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□『インサイド・ヘッド』

『インサイド・ヘッド』"Inside Out" 2015(7/18公開)
 11歳のライリーの頭の中には、5つの感情たちが住んでいる。いつも明るいヨロコビ、正義感の塊のイカリ、好き嫌いを主張するムカムカ、危ないことから身を守るビビリ。だが、いつも落ち込んでばかりのカナシミの役目はよくわからない。そんなある日、ライリーは住み慣れたミネソタから離れ、サンフランシスコに引っ越した。その日からカナシミがライリーの思い出にやたら触れようとする。ヨロコビはそれを阻止しようとして、感情の司令部からカナシミとともに飛び出してしまう。(監督:ピート・ドクター 声の出演:ケイトリン・ディアス、カイル・マクラクラン、ダイアン・レイン、エイミー・ポーラー、フィリス・スミス、他)
・同時上映『南の島のラブソング』



 最近、使っているパソコンの調子が悪いのです。全体的に動きがもっさりしていて、反応が遅い。ハードディスクの容量もけっこういっぱいになっているし、仕事にも支障があるので、この映画を見た帰り道に新しいのを買いました。
 この映画の主人公ライリーはまだ11歳。頭の中も考え方も、生活もまだシンプルで、思い出はまだまだこれから増えていく。それにひきかえ私はアラフィフ。思い出もやることもたくさんあって、記憶にアクセスするのもひと苦労なんだろうな、とこの映画を見て思いました。最近よくある「俳優の顔は浮かぶんだけど、名前が出てこない」という時は、この映画のキャラたちが、

「画像は山ほど出てきましたが、名前のファイルが見つかりません!」
「どこにしまったのか思い出せません!」


 と右往左往しているんでしょう。そして、

「引き出しの奥にひっかかってました!」

 みたいに突然思い出したりする。
 人間だといくら動きがもっさりしても、新しいバソコンみたいに買い換えることができないので、自力でメンテナンスしながら死ぬまで使っていくしかないわけです。
 この映画は、そういう脳のメンテナンスの基本が自然にわかっていく、という物語です。教育的と見ることもできるかもしれないけれど、それは結果であって、物語の面白さを追及していったら必然的に脳科学や心理学などをちゃんと反映させないといけなくなった、というものです。
 ライリーは、大好きなミネソタが恋しくて帰りたいと思っている。でもお父さんもお母さんも新天地でがんばっているし、家の中を明るくさせたくて自らひょうきんなことをするいい子です。でも、我慢や無理をしていると、気持ちがうまく動かなくなってくる。
 そういう時に前に出てくるのが「カナシミ」で、

「悲しい時は、沈んでもいいんだよ。泣いてもいいんだよ」

 と自分を労る時間を作ってくれる。「悲しみ」があるから「喜び」も深くなる。泣くとストレス物質が流れ出るっていうしね。どん底まで悲しんだら、あとは昇る道しか残っていないのです。
 親として子供にはいつも笑っていてほしい、と思うと同時に、子供にとっても「悲しみ」なんてものは無駄だとつい思っちゃうんだよね。そういうのがまさにヨロコビ自身の行動に表れている。
 司令部から飛び出したヨロコビとカナシミは迷路のような脳の中をさまよいながら、司令部に戻ろうとする。途中で出会ったライリーのイマジナリーフレンド・ビンボンの助けを借りながら。
 このビンボンのくだりが泣けてしょうがなかった。ヨロコビとカナシミのいない司令部ではライリーの感情のコントロールができず、彼女の性格を形成している「島」(「ひょうきんの島」とか「ホッケーの島」とか「家族の島」とか)がどんどん崩れていく。このままだと、ライリーが壊れてしまう! ヨロコビとともに記憶のゴミ捨て場に落ちてしまったビンボンは、ライリーを守るために、自分を犠牲にするのです。
 子供時代から思春期に突入する時の儀式みたいなもの、と思いながらも、このシーンは涙なくして見られなかった……。ただ、その時忘れてしまったと思っても、大人になってからひょっこり思い出したりもするんだけどね。「想像力」という下支えの存在は、けっこう強いと思うのです。
 無駄だと思っていた「カナシミ」が実は生きていくのに必要なことだとわかってくると、人間は次第に大人になり、感情も複雑になっていく。ライリーは子供だから、壊れやすいんだけれども、回復も早い。それはそれまで愛情深く育ててきた両親がいたから──というラストはとても微笑ましいのですが、壊れた心を修復できない子供もいるのだろうな、という気持ちも止められなかった。野暮だと思いながらもね(´・ω・`)。

 吹替版で見たのですが、竹内結子のヨロコビも大竹しのぶのカナシミもよかった。
 特に大竹しのぶのカナシミは、単にどんくさくて暗いだけではない奥深さが出ていたように思います。
 ドリカムの日本版主題歌ははっきり言っていらん、と思っていたのですが、流れたのが同時上映の短編『南の島のラブソング』の前だったので、本編にあまり影響なくてほっとしたよ。
 で、その短編は、日本人からすると「ちょ、シャレになんねえ(´∀`;)」みたいな内容でした。海底火山のラブソング──休火山、死火山なんてのは、もうないのね……。いや、映像はよかったんですけどね……。
 そして、新しいパソコンは快適です。私の頭の中のハードディスクも取り替えられたらいいのにな(´・ω・`)。
(★★★★)
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    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
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