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◆『ビバリーヒルズで愛』ヴィクトリア・グレン

◆『ビバリーヒルズで愛』ヴィクトリア・グレン(ハーレクイン)
 ビバリーヒルズの大富豪である父は、一人娘のジェニファーに過酷な遺言状を残して亡くなった。ジェニファーが誰かと結婚しない限り、遺産はすべて父の後妻に渡ってしまうのだ。彼女は契約結婚の相手に、以前父の片腕であったセスを選ぶ。だが、彼から色好い返事はもらえず、ジェニファーは途方に暮れる。("The Tender Tyrant" by Victoria Glenn, 1989)



 ヒーロー・セスは昔からヒロイン・ジェニファーに片想いをしています。
 でも彼女は、18歳の時に婚約者を事故で失い、それ以来7年、半分ひきこもりのような状態。生きがいは大学での研究だけ、という地味なお嬢様です。
 ジェニファーからの申し出をいったん断ったセスだけど、彼女の幸せを第一に考え、結婚して財産を取り戻すことを承知します。ただし見返りはなし。彼女が幸せになるのなら、将来はもっとふさわしい人と結婚し直してほしい、とすら思います。
 彼に今まで関心のなかったジェニファーですが、その無私な態度に心動かされ、次第に惹かれていく。
 ヒロインのお嬢様なところに多少イライラしましたが、ヒーローはメガネ男子で、とても優しくてけなげで、傲慢なところは一つもないいい人です。男女逆転的なお話だね。
 ただ、なんかどこかひっかかりがあって、いまいち楽しめないというか、首を傾げながら読んでしまった。読み終わってよくよく考えてみたら、問題点はジェニファーの父だと思い当たる。彼のキャラに、大きな齟齬があるんだよね。
 この父親、ジェニファーに対してはとてもいい父であったし、セスに対しても素晴らしい上司でもあった。でも、後妻をもらった時からおかしくなる。この後妻がひどい女で、女優なんだけどどう考えても金と名声目当て。「なんでこんな女と結婚したの(゚Д゚)?」と周りに言われるくらい性悪な奴で、ジェニファーもセスも彼女によって家や会社を追われます。
 それに対して何も対策を取っていなかったのに、どうしてあんな遺言状を残したのか?
 まあ、これが後妻への対策ってことでもないと思うんだけどね。「娘を心配するあまり、あんな遺言状を残した」というのがセスの推測ですけれども、本当のところはわからないし、多少は後悔があったのかもしれない。
 けど、普通娘が心配ならば、彼女の遺産は後妻のとは別にしません? あのままだと、一文無しになる可能性だってあるんだもん。後妻とどうこうは関係なく、「結婚しないと財産が手に入らない」としとけばいいこと。
 ひきこもりを解消させるために、後妻と争わせるという刺激を与える──というのが父親の愛?
 これが人を困らせるだけのクソ親父ならば、お金持ちだし、ハーレによくいる「そういう変わった父親なんだな」とも思えますが、後妻が出てくるまではとても公正で優しく立派な人だった、という──。まあ、晩年数年のクソ親父ぶりを、家族が忘れていい思い出だけ残したい、という気持ちもわからないではない。ないが──やっぱりチグハグなんだよなあ。
 ヒーローヒロインの契約結婚のための設定、つまり非常に作為的に見えてきちゃうわけです。後妻に出会ってからの父親の狂いぶりをちゃんと描写していれば、もっともっと面白いものになったんじゃないかと思うんだけど、家族愛も美しいものにしないとダメ、とかハーレには規定がありそうだよね(´・ω・`)。
 まあ、もったいないという気持ちもこめて、評価はこんなものかなあ。
(★★★)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : コンテンポラリー ハーレクイン(文庫含む) ★★★

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    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
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