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2015 · 11 · 03 (Tue) 09:04

▼『朝まではこのままで』シャノン・マッケナ

▼『朝まではこのままで』シャノン・マッケナ(二見文庫)
 精神的に壊れた父を施設に入れ、必死に働くリリー。だがある日、父は自殺してしまう。死ぬ前に言い残した言葉の謎を解明するため、リリーはブルーノという男に近づく。父は、彼の母親の名前を言い残したのだ。ブルーノは彼女に惹かれ、一夜をともにするが、家を出た二人を何者かが襲う。("Blood And Fire" by Shannon McKenna, 2011)
・〈マクラウド兄弟〉シリーズ第8作

 非常に読みやすかったです。814ページもあるんですけど、ものすごい速さで読めちゃう。
 ぶ厚さにビビって仕事中読むのは避けていたんですが、どちらにしても仕事の敵だったかもね……。
 ただ、面白いかといえば──面白いんですけど、いろいろと穴がある。昔はその穴に足をボコボコ取られて読むスピードが遅くなったりしたわけですが、今回それがないということはマッケナの小説家としての腕が上がっている、ということなんでしょう。リーダビリティは抜群ですよ。キャラがめちゃくちゃたくさん出てくるのに、ちゃんと読みどころを与えているし、そこら辺は見事だと思う。
 今回の最大の穴は、話の進行をキャラに頼っているというところかなあ。私は「バカが話を回す」というのが大嫌いなんですけど、それにかなり近い。でも、バカじゃないんで、それで読むのが止まることはない。たとえば最大のキーパーソンであるローザ叔母さんとかは「いい人なんだけど、めんどくさい」というような人なわけですよ。人の言うことなんか聞きゃしない。ていうか、ヒーローのブルーノ自体もめんどくさい男であった。ヒロインのリリーよりもメンタル弱い。そうなっても仕方ない育ち方をしているとか、一応そういうところにうんざりしないような予防線がたくさん張ってあるので、なんとか話がつながっていくわけです。あと、ジェイソン・ボーンっぽい。
 タマラ姐さんという便利なキャラがそこら辺を調整していくのが従来のやり方だったんでしょうけど、今回あえて封印したのは、マッケナの挑戦かもしれない。
 悪役の話の回し方は、悪役らしくムカつくやり方になっていて、かろうじてアクセントになっている。ただこの悪役、

「俺は天才、ていうか神かも(゚Д゚)!」

 と自分で思ってるんだろうけど、基本的にはダメ男。次々とダメな方向に転げていくのに、自信は絶対に揺るがない。狂人の思考なんだろうけど、それより「人をイライラさせるダメ男ってこういう言動するよな(´Д`)」と思いました。
 結局、こんなダメ男にひっかかってしまったブルーノの母親が一番見る目なかったのか……。彼女の一族も困った人ばかり。マクラウド家はまともだな、と思えるくらい。
 マクラウド家は洗脳系の変な組織ばかり引き寄せる妙な力があるんじゃないか、と思ってしまうお話でした。アメリカ政府がもっとしっかりしろよ、みたいな気持ちにもなってくるな(´・ω・`)。しかもロマンス部分はオマケっぽい。
 けど、お話的にはそういう扱いの方が面白く読めるんで、私は別にかまわないんですけどね。
(★★★☆)

最終更新日 : 2015-11-03

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