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2015 · 01 · 12 (Mon) 09:56

●『偽りの婚約者とくちづけを』アン・グレイシー

●『偽りの婚約者とくちづけを』アン・グレイシー(フローラブックス)
 1816年、英国。両親を亡くした五人姉妹は、横暴な祖父に引き取られ、毎日理不尽な虐待にさらされていた。だがある日、祖父が階段から落ち、足を怪我する。チャンスは今しかない、と決意した長女プルーデンスは妹たちを連れ、ロンドンの大叔父の元へ避難する。そこでプルーデンスは、ひょんなことからスコットランドのディンスタブル公爵と婚約していると嘘をついてしまう。だが彼は、想像とはだいぶ違っていた。("The Perfect Rake" by Anne Gracie, 2005)
・〈麗しのメリデュー姉妹〉シリーズ第1作

 おすすめされて読んだのですが、期待を裏切らないアン・グレイシー!(ありがとうございました!>Mさま)
 大変面白かったです。最初の方は、ヒロインを好きすぎるヒーロー(名前はギデオン)のアホっぽい言動や心情がおかしくてたまらなかったのですが、後半は涙涙でした。
 ていうか、ヒロインかなりかわいそうです(;ω;)……。油断していた……。キャサリン・コールター並にヒロインが(作者に)いたぶられていた。表現は割とソフトなのですが、相当ひどい目にあってる。人によっては地雷かもしれない……。ジジイの虐待、シャレにならんだろ(゚Д゚)ゴルァ!!
「これはあんたの嫌いな『嘘をつくヒロインの話』なんじゃないの?」と言われそうですが、彼女は自分のために嘘はつかないんだよね。いつでも自分は二の次。妹たちが虐待されないように、妹たちが幸せになるように、と願うばかり。不器用で世間知らず(これは祖父に家から出してもらえなかったから)だけど、それでもがんばる。嘘だって本当は全然上手じゃなくて、ヒーローにはバレバレです。
 ヒーローが(ロマンスによくいる)「だましたな(゚Д゚)ゴルァ!!」と逆ギレするようなアホじゃなくてよかった。卑怯で強欲な男にだまされたヒロインを、一時的なショックの感情から遠ざけたりもしなかった。偉い! いや、それが普通な気もする!(´ω`;)
 ともかく、苦労ばかりのヒロインがやっと幸せになれるラストは、とても清々しいです。アン・グレイシーのロマンスのラストは、いつも正しくハッピーだな!

 ところで、読み終わるまではヒーローのアホっぽさについて書こうとしていた私。
 彼は評判の放蕩者です。ディンスタブル公爵のいとこで、ヒロインが嘘の言い訳をしようと訪ねた公爵の屋敷で最初に応対して、ひと目惚れ(自覚なし)をする。
 ヒロインの妹たちはみんな母親似の美女ぞろい。その中で父親似のヒロイン一人が「不器量」と言われているのですが、なぜかヒーローだけは彼女のことを「絶世の美女」と思っている。本気で思っているから、周囲と会話が噛み合わなかったり、唖然とさせたり、誤解されてヒロインを怒らせたりしても、「え? なんで(゚Д゚)?」みたいな反応です。
 特に最初の方で、いとこの公爵が「プルーデンスは、自分の結婚の条件に合う」みたいなこと言い出してからの会話がおかしかった。

「あんまり美人の嫁っていやなんだよね。彼女は実に安心できる平凡さだよ。どっちっていうと、ブスに近い──」
「( ゚Д゚)ハァ? 何言ってんの!? ブスじゃねーし! まれに見る小さな宝石だし! お前の条件には全然合わねーし!」

 こんな感じで必死に反論する。そして、
「なんでみんな、俺の嫁のこと『ブス』って言うんだよ!ヽ(`Д´)ノプンプン」
 と怒り、その調子でヒロインをほめて、

「本気で言ってるわけないよね?(´・ω・`)」
「この人、視力に異常があるのかしら?(´・ω・`)」


 と思われるという──恋する男のアホっぽさ全開で、笑えました。
 前半のこのラブコメな展開があるからこそ、後半のシリアスさが引き立ちます。
 脇役がまたいいんだよね。公爵や大叔父さんも幸せになってよかった。そして、悪役はとことんいやな奴ら。そういうきっぱりした描き方も面白かった。腹立つけどなー(`Д´#)。
(★★★★☆)

最終更新日 : 2015-01-12

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