉み消しているのでは、と考え始める。予告めいた手紙を寄こす放火犯とおぼしき人間は、“第四の天使”と名乗っていた。("The Fourth Angel" by Suzanne Chazin, 2001)

 ロマンスっぽい、という噂を聞きつけて読んでみたのですが、ロマンスの要素は薄い。職場恋愛って感じですかね。
 それより、お話がとにかく面白かった。
 最初の方読んでいて、

「これ、絶対人足りてないよねえ(^ω^;)」

 と思っていたら、あとがきでは「さらにオフィス閉鎖」とか書いてあって、10年以上前のことだとしても「どうなの、これは(-_-;)……」と思った。
 そういう状況だから、めんどくさそうな放火事件はほっとかれるのか、と考えたり。検挙率みたいなものが結局は重要視されるわけですしぃ。いくら時間かけても成果が出そうにないものがやっぱ後回しにされるのかよ、と。近々の〆切があるわけじゃないしね。
 いくつかの放火事件の関連性とそれに関与しているであろう人間にヒロインが近づいていくわけですが、警察よりもさらにマッチョらしい消防署の男たちにも負けない。ていうか、負けてたらまず火災捜査官になれない。日本も消防士として火災現場に行く女性もいるそうですが、アメリカは数年現場を踏まないと捜査官に昇進できないという。
 いじわるやセクハラされたり、いやみを言われたりしながら、ヒロインは捜査をしていくわけですが、はっきり言って犯人に先を読まれるわけです。けど、それでもめげない。シングルマザーとしての息子への負い目や、殉職した父への想いと同じようにかつての仲間を死なせてしまったことへの罪悪感、思うようにキャリアを積めない焦燥感、食べるための仕事と亡くなった人々のための誠心誠意の捜査との板挟み──いろいろなものに突き動かされながら、不器用だけれど確実に真相に近づいていく。
 根性あるヒロインで、それに惚れる男も出てくる、というわけです。
 ラストの方で多少とっちらかった印象はありますが、それでも充分盛り上がる。早く真実が知りたくてたまらなくなります。こう言ってはなんですが、ロマサスが薄く感じる濃密さを堪能。
 放火も一つの事件、と考えると警察ものとさほど変わらないように思えるけど、なんか違う気がした。どうしてかな──と思ってネットで火災調査のことを調べていたら、こんな言葉を見つけました。

「火災というのは生き物です」

 そうか……。火災というのは、私たちにとってもっとも身近で、しかも恐ろしい「怪物」なのね、と思いました。それがとてもよくわかる作品だったから、面白かったんだなー。
(★★★★)

最終更新日 : -0001-11-30

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