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●『待ちわびた愛』シェリー・トマス

●『待ちわびた愛』シェリー・トマス(ライムブックス)
 資産家令嬢のミリーは、貴族と縁を持ちたい両親の意向から、フィッツフュー伯爵と婚約した。当時17歳だったミリーはフィッツにひとめ惚れをしたが、彼には生涯を誓い合った恋人がいた。しかし、突然伯爵の称号を受け継ぎ、その義務のためにはミリーの持参金が必要だった。叶わぬ恋に悲しんだミリーは、彼に「結婚しても好きに過ごしていい」と契約を申し出る。それから8年──フィッツのかつての恋人が夫を亡くし、英国に帰ってくる。("Ravishing The Heiress" by Sherry Thomas, 2012)



 この作品ヒーローの双子の片割れ 間違えた、姉が『甘いヴェールの微笑みに』のヒロインです。読んでなくても大丈夫。双子の妹の話も続きそうです。
 いわゆる「白い結婚」のお話なのですが、妙にモヤモヤした(´ω`;)。
 このモヤモヤはどこから来るのか、といろいろ考えたんだけど、うまい答えが見つからない。ヒーローのフィッツとヒロインのミリー、どっちへのモヤモヤなのかもわからない。その正体を知りたくて、どんどんページが進んでしまう。
 なんだろう、フィッツがものすごく鈍感だからなのかね。悲劇のヒロインぽいところもあると思う。

「俺が伯爵なのがいけない! 金持ち憎い! 運命ひどい!。・゚・(ノД`)・゚・。」

 こんな感じ。
 だったら駆け落ちでもすればいいと思うけど、当時はフィッツも未成年(19歳)なんだよね。後見人もいるし、当初の人生計画では軍隊に入るはずだったんだけど、伯爵になったからそれも叶わず。気質的にノブリス・オブリージュを尊ぶ彼としては、義務を投げ打つこともできないし、もちろんお金もない。
 ここまで八方塞がりだと、あきらめて少しでも前向きに生きよう、と思うのは、だいたい女性の方です。ミリーがまさにそれで、非常に現実的。愛する彼に憎まれて生活するのはいやだから、同居人として、そしていつか友人程度には仲良くなれることを願って「白い契約結婚」を申し出る。
 しかしそれを承知したはずなのに、フィッツは結婚式に遅刻するし、新婚旅行では飲みまくって荒れに荒れる。あきらめが悪い奴。気丈に耐える年下のミリーと比べると、どうしても「情けない奴」と思ってしまいます。彼女がお金を持っているのは彼女のせいではないし、逃げ道がないとはいえ、最終的に承知したのは自分なのだから、もうちょっと毅然としてほしい。
 ここにシェリー・トマス独自の目線があるように思いました。

「こういう時、現実逃避するのはいつも男だよ ┐(´д`)┌ヤレヤレ」

 みたいな。欧米人はもう少し男にやせ我慢させそう。フィクションだからこそ。
 とはいえ、喉元すぎればなんとやらで、ミリー実家の缶詰会社経営に面白さを見出し、「賢い妻との同居生活も悪くないなー」と思っていたところに昔の恋人(幼なじみ)イザベルが子持ちの未亡人になって帰ってくる。当然元鞘におさまると思うミリーですが、「跡継ぎを作ってからにしよう」とフィッツは言う。それもまた義務の一つ。伸ばしに伸ばしていたものですが。
 なんかいろいろとフィッツが無邪気というか天然というか、単純な人で、それでちょっと腹立ってモヤッたのかも、とここまで書いて思いました。19歳当時は本当に子供だから、幼なじみと結婚したらきっとそのままだったんだろうな。それなりにうまくもいっただろうけど、多分「成長」というものには無縁の人になっただろう。シェリー・トマスのヒーローにはこういう人が多い気がする。現実的で賢いヒロインがいないと、考えなしなまま人生を終えそうなヒーロー、という様式でしょうかね。
 いろいろなチャンスを与えてくれて、自分を大人にしてくれた妻を本当に愛するようになって、めでたしめでたしなんですが、最初からずっとハッピーエンドフラグ折られまくりで、切なさというよりミリーがかわいそうな展開です。当然愛人も出てくる(ミリーと対決したりもする)ので、地雷の人もいるでしょう。
 惜しいのは、ラストがものすごくあっけないこと。「もうひと盛り上がりほしい」「幼なじみに無駄な抵抗させてほしい」と思ってしまったのですが……フィッツにも一泡吹かせてほしかったなー。
(★★★☆)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : ヒストリカル ライムブックス ★★★☆

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Re: 初めまして

>Eさま
 コメントありがとうございます!
 あー、そういえばそんなシーンもありましたね>年数に関して
 読み直してみると──4年たって最初の激情が薄れ、単純に「あー、ちゃんとした夫婦生活を送るのも楽しいかもー。やっぱ6年にしとけばよかったなー(´・ω・`)」くらいな感じに読めますね。イザベルが戻ってくるとは想像もしていなかったからこその気持ちだと思います。とはいえ、あきらめたつもりのものでも、目の前にまた現れてチャンスがあったら心が揺れる、というわけです。イザベルは一緒になりたがっているわけですし。
 フィッツはそんなに複雑な人ではないからこそ、義務とか約束とか契約は守らないといけない、みたいな思い込みがあるんじゃないでしょうか。それに従っていれば、そんなに自分で考えなくていいですからね。
 彼は8年かかって、やっと物事をちゃんと考えられる人間になったというか、ミリーが成長させたということなんでしょう(´∀`;)。育児していたようなものですが、割と素直な奴だったので、ハーレのお子ちゃまヒーローより腹立ちは抑えられた気が(私は)します。

書き足し

あ、あくまでも「比較的」腹立ちが抑えられたというだけで……逆ギレしないだけでもいくらかマシ、という感じですかね(´∀`;)。
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    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
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