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2016 · 05 · 28 (Sat) 08:27

▲『時をかける少女』筒井康隆

▲『時をかける少女』筒井康隆(角川e文庫)
 中学三年生の芳山和子は、ある放課後、同級生の深町一夫、浅倉吾朗と理科室の掃除をしていた。一人で掃除道具をしまおうとしていた和子は、理科実験室で謎の人影を目撃する。そして漂う甘い香り──和子は意識を失い、その時から不思議な能力が備わってしまう。

 基本的に日本の小説の感想は載せない方針なのですけど──『時をかける少女』ドラマ化のニュースを聞いて、久しぶりに読み直してみたら、ちょっと驚いたので、記事にしてみました。1965年に連載開始ですから、もう50年以上前の作品なのー(゚д゚)!?
 Wikipediaの内容がどこまで本当かはわからないけど、連載雑誌「高1コース」などの雑誌名になつかしさを覚えました。小学館の学習雑誌で六年生まで行くと、これら中高生向きに進んだものです。
 古い話はさておき、『時をかける少女』の原作は、とても短い。短編です。以前、仲里依紗主演の実写版でこんなこと書きました。

「十代の女の子がタイムリープして、恋をして、最後にはそれを忘れてしまう」

 本当にそういう話だった。それだけだった。そして、

「タイムリープ」
「ラベンダーの香り」
「いつかきっと会える」


 というロマンチックな要素が凝縮されたような物語。ただジュブナイルなので、書き方はかなりサラッとしている。衝撃は未来人ケン・ソゴルの年齢と愛の告白です。
「ええー、ちょっとそれ、本気かよ(´∀`;)」
 と疑ってしまうほどのサラサラ感。子供の頃(私は高校生の時に読んだはず)に読むとわからないだろうなあ。
 作者の筒井さんは、この作品のことを「金を稼いでくれる孝行娘」と言っているそうですが、物語としての魅力的な要素のみで構成された短いお話は、新人アイドルなどによく使われる言葉──「原石」のような輝きがある。短くて、なおかつ作者も自由にさせてくれるんだろうからこそ、映像の作り手たちはその時々の「原石」を起用し、様々なタイムリープと十代でしかできない恋をさせ、そのあとどうそれらを忘れさせるのか──という新しい物語を紡いでいく。
 ちなみに私は、原田知世主演のは公開時に見ましたけど、すっかり忘れている。最後が当時のアイドル映画そのもので、それに全部持っていかれた。細野守のアニメ版は面白かったけど、「絶賛」みたいな世間の評価にはちと違和感。原作の、シンプルというより本当に要素のみで書かれているそっけなさが一番好きだなあ。前出の実写版の記事でも書いたけど、

「少女にとって最も美しい失恋の物語」

 として唯一無二である、というのも含めて。
 それにしても、原作を読んでもそう感じたのには驚いた。いくらアレンジを加えられようと、物語の粋はきちんとすくいあげてもらっていて、とても幸せな小説かもしれない。まあ、短いから、それを省いてしまうと「時かけ」じゃなくなっちゃうというのもある(それを言ったら身も蓋もないけどさ(´ω`;))。
 ドラマは、どこかで配信した時、見るかもー。
(★★★★)

最終更新日 : 2016-05-28

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