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2015 · 06 · 19 (Fri) 10:04

●『ラストワルツはあなたと』アン・グレイシー

●『ラストワルツはあなたと』アン・グレイシー(フローラブックス)
 1818年、英国。メリデュー家の双子の片割れ、ホープはある舞踏会でセバスチャン・レインと、その日最後のワルツを踊った。ホープは、つらかった幼少期に、夢の中に現れ踊った男性を待ち望んでいる。この人こそ、彼なのだろうか──だがセバスチャンは、すでに求婚相手を決めていた。("The Perfect Waltz" by Anne Gracie, 2005)
・〈麗しのメリデュー姉妹〉シリーズ第2作

 あらすじを読み、最初の方を読み進めていくと、ヒーロー・セバスチャンの頑なさと相まって、ヒロイン・ホープの切なさ全開という話か、と思ったのですが、セバスチャン、求婚相手レディ・エリノアのこと全然眼中にねえ(゚Д゚)。ものすごくわかりやすくホープに夢中で、周りの人に丸わかり。もちろん、レディ・エリノアにも。
 まあ、彼女も別にセバスチャンのこと愛しているわけではないし、正式に婚約しているわけでもないので、傍観者という感じです。ていうか、彼女の相手はヒーロー友人。二つのロマンスが進行します。シリーズ1作目『偽りの婚約者とくちづけを』でもそんな展開だったな。
 ホープたち双子は、幼い頃祖父から虐待を受け、トラウマがあります。それとセバスチャンの妹たちが重なる。でも今回は、圧倒的にヒーローの過去の方がつらい。
 今は仕事で成功しているとはいえ、そこまでの道のりは読んでいてつらかった(´・ω・`)。子供なりの努力が一つも報われず、次々と不幸が降りかかる。そんな自分を大人になっても責め続け、妹たちを幸せにするしか自分の幸せはない、と頑なに信じきっている。
 下の妹が口をきかないんだけれども、そのことによって想像し得る出来事に常にさいなまれているし、ほんとにもう、かわいそうな人です(´・ω・`)。
 でも、ホープと一緒にいるとすごく幸せ、というのを隠さないところがよかった。自分の思い込みに支配されて彼女を傷つける方に行ってしまうヒーローって多いけど、不幸のレベルが桁違いだと、しょーもないプライドが入る余地なんてないのよね(所詮、しょーもないからね(-ω-;))……。リバウンドで、入ってくる幸せのパワーもでかい。抗わないというか、抗えないところがかわいいし、切なかった。幸せとか思いやりとか、そういうのを前にするとどう対処していいかわからない、という……。
 今回も気持ちのいいハッピーエンドでした。アン・グレイシーにハズレないなあ。

 他に切なかったのは、ロマンスよりも、レディ・エリノアの関わっている孤児院の描写でした。
 そこで妹たちを見つけたセバスチャンは施設を買い取る。その後、みんなで見学に行くシーンがある。刑務所のように管理されたその施設にいる女の子が、

「夢を見るのは悪いことではないですよね?」

 と言う。「夢」と言ってもそれは、「誕生日に人形をもらう」というささやかなものなんだけど、それはほぼ叶えられないこと。
 レディ・エリノアの母親がこの孤児院管理の基礎を作ったんだけど、彼女に言わせれば、

「夢なんて現実には一つも役に立たない」

 とのこと。
 ここを読んで思い出した。私、十代の頃、テレビのCM見ながら、
「あー、これ欲しい、あれも欲しい、ここ行きたいー!」
 といつも言っていたのですが、それを聞いた母親が、
「どうせ買えないのに、どうしてそんなこと言うの?」
 と言ったのですよ。その時私は、
「どうせ買えないんだから、せめて想像するくらいいいじゃん!」
 と反論しました。
 私の母みたいなことを言う人も、私のような人も、どちらもこの世にいて、どちらもそのとおりだと私は思います。夢見過ぎて現実を受け入れられない人もいる。そして、「買えない現実」を「想像(夢)」だけで変えることはできない。だったら「夢なんて見ない方がいい」という気持ちもわかる。
 でも、まったく夢を拒否するのは淋しい。ましてや子供にそれを押しつけるのは、もったいなさすぎる。
 というようなことをホープとレディ・エリノアが言い合うシーンが、とても印象に残りました。セバスチャンはつらい子供時代を送っているから、かなりの現実主義者で、レディ・エリノアの肩を持つんだけど──という展開。
 難しい問題なので、結論は出ません。結論がないようなものだから、普遍的なんだろうけどねー。
(★★★★☆)

最終更新日 : 2015-06-19

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