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2016 · 06 · 04 (Sat) 09:19

◆『黒い羊』スーザン・フォックス

◆『黒い羊』スーザン・フォックス(ハーレクイン)
 ウィラは5年前の交通事故で、同乗していた親友アンジーを亡くした。意識不明の間に事故の責任はウィラにあることにされ、彼女は故郷を追われる。だが、親代わりに育ててくれた叔父が亡くなったのを知り、葬儀をひっそりと見送って帰るつもりで墓地にたたずんでいた。そんな彼女を見つけたのはクレイ──アンジーの兄だった。その目には嫌悪と憎悪しかない。("The Black Sheep" by Susan Fox, 1988)

 面白かったし、評価も★★★★にしましたけど、モヤモヤは残る。
 読み始めた時から想定はしていたものですけどね。おそらくすべてスカッとするようなラストにはならないだろう、とは。ハーレにはそういう爽快感の方向性はない。
 ヒロインのウィラに事故の責任はありません。車にはもう一人の同乗者、彼女のいとこであり、叔父叔母夫婦の娘ペイジがいて、実はそいつの運転のせいなのですが、一人は死亡、一人は意識不明であるのをいいことに保身の嘘をつきまくって、ウィラを町から追い出します。
 妹を亡くしたばかりのヒーロー・クレイと、娘の本性を知らない叔父叔母はペイジを信じこんでしまうんですが、この三人はまあ仕方ないな、と思える余地がある。クレイは、ウィラが故郷に戻ってきて、亡き叔父の牧場を叔母の代わりに建て直している間も、ペイジに適当なこと吹きこまれてはウィラに言いに来たりするのが伝書鳩みたいで、「ダメだな、こいつ(-ω-;)」というガッカリ感に包まれますが、「ハーレヒーローのガッカリはこれに始まったことじゃなし」程度ではある。
 一番のモヤモヤは、故郷の町の閉鎖的な雰囲気というか、学校のアイドル的な存在であったペイジの言うことをむやみに信じて、事故をきちんと検証しないというか、検証するのが警察の役目だろうに、それすらもちゃんとやらない町の気質にある。誰も反論しようとか、「いや、やるべきことはやらなきゃダメだろ」と言う人はいなかったんだろうか。そういう人をもねじ伏せるような雰囲気があったんだろうか。実力者──声のでかい人の言いなりになるしかない町なんだろうか。よくある話ではあるんだけど、5年たってもいやがらせしてくるとか、陰湿なのですよ。
 だったら、いくら故郷でも──というか故郷だからこそ、こんな町には帰りたくないな(´・ω・`)、と思った。ハーレですから、最終的にはクレイと結婚して「故郷に戻ってきてくれ」と言われるし、それを承知するからね。彼女自身が経営している牧場もあって、そっちとかけもちという感じではあるんだけど。
 しかし結局、それと真犯人ペイジへの報いはまた別問題だから、全体的なモヤモヤは残っても、割と物語的にはうまい落としどころに収まっているんだよね。
 その立役者がウィラの叔母でペイジの母であるテスです。夫に逆らえず五年前にウィラを手放してしまったことを深く後悔している彼女は、今回の帰郷を熱烈歓迎して、誰に何を言われてもウィラをかばう。もちろん、実の娘に対しても。
 ペイジが五年前の事故で保身に走ったのは、ウィラに対しての嫉妬もあったからだと思われる。出来のいい姪を自慢に思う気持ちを両親が表に出していなくても、娘なら絶対にわかっていたはず。どうやってもかなわないウィラを追い出せるチャンスを、ペイジは逃さなかったわけですが、結局はそれが彼女の首を絞める。前回のチャンスは偶然だったけど、今度は自分で作らないといけないから。
 もちろんうまく行くはずもなく、ペイジは母に家から追い出されてしまう。それが彼女にとって、一番恐れていたことだろうに──というラストになり、わたし的には満足しました。あれ、ヒーローはどこへ(´ω`;)?
 とはいえ、そのラストも含めて人によっていろいろなモヤモヤが残る作品なんじゃないかな、という気持ちも拭えず。でも、面白かったです。
(★★★★)

最終更新日 : 2016-06-04

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