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●『拾われた1ペニーの花嫁』カーラ・ケリー

●『拾われた1ペニーの花嫁』カーラ・ケリー(MIRA文庫)
 老婦人のコンパニオンをしている未亡人のサリーは、ようやく着いたデヴォンジャーの町で仕事を失ったことを知る。もうお金もない……これからいったいどうしたらいいの? 夫が自殺し、息子も失って五年、つらいばかりの毎日だった。途方に暮れた彼女に、結婚相手にすっぽかされた海軍提督のチャールズが「便宜上の結婚をしないか」と驚くような申し出をした。("The Admiral's Penniless Bride" by Carla Kelly, 2011)



 最初の設定からして泣けてしょうがなかった。・゚・(ノД`)・゚・。
 あらすじにも書きましたが、まず夫が無実の罪を着せられて自殺し、そのあと石炭を買うお金もなくて、寒さで幼い息子を亡くしてしまう。旦那の自殺も気の毒だけど、自分の腕の中で小さな息子が死んでいくのを見ていたヒロインの気持ちを思うとね、もう(>_<。)……。
 その時の気持ちを表すこんな文章があった。

 ピーター(息子)がいなくなると、自分の墓を掘るスプーンを手渡されたような気がしたものだった。希望もなく夢もなく、毎日毎分そのスプーンで少しずつ墓を掘っていく。それが残された自分の人生のすべてだ、と。

 ここまででなくても、今のこの厳しい世の中、希望も夢もなく「死ぬために生きる」日々を過ごしているだけなんじゃないか、と感じている人ってたくさんいそう……。
 この作品に出てくる人は、多かれ少なかれそんな人ばかり。
 ヒーローは、45歳(ヒロインは32歳)と少し年いってますが、名誉と財産は充分手にしています。終の棲家としての屋敷(ちと難あり)も手に入れた。あとはおせっかいな姉たちが口出しできないように結婚するだけ、ということで、ヒロインに便宜結婚を申し込みます。
 しかし彼も、体力に限界を感じての引退なので、陸(おか)に上がって何をしたらいいのかわからない。虚しさを感じて、ヒロインに「自分が何をしたらいいか、探してほしい」と頼んだりする。
 元の持ち主が好色な変態貴族だったせいで悪趣味満載な新しい屋敷(しかし海の眺望は抜群)に集まってくる使用人や、隣人たちもそんな感じ。ヒロインと同じように仕事がなくあきらめかけていた家庭教師、宿の主人から虐待を受けていた少女、ユダヤ人だからって近所づきあいをしてもらえなかった資産家夫婦──。屋敷からエロい彫像や壁画が取り除かれるように、新しい環境で新しい自分になって、新たな人生をやり直そう、とみんな少しずつ進み始めます。
 だけど、ヒロインには秘密というか──夫の自殺の原因になった事件は海軍絡みのことなので、それをヒーローに隠し続けている。これが日々積み上がっていく穏やかで幸せな日々に陰を落としていくわけです。
 彼女の隠し事は仕方ないと思えるんですが、本人がいろいろと気に病む様子がつらかった(´・ω・`)。次第にそれは明らかになっていくんだけど、ちょっと偶然に頼り過ぎかしら、と思わなくもなく(´ω`;)。
 しかし気になるところはそこのみと言っていいくらい──あ、ちょっとモヤッとしたところもあった。いつの世にも、理不尽なことはある。それもまた物語が描かないといけないことではあるけれども……。
 なんにせよ、心優しく真面目な人たちが幸せになる物語は、読んでいて気持ちいいです。そういう人たちこそ希望を持てる世の中になるといいよね……。
(★★★★)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : ヒストリカル MIRA文庫 ★★★★

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    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
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