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2014 · 06 · 28 (Sat) 15:52

◆『あの日の風が恋しくて』スーザン・ウィッグス

◆『あの日の風が恋しくて』スーザン・ウィッグス(MIRA文庫)
 海辺の人気イタリアンレストラン〈セレスタズ・バイ・ザ・シー〉のオーナー、ローザは10年ぶりに初恋の相手アレックスと再会する。彼はこの町に別荘を持つセレブの息子で、庭師の娘であるローザとは9歳の頃から夏の間の友だちだった。18歳の時、二人は愛し合っていることに気づくが、直後にローザは悲劇に見舞われ、彼は彼女を支えることなく町を去っていった──。("Summer By The Sea" by Susan Wiggs, 2004)

 ずいぶん前に買ったものなんですけど、読んだらとっても面白くて、ほぼ一気読みでした。
 ヒロインもヒーローも性格がよくて、プロットも巧みで、何より食べ物がおいしそう! これが実は、すごい驚きだった!(゚Д゚)
 シェリー・トマス『誘惑の晩餐』の時にも書きましたけど、私は小説(だけでなく映画、マンガ等でも)の中に出てくる食べ物への執着がハンパない人間。物語にとって食材や料理の描写なんてまったく必要ないものなんですが、おいしそうに描かれていると非常にうれしい。
 ところがロマンス小説っていうのは、セレブな登場人物も多いので「豪華な食事」みたいなのは出てくるのですが、具体的な味の描写とか食べた気分とかは全然書かれていない。食べ物の描写って生活感や価値観が出るのにね。ただ、ハーレは枚数の都合かもしれない。それにしたってイギリス人の夕食がオムレツとスクランブルエッグばっかってどうゆうことっ!?ヽ(`д´#)ノ
 ぜえぜえ……失礼しました……orz
 とにかく、この作品はヒロインがイタリア系アメリカ人で、9歳の時に亡くなった母──マンマが超料理上手だったという設定。レストランも、元々はこれまたおいしいピザ屋さんから引き継ぎ、マンマのレシピを生かして作り上げたもの。ヒロインも料理上手だし、その周囲も「どうせ食べるのならおいしいものがいいのに決まってる」という人たちばかり。
 こういう意欲は、イタリア人と日本人くらいなんでしょうかね、もしかして──と思うくらい。あとがきで訳者さんが「スーザン・ウィッグスってイタリア系だったっけ!?」と疑うのもむべなるかな(くわしいことはわからなかったようですが)。
 でもまあ、少なくとも作者が食いしん坊なのは確かだと思う。そういう人じゃないと、こんなふうには書けない。イタリア料理はおいしいけど、チーズやバターの量が怖いのよねえ。レシピページもあるんだけど、そこに「低脂肪でないリコッタチーズ」と記されているのを見るたび、戦慄する。
 レシピだけでなく、具体的に食べているシーンもたくさんあるんですけど、私が一番「いいなあ(´Д`*)」と思ったのは、マンマが作ったおやつパンを近所の子供も食べに来るってところ。みんなで外で並んで座って、できたての甘いパンをぱふぱふ食べているシーンが目に浮かぶようでした。
 ヒロインにはこういう思い出がたくさんあるのですが、ヒーローにはない。冒頭で彼の母親が自殺をしたということが知らされます。家族は誰もその原因がわからない。
 ヒーローが子供の頃から、彼の家庭は崩壊しています。お金持ちだけど、父親は忙しくて家庭を顧みないし、姉は寄宿舎に入っている。彼自身は喘息を患い、母親がべったりと張りついている。でもその母親も、喘息の息子の前でタバコを吸うような人なんだよね(´・ω・`)。肥大した自己愛のみの人。もうほんとにそれだけの人。
 そこに現れたヒロインと夏の間を一緒に過ごす友だちになり、ティーンエイジャーになって喘息がよくなってからちょっとはっちゃけた時期があったり、ヒロイン父がひき逃げにあってから疎遠になったりしますが、結局は彼女の元へ戻ってくる、というお話です。
 最初の方はヒーローがやな奴っぽい。なんか糟糠の妻を捨てた男のよう。でも次第に、身体が弱いメガネ男子の頃から中身は変わっていないというのがわかってくる。優しいヒロインだけど、ヒーローよりも強い。
 女性の生き方の物語でもありますね。
(★★★★☆)

最終更新日 : -0001-11-30

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