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2014 · 09 · 25 (Thu) 12:28

●『ただ魅せられて』メアリ・バログ

●『ただ魅せられて』メアリ・バログ(ヴィレッジブックス)
 英国バースで女学校を経営するクローディアは、ある日、親友スザンナの手紙を携えたアッティングズバラ侯爵ジョゼフの訪問を受ける。所用でロンドンを訪れる予定の彼女と卒業生たちをエスコートしたいとのことだが、貴族を毛嫌いしているクローディアには気が重かった。("Simply Perfect" by Mary Balogh, 2008)
・〈シンプリー・カルテット〉シリーズ第4作

 珍しく一気読みをしました。
〈シンプリー・カルテット〉シリーズ(『ただ忘れられなくて』『ただ愛しくて』『ただ会いたくて』)は、どれもよかったです。『ただ愛しくて』だけちょっと評価低めにつけちゃいましたが、それは好みの問題でしかないとわかっています。作品的にはどれも素晴らしい。
 今回もよかった……。シリーズを通してのいくつかの謎も判明します。
 ただ気になったのは、とにかく登場人物が多くて──。シリーズ最後だからかもしれないけど、ヒロインへのいやがらせのようにこれでもかと貴族大行進ですよ。誰が誰だかわからなくてもそれなりに読めるし、そんなには混乱しないのですが、

「貴族ってなんで二つ名前持ってんだよ(゚Д゚)ゴルァ!!」

 と叫びたくなったりもして。
 しかしその「貴族」というものがテーマの根幹でもあるので、仕方ない。
 ヒーローは現在侯爵、父親の死後には公爵を継ぐことになっていて、貴族の恩恵と義務を意識してずっと生きてきた人。ある意味、彼は貴族の「良心」として描かれている。そして、若い頃のヒロイン(現在35歳、ヒーローも同じ)の純愛を踏みにじり、貴族嫌いの基礎を作った彼女の幼なじみは反対に「負の部分」の象徴。
 貴族の義務や役目を大切にしようとするヒーローは、それにふさわしい結婚をしようとしている。その相手というのが、シリーズ一作目『ただ忘れられなくて』でヒーローの婚約者だった女性らしいんだけど、すっかり忘れてるな(^^;)。この人、「結婚」ではなく「侯爵夫人」あるいは「公爵夫人」として就職するというのなら最適な能力の持ち主であろう。ヒーローやその家族も、結局その能力を買っての結婚なんだよね。
 そのビジネスライクな「結婚」の範囲で幸せになろう、誠実でいようとヒーローは思っているのですが、ヒロインとの出会いを通してごまかしていた部分、見なかったふりをしていた部分が露呈してくる。
 彼には、実は愛人(故人)との間に娘がいる。目が不自由なんだけど溺愛していて、ヒロインの学校で勉強できるかどうかを確かめたかったのですね。「それが近づいてきた理由か(´・ω・`)」とちょっとがっかりするヒロインだけど、その子がとてもいい子なので、すぐに仲良くなる。
 ヒーロー娘のエピソードは、どれも泣けます。けなげな子なのでねえ。
 でも、結局貴族としてふさわしい結婚をしたら、娘とは一緒に暮らせないし、ずっと隠しておかないといけないということに気づいてくるわけです。自分がジレンマを抱えていて、改めて自分や娘の幸せを考えなければならないとわかる。
 でも、その時にはもう婚約してしまっていて──というお話。なかなかのアンハッピーエンドフラグです。
 ここら辺の解決方法がだいぶ前から見えていたのが、ちょっと惜しかったかなー。変な希望ですけど、ヒーローの婚約者ポーシャの見せ場があってもよかった。
 この人、割とこっぴどくコケにされてるのよね(´ω`;)。いやな人ではあるんだけど、それが爽快感につながらないのは、バチが当たるほど悪いことはしてないからなのかも(『ただ忘れられなくて』でやってたのかもしれないけど)。まあ、結局はバチになっていない(?)から、そういう点で座りが悪いだけかもしれないなあ。
 いい作品だからこその気になる部分ってことかしらね。
(★★★★)

最終更新日 : 2014-09-25

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