2014 · 12 · 16 (Tue) 08:15 ✎
▽『その女アレックス』ピエール・ルメートル(文春文庫)
30歳の美女アレックスはある夜、何者かに拉致され、監禁される。目撃者がいたことから、誘拐事件の捜査に乗り出したパリ警視庁のカミーユ・ヴェルーヴェン警部は、一向に手がかりがつかめないことから、いらだちを募らす。だが、事件は思わぬ方向に転がりだす。("Alex" by Pierre Lemaitre, 2011)
30歳の美女アレックスはある夜、何者かに拉致され、監禁される。目撃者がいたことから、誘拐事件の捜査に乗り出したパリ警視庁のカミーユ・ヴェルーヴェン警部は、一向に手がかりがつかめないことから、いらだちを募らす。だが、事件は思わぬ方向に転がりだす。("Alex" by Pierre Lemaitre, 2011)
各方面で話題になっているフレンチミステリです。
あらすじもこれくらいしか書けないね……。この転がりだしたところから、読者はどんどん思わぬ方向に翻弄されることになります。
これまたここはネタバレブログなので、途中までストーリーを書いてしまう。でもこの作品は、本当に何も知らずに読んだ方がいいと思うので、読みたい人はこれ以降見ないでください。
ちょっと行開けるか(珍しい)。
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監禁されたアレックスは単なる被害者ではなく、誘拐犯の息子失踪の鍵を握っている人物。犯人が誰か気づいたアレックスは、息子の居場所を告げようとするが、その前に彼は警察に追い詰められ、死んでしまう。警察は彼女の監禁場所をなかなか見つけられず、やっと踏み込んだ時には、彼女の姿はなかった。
と、ここまでで半分行ってないのよね。極限まで追い詰められた彼女が必死に逃げようとする方法がまた壮絶なのです。そして、そこまでして生き残り、やり遂げようとしたことも壮絶。
アレックスの最初の印象は「とても強い女」だった。強いヒロインが好きな私としては、彼女に大変惹かれました。次第に正体がわかるにつれて「怪物」のように見えてきたけれども、彼女の「強さ」の印象はあまり変わらなかったな。
でもラストには、強くも賢くもない「ただの小さな女の子」という姿になっていく。
ひどく悲しく痛い復讐譚だし、切なさもあるんだけど、感傷的ではない。人間味ある刑事三人組がそれぞれの憤りを秘めながら、“真の犯人”を追い詰めていく第三部の緊張感には、ページを繰る手が止まりません。BGMは映画『砂の器』のサントラ『宿命』で。もちろん、菅野光亮のですよ! ──いや、『砂の器』は辛気臭いかな(映画、音楽ともに大好きですけど(´ω`;))。でも、アレックスの過去をバックにした取調室でのシーンで、つい思い出してしまった。
またこの刑事三人組がいいんだよね。背が低いというより小さいカミーユ。お金持ちで教養あふれるイケメンのルイ。しみったれで人にたかってばかりのアルマン。みんな個性的で優秀。上司たちもそれぞれいい味を出していました。カミーユの過去もかなりきつく悲しいものですが、それを癒やした人の意外さが面白かった。
何も知らないで読んだので、あっちこっちにひっぱっていかれる物語の楽しみを味わえました。章立てが短く、メリハリがあってとても読みやすい上、過剰な描写もない。ロマンスを読んでいても思うけど、やたら長くしていないところもいいよね。これくらい無駄なく削ってほしいよ(´・ω・`)。
(★★★★☆)
あらすじもこれくらいしか書けないね……。この転がりだしたところから、読者はどんどん思わぬ方向に翻弄されることになります。
これまたここはネタバレブログなので、途中までストーリーを書いてしまう。でもこの作品は、本当に何も知らずに読んだ方がいいと思うので、読みたい人はこれ以降見ないでください。
ちょっと行開けるか(珍しい)。
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監禁されたアレックスは単なる被害者ではなく、誘拐犯の息子失踪の鍵を握っている人物。犯人が誰か気づいたアレックスは、息子の居場所を告げようとするが、その前に彼は警察に追い詰められ、死んでしまう。警察は彼女の監禁場所をなかなか見つけられず、やっと踏み込んだ時には、彼女の姿はなかった。
と、ここまでで半分行ってないのよね。極限まで追い詰められた彼女が必死に逃げようとする方法がまた壮絶なのです。そして、そこまでして生き残り、やり遂げようとしたことも壮絶。
アレックスの最初の印象は「とても強い女」だった。強いヒロインが好きな私としては、彼女に大変惹かれました。次第に正体がわかるにつれて「怪物」のように見えてきたけれども、彼女の「強さ」の印象はあまり変わらなかったな。
でもラストには、強くも賢くもない「ただの小さな女の子」という姿になっていく。
ひどく悲しく痛い復讐譚だし、切なさもあるんだけど、感傷的ではない。人間味ある刑事三人組がそれぞれの憤りを秘めながら、“真の犯人”を追い詰めていく第三部の緊張感には、ページを繰る手が止まりません。BGMは映画『砂の器』のサントラ『宿命』で。もちろん、菅野光亮のですよ! ──いや、『砂の器』は辛気臭いかな(映画、音楽ともに大好きですけど(´ω`;))。でも、アレックスの過去をバックにした取調室でのシーンで、つい思い出してしまった。
またこの刑事三人組がいいんだよね。背が低いというより小さいカミーユ。お金持ちで教養あふれるイケメンのルイ。しみったれで人にたかってばかりのアルマン。みんな個性的で優秀。上司たちもそれぞれいい味を出していました。カミーユの過去もかなりきつく悲しいものですが、それを癒やした人の意外さが面白かった。
何も知らないで読んだので、あっちこっちにひっぱっていかれる物語の楽しみを味わえました。章立てが短く、メリハリがあってとても読みやすい上、過剰な描写もない。ロマンスを読んでいても思うけど、やたら長くしていないところもいいよね。これくらい無駄なく削ってほしいよ(´・ω・`)。
(★★★★☆)
最終更新日 : 2015-01-08