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2016 · 07 · 10 (Sun) 14:54

●『泥棒は恋の始まり』アン・グレイシー

●『泥棒は恋の始まり』アン・グレイシー(ハーレクイン)
 1816年。ジャワ島から英国へ戻ってきたキットは、まんまとシングルトン家の姪として社交界へ潜り込む。亡き父から頼まれた「あること」を成し遂げるためには、どうしても必要なことだった。だが、ダイヤモンド鉱山の持ち主と誤解され、注目されてしまう。甥の相手としてふさわしいかと近寄ってきた実業家のヒューゴーには、とりあえず頭の軽い娘を装ってみたけれど──。("An Honourable Thief" by Anne Gracie, 2001)(※2014年、MIRA文庫で改題にて再刊『レディは真珠で嘘を隠す』)

 父親がクズであったせいでひどい目に合うヒロイン、キット。
 ニュースなどで聞くと心が痛む「子供に万引きさせる親」そのものです。ロマンスではなかなかこれ以上のクズはいないというような父親です。
 彼は娘に何一つ本当のことを言わずに死んでしまう。娘は彼を信じていたのに。幼い頃に母も亡くした彼女は、父親に愛されたかったのに、それすらも叶えてやらないまま、勝手な約束を彼女にさせて。自分の晴らせなかった恨みを娘に代わりに晴らさせるというものです。そのせいで、彼女はお門違いの盗みを働くはめに陥る。
 人の頼みなんて、その人が生きている間の約束でしかない。だから、死に際に頼まれても、亡くなったらそこで終わりだと私は思います。もちろん、その人の感情を自分のことのように感じられるのならば、それを叶えてあげることもありえるでしょう。でも、自分の気持ちが収まったらそこで終わりだし、ましてや亡くなった人の負の感情を生きている人がすべて引き受ける筋合いなんてどこにもない。
 キットの場合だって、相手に対する恨みなんて何もない。父親のことは愛していたけど、共感なんかしてなかったんだから。彼の約束を守る必要なんてなかったのに、それでも守ろうとしたのは、それしか父との絆を感じられなかったからなんだよね……。彼女の気持ちを思うと、とても切ない。
 ヒーローのヒューゴーも、家族に恵まれず、10歳で船に乗せられて、そこから自力で財産を築いた人。彼は途中でキットのやっていることに気づくんだけど、なんとかやめさせて、自分の妻にしようと奮闘する。最初のプロポーズは「お金の問題か(゚Д゚)!?」と思って焦ってしまうんだけど、あとから思い出して「全然ロマンチックじゃなかった(`;ω;´)。これじゃ断られても無理ない」と反省するのがかわいい。
 真相がわかったあと、キットはとにかく自分を恥じる。このシーンは、なかなか容赦なかった。一番バレてほしくない人にまでバレるんだよね(´・ω・`)。どうなるんだ、とハラハラしました。ヒューゴーのプロポーズも頑なに断る。その気持ちもわかるから、泣けました。
 ハーレなので短めですし、現在はMIRA文庫(Kindle版もあり)で手に入りやすくなってますので、ぜひ。改題は……どうなんだろう? 真珠は確かに出てくるけど、印象薄いな(´ω`;)。元のタイトルじゃ、やっぱりダメだったのかな? まあ、そのまんまというタイトルですけど……。
(★★★★)

最終更新日 : 2016-07-11

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