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2014 · 04 · 21 (Mon) 10:12

●『不埒な贈り物』コートニー・ミラン

●『不埒な贈り物』コートニー・ミラン(MIRA文庫)
 貸本店を切り盛りするラビニアは、弟のジェームズの詐欺被害のために、十ポンドを支払わなければならなくなる。これでクリスマスに何もお祝いできない──落胆していたラビニアへ手を差し伸べたのは、事務員のウィリアム。彼は十ポンドのかわりに、彼女自身を要求した。("This Wicked Gift" by Courtney Milan, 2009)
・アンソロジー『クリスマス・オブ・ラブ──十九世紀の愛の誓い』

 ヒストリカルだと貴族が主な登場人物なのが多いですが、この作品は二人とも庶民です。しかも貧乏。
 ヒロインはとても現実的な人ですが、ヒーローがだいぶネガティブなスパイラルに陥っている。口癖は多分、「どうせ俺なんて(´・ω・`)」だと思う。
「不埒な贈り物」というタイトルどおり、ヒーローはひょんなことで手に入れた十ポンドをヒロインのために使い、そのかわり身体を要求します。本当は彼女と結婚したいんだけど、

「俺と結婚したって、みじめな生活しかさせてあげられない(´・ω・`)。俺はほんとにダメな人間だ」

 とテンパッたあげく、「ダメならとことんダメになろう!」と思ったらしい。
 しかし、ヒロインは何もかもお見通し。十ポンドのあてがなかったわけでもなく、そもそも払う必要もなかった、ここに来たのは「わたしが来たかったからだ」と言う。
 ネガティブスパイラルに絶賛ハマり中のヒーロー、それを聞いてさらに落ち込んでしまう。落ち込ませてしまったヒロインも落ち込む、という、まさにドツボな状態。
 まあ、暗い話ではある。ロマンスというより、なんだか現代の夢も希望もない若者を見ているようだった。二人の気持ちのすれ違いも、意地の張り様も、見つからない抜け道も、いつの世も変わらない。貧乏は悲しいし、しつこい因襲の根を断ち切るのも難しい。
 でも、人生はほんの少しで変わる、という物語の本質も存在していました。幸せなエピローグが小説としての完成度を下げているけど、ロマンスとしては必要だというのはわかる。
 チャップリンの言葉「人生に必要なもの。それは勇気と想像力、そして少しのお金だ」を思い出したよ。本当にそうだよなあ、というお話でした。ちなみに原題の“Wicked”には、「悪い」という意味も「いい」という意味もあるそうですね。不思議な言葉だ。最近の日本語だと「ヤバい」とか?
(★★★★)

最終更新日 : 2014-10-04

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