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2015 · 09 · 17 (Thu) 20:34

▲『時の旅人クレア』ダイアナ・ガバルドン

▲『時の旅人クレア』ダイアナ・ガバルドン(ヴィレッジブックス)
 1945年、第二次大戦後。看護師のクレアは、夫のフランクとともにスコットランドで休暇を過ごしていた。彼の先祖は、この土地に縁のあった人間らしい。クレアは丘の上にそびえ立つ立石(スタンディング・ストーン)──クレイグ・ナ・デューンに目を奪われる。ある夜、そこで見た花を取りに行ったクレアは、奇妙な音を聞いた。石が叫んだのだ。気がつくと、見知らぬ者たちが争っている野に倒れこみ、フランクそっくりの男にさらわれそうになった。("Outlander" by Diana Gabaldon, 1991)
・〈アウトランダー〉シリーズ第1作

 やっと読み終わった〜……。
 この作品は、ヴィレッジブックスから三分冊で出ているのですけど、1巻を読み終わった時にそれに初めて気づいたのです。その段階で2巻を手に入れるまでが長かった……。ドラマ化されたから新品が買えるはず、とねばってはいたのですが、一向に重版はかからないし、区の図書館にあったはずの1〜3巻はいつの間にか消えていた。じゃあ古本を、と思ったらこれまた全然出回らない。しかも2巻はもっとも手に入りにくい(゚Д゚)!
 最近やっと古本を仕入れて、自炊をして読んだのですが、もう1巻のことだいぶ忘れていた……orz
 簡単に読み返したりしながら、ようやく最後まで読めました……。ヒストリカルにするか、パラノーマルにするか迷ったけど、ある意味エポックな作品なんだろう、と思ってパラノーマルにしておきました。現代の女性が過去(この作品では18世紀)のハイランド(ここに特化しているのは、やはりストーンヘンジのせいなんだよね?)へタイムスリップするという、一ジャンルを築いたもの──なのかな? ちゃんと調べていないので、自信ないのですが。
 とにかく長かった。が、決して無駄に長いわけではないのです。それどころか展開はかなりジェットコースター的だった。一難去ってまた一難、という感じで、ヒロインのクレア周辺でガンガン話が動いていく。主人公だから、というより、一人称の彼女に何か起こらないと話が進まないというふうにも読めた。だから、あまり心が休まるところがない。彼女の不安と緊張がモロに伝わる感じでね。
 取り巻く環境もあまり現代ロマンス風に味つけされた感じではなく、かなり厳しかった。男にも女にも容赦ない。特に、ヒーローのジェイミーに一番厳しい(´・ω・`)。
 ジェイミーはなんでこんなにいたぶられないといかんのか、と思いました。変な男につけ狙われた、ということなのかもしれない。クレアの現代の夫フランクの先祖、イングランド軍のランダル大尉は、なかなかのストーカーキャラであった。しかも拷問好きの変態で、ジェイミーを鞭で叩いて興奮するという──フランクとは先祖ってだけで別人、と思いつつ、顔はそっくりだし同じような職業についてるし……クレアの心中は複雑であろう。
 彼女はランダルにさらわれそうなところを助けてもらったクランの戦士ジェイミーと、止むに止まれぬ理由で結婚するんだけど、彼の強さや優しさに惹かれていき、現代に帰らないことを選択する。そこまでしても、二人のハッピーエンドフラグは折られまくります。展開が厳しすぎて、読むのがつらいほどだった。特にジェイミーがランダルにされた仕打ちはね──男でも女でも、ああいう状況は人格を破壊する、というのがちゃんと書いてあるから余計に……。描写がまたえげつないというか、サイコパスの犯罪を実況中継されたような気持ち悪さがありました。ロマサスに出てくる猟奇殺人犯とかがかわいく思えるくらいだったよ……。
 なのに、ラストは力技で持ち直す。ジェイミーは強いキャラだった。彼はヒーローとしてかなり魅力的。でも、実はクレアにはあまり思い入れができなかったよ。こういう時、一人称はつらいんだって(´-ω-`)。
 長いとか読むのがつらいとかヒロインがいまいちとか登場人物が多すぎるとか、いろいろと気になるところはあるのですが、読み終わると不思議な充実感がある。読みにくいからこそかもしれないんだけど、「ジェイミーが幸せになれば、まあいいか」みたいに思ったのかもしれない。
 だから、評価は彼に免じて少しオマケしとく。
 続きの『ジェイミーの墓標』はもう買ってあるし、自炊も済んでる! けど、ちょっとお休みしてから読もう(´・ω・`)。あ、ドラマも見たいなあ。
(★★★★)

最終更新日 : 2015-10-05

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