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2016 · 01 · 21 (Thu) 15:29

▽『新車のなかの女』セバスチアン・ジャプリゾ

▽『新車のなかの女』セバスチアン・ジャプリゾ(創元推理文庫)
 パリの広告代理店に勤めるダニーは、社長の車サンダーバードで彼ら家族を空港へ送った帰り、気まぐれでドライブを始めた。ずっと行きたかった南仏を目指すが、途中で立ち寄った場所などでなぜか「あなたのことを見た」と言われる。どうして? ここは初めて来た場所なのに──戸惑うダニーを何者かが襲い、彼女の左手は叩き潰された。("La Dame Dans L'auto Avec Des Lunettes Et Un Fusil" by Sebastien Japrisot, 1966)

『シンデレラの罠』で私を振り回したセバスチアン・ジャプリゾ作品のまたまた新訳版です(旧訳版は未読)。
 しかしこちらは本格もの。とはいえ、私は本格ものというか、ミステリーを読む素養がないのよね(´∀`;)。なんかねえ、面白い面白くないをうまく比較できないの。数をこなしていないせいだけですかね。それとも、作品全体を小説として評価はなんとかできるけど、ミステリーとしての面白さはよくわからないというか──ミステリーの部分を小説の一要素として読むしかできないというか。
 まあ、小説の感想なんて、すべて個人的なものでしかないと思うんで、単なる言い訳なんですけどね(´・ω・`)。「本格もの」と聞くととたんに感想を言う自信がなくなる、というのが正直なところでしょうか。自信ないなりに言いますけどっ。
 ということで、面白かったです。
 ヒロインのダニーは広告代理店で働いている。社長は元同僚の友だちアニタの旦那で、会議に出るため資料を作ってほしいと臨時の仕事を頼まれる。社長の家でひたすらタイプライターを打って、資料を仕上げたあと、「空港に一緒に来てよ。そのあと、車は家に返しておいて」と言われて、慣れない新車のサンダーバードを運転し始めたら、なんとなく海を見たくなって、ドライブを始めてしまう。ボーナスももらっちゃったしぃ(´Д`*)。
 ところが行く先々で「あんたと会った」と言われてその都度否定するんだけど、あまりにもそう言われているうちに、「えー、あたしもしかして、あたしの知らない間にこの車運転してたの?(;゚д゚)」と思うようになってくる。
 彼女はいろいろなことにおいてあまり自信がないから、こんなふうに思うようになっていく。そのグラグラした精神状態が、なんだか読んでてかわいそうになってくる。両親を悲惨な状況で亡くし孤児院で育ち、恋愛もうまくいかず、孤独な日々を送っている。でも、彼女にとって一番不運だったのは、アニタという女を「友だち」と思っていたことです。読めば読むほど「それ、友だちじゃないよね?(´・ω・`)」と思うようなことばかり。実は、それがもっとも大きな伏線と言えるものなんですけどね。
 ダニーも決して清廉潔白とは言えないし、アニタに対して罪悪感を抱く理由もある。基本的に、事件に関わる登場人物はみんな孤独で自信がない。そこにつけこまれたり、追いつめられたりして衝動的な行動を起こすタチなのに、殺人をどうにかごまかそうとしたってボロが出ないはずないよね(´ω`;)。
 そういう人ゆえのアリバイトリック、ということになるのかしら?(ほら自信ない(-ω-;))
 それにしてもアニタは「疫病神」としか言いようのない人物だ。けど、彼女が一番とはいえ、夫も同類と言えるし、登場人物はほぼみんな大なり小なりゲスい(殺された人までも)。この作品で一番かわいそうなのは誰か、と考えると後味が悪いのです。でも、すっきりしないところも含めて面白かった。
(★★★★)

最終更新日 : 2016-01-21

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