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2016 · 06 · 23 (Thu) 13:26

◆『運命の回転ドア』シャーロット・ラム

◆『運命の回転ドア』シャーロット・ラム(ハーレクイン)
 銀行に勤めるマーティーンは、レストランの回転ドアに見知らぬ男性と閉じ込められる。どちらが譲るかで揉めた二人の間に、激しい火花が散る。その後、上司で友人であるチャールズとのディナーの席で、その男性がチャールズのいとこブルーノだと紹介される。("Body And Soul" by Charlotte Lamb, 1994)

 今月復刊されたこれまたシャーロット・ラムの人気作品。一時期古本が高騰してましたね。
 そのせいで期待値を大きく上げてしまった部分も否めない(´・ω・`)。いや、シャーロット・ラムらしい作品で、私としては楽しめましたけど。
 一番彼女らしいな、と思ったのは、ヒロインのマーティーンが妊娠していることがわかり、そのことをチャールズに知られてしまうシーン。チャールズは、愛妻を亡くした痛手から立ち直れず、さらに余命わずかな病気にもかかってしまい、経営している銀行の後継者としてあまり会ったこともなかったいとこをスカウトしてイギリスへ連れてくる。お約束だけれど、ブルーノはマーティーンのことをチャールズの愛人だと思っていて、ことあるごとにそれをほのめかすから二人は惹かれ合いながらも険悪になるわけです。しかし、ローマ出張中に一夜をともにし、マーティーンは妊娠してしまう。

「ブルーノにはそのことについて話す気はない」
「シングルマザーとしてやっていく」


 とマーティーンがチャールズに話すと、

「じゃあ、僕と結婚すれば父親もできるし、その子に財産や銀行を継がせてあげられる」

 とハーレでは割とよくある申し出をするのです。そこで結婚しちゃうのもありがちな展開なのですが、マーティーンはそれを拒む。本人としては一夜をともにしても冷たい態度を取るブルーノに子供のことは言わないと決意したとしても、チャールズは本当の父親ではないし、財産があれば楽はさせられるだろうけど、それで結婚するのは愚かだし、子供にもチャールズにも悪いとわかっているのですよね。
 プライドに囚われ、ブルーノに対して素直になれない意固地な部分はあるけど、基本冷静なシャーロット・ラムらしいヒロインだな、と思いました。
 友情からのプロポーズだったので、チャールズはそののちも惜しみない援助をマーティーンに与える。生まれてくる親友の子供を楽しみにしているうちに、彼も次第に病気を克服していくのです。気力が全然なくて、今にも死にそうだったのに!
 ──うん、ブルーノよりも、チャールズの印象の方が強いな(´ω`;)。ブルーノはもちろん妊娠のことも、チャールズの病気のことも知らない。ブルーノをないがしろにして二人が赤ちゃんの話ししたり、一緒に旅行したりしてキャッキャウフフしている間、彼は嫉妬からだんだんおかしくなっていきます。インフルエンザで寝ているマーティーンの家に行って、開けてくれないとわかると体当りしてドアを壊したり、お産で入院した病院で追い返されても「会わせろ!」と大騒ぎしたり──。
 ハーレのヒーローって、けっこう初動でミスする奴って多いよね。この作品も、一夜をともにしたあとの対処をしくじらなかったら、こんなに揉めなかったと思うんだけど。しょーもないプライドによるストレスに、ハーレの登場人物は強いよね。みんな丈夫なんだなー(違
 面白かったけど、ヒーローの印象が思いの外薄くて、ちょっと驚いた。出張ばかりしていて、けっこう留守がち(´ω`;)。
(★★★☆)

最終更新日 : 2016-06-23

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