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2016 · 07 · 03 (Sun) 10:03

●『招かれざる公爵』キャサリン・コールター

●『招かれざる公爵』キャサリン・コールター(MIRA文庫)
 イングランドのポートメイン公爵イアンは、スコットランドのペンダーリー伯爵の名を継ぐことになり、領地を自分の目で見ようと思い立つ。本音は社交シーズンから逃れるためで、婚約者からもやんわり抗議されるが、頑固な彼はさっさと旅立ってしまう。一方のペンダーリー領では、偏屈な伯爵未亡人である祖母に悩まされながらも、18歳の令嬢ブランディはのんびり暮らしていた。まさか公爵なんて来るはずない、と思いながら。("The Duke" by Catherine Coulter, 1981, 1995)

 久しぶりのキャサリン・コールター。彼女らしくもあり、古い作品の加筆訂正だからなのかちょっとマイルドでもあり──とても読みやすい作品でした。
 最近、ヒストリカルの「公爵」というとすぐに「ボンクラ」という単語が思い浮かぶくらい、もはや定型と言ってもいいくらいの扱いなんですが、今回は──ある部分ではとんでもなくボンクラでしたけど、全体的にはちゃんとした人だった。コールターのヒーローといえば「ドS」というのもおなじみですけど、そういうところもない。真面目な堅物と言った方がいいくらいの人。
 このヒーロー、イアンのボンクラな部分は、女を見る目ないというか、人自体見る目がなかったというべきか。フランス人の前妻を亡くし、子もなかったので後添いをもらうことになって伯爵令嬢フェリシティと婚約しているんだけど、この女の本性(自分本位で金と名誉にしか興味がない)にまったく気づかない。いや、気づかないというより、気にしていないんだよね。結婚すれば自分の思うとおりになる、とぼんやり考えている。公爵ゆえの傲慢さもあるし、自分の価値観自体もよくわかっていない。本音で話すとか、裏を読むとか、そういう状況もよくわからない。ボンクラというより、世間知らずのお坊ちゃんなんだよね。
 田舎育ちのヒロイン・ブランディももちろん世間知らずなんだけど、常に祖母の悪意にさらされて、それをうまく交わしながら生活しているし、親族や使用人も含めていつも本音で会話をしている。言葉の裏を敏感に察知するのは当然。礼儀正しく真意をたずねない、とかそういうことはしないのです。「あとで聞いたって遅いんだよ(゚Д゚)ゴルァ!!」とばかりにずけずけと真実をあらわにする。
 ヒストリカルは「礼儀を重んじて対応が後手に回る」というフラグがものすごく多いので、そういうのをブランディがバッキバキに折ってくれるのが痛快でした。田舎育ちで礼儀や教養や、自信も少し足りなくても、本能的に目端の利く人で、お坊ちゃんのイアンと好対照。彼女に感化されて、彼のぼんやりだった頭の霧が次第に晴れていく。
 途中でイアンが銃で撃たれて、その犯人探しという展開になっていくんだけど、犯人は割とバレバレです。登場した時点でわかるというか、あまりにもあからさまだから別の人かしら、と疑ったほど。ただ、過去の悪行に関してのひどさは予想していなかった。ここはコールターらしい「毒」があったなー。
「やな女」であるブランディの祖母やフェリシティの描き方もさすがでした。彼女らに対する仕返し加減が絶妙だった。ロマンス読んでて、このくらいはいつも溜飲を下げたいと思うんだけど、モヤモヤするのがけっこう多くて(´ω`;)。みんなあんまり「やな女」を書きたくないのかしらね。書きたくないから、行く末にも興味がないというか。コールターって、絶対こういう意地悪な人書くの大好きだよね。そういう人のための結末も丁寧に書きたいタイプだと思うなあ。
(★★★★)

最終更新日 : 2016-07-03

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