09
1
2
3
4
5
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
23
24
25
26
27
28
29
30
   

▽『刑事マルティン・ベック 煙に消えた男』マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー

▽『刑事マルティン・ベック 煙に消えた男』マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー(角川e文庫)
 1966年。夏の休暇中だったマルティン・ベックは、ストックホルム警察に急遽呼び戻される。ジャーナリストのアルフ・マッツソンという男が東欧ハンガリーで行方不明になったのだ。マッツソンを雇う雑誌社は事件として記事を出したいと言っているが、外交上の問題があり、それを避けたいスウェーデン政府がマルティン・ベックをブダペストへ派遣することにしたのだった。("Mannen Som Gick Upp I Rok" by Maj Sjowall & Per Wahloo, 1966)
・〈刑事マルティン・ベック〉シリーズ第2作



 今回、読んでいる時は使わなかったけど、感想を書く時に「超便利だな(゚д゚)!」と思ったのが、KindleのX-Rayという機能。登場人物や用語が作品のどの部分にあるかがひと目でわかり、すぐそこへ飛べるという……。ミステリーにはうってつけの機能だけど、先に見ちゃうとネタバレにもなりそうな諸刃の剣(´ω`;)。「ラストの方に集中して出てくる名前って犯人じゃないの?」とか。
 面白かったんですけど、今回苦労したのはとにかく北欧東欧諸国特有の名前です。目撃者や関わる人間もすごく多く、途中途中でそれらの人間の証言などがまとめられているところもあり、正直誰が誰だかわからなくなってました(´・ω・`)。翻訳ものを好む私ですが、慣れない国の名前はやはり憶えにくい。
 前作の『ロセアンナ』同様、マルティン・ベックはコツコツと事件の手がかりを集め、整理し分析し、そこから推理をする。すごく……「仕事」って感じがする。天才的な閃きも派手なアクションもサービスシーンもなく、どちらかといえば「職人」の地味な一日をひたすら描いているに近い。その過程が、今回はさらによくわかるようになっていました。丁寧に証拠を観察して、わからないところをあぶり出し、それでも何も出てこなければ、また最初からやり直して──というのをくり返す。めっちゃ地味で、それに耐えられない人もいるだろうけど、私は嫌いじゃない、その作業。
 今回ちょっと名前でつまずいてしまったところはあるけれど、しっかり読んでいれば、おそらくマルティン・ベックと同様の推理を一緒に味わうことができるんじゃないか、と思った。訳者のあとがきや解説などにも書いてあったけど、「ミステリー」というより犯罪のことを描いている「犯罪小説」。
 冷戦時代、いわゆる「東側」であったハンガリーのブダペストの描写も印象的でした。なんと、ごはんがおいしそうだった。私にとってはそれが一番のサービスシーン。
 冷戦の頃、私は子供だったし、やはり島国の日本にいるとまったく実感としてつかめないところはあるんだけど、地続きでつながっている国であっても、入りにくい国、出にくい国、パスポートにスタンプも押さない国などいろいろあって、体制が違う場合には緊張感もある。淡々とした描写だけど、時代と異国の空気を大いに感じました。
 それにしてもマルティン・ベックのワーカホリックぶりはね──何も感情が見えてこないけど、これだけのことして結局あの結末に文句一つも言わない、というところに倦怠感のような読後感が伴う。事件はちゃんと片づくにもかかわらず、すっきりとしない読み口──けど、「犯罪」を相手にする「仕事」に、すっきりするなんてことはしょせん無理だよな、ということを改めて知るのです。ここら辺がこのシリーズの肝だと思うし、普遍性があります。今も昔も変わらぬ、犯罪とそれに関わる人間たちを描いた骨太な小説です。これは比較的短めで読みやすかったです。
(★★★★)
web拍手 by FC2

theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : ロマンス以外 角川文庫 ★★★★ シリーズ

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: はじめまして

>Oさま
 コメントありがとうございます!
 私、すごく昔、それこそ高見浩さん訳のマルティン・ベックシリーズがリアルタイムで出ていた頃はミステリーをよく読んでいたんですけど、最近の北欧ミステリーにはとんと疎くて……すみません。存じてはいますけど、ヴァランダーシリーズも読んでないんです。私が好きなのは、『煙に消えた男』のあとがきにも書いてあった87分署シリーズです。勉強不足ですね(´・ω・`)。ていうか古い……。あ、北欧だけではないですね。ロマンス以外はダメダメです(´ω`;)。
 ロマンスの感想も思いっきり自分本位なので、ほんと参考程度になさってくださいませ。でも、ロマンス好きになってくださってうれしいです。ミステリーもロマンスも、というなら、カレン・ローズがおすすめです。
Secret

文字を大きく・小さく

    Twitter&ランキング



    いつもありがとうございます♪


    書評・レビュー ブログランキングへ

    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
    にほんブログ村

    最新記事

    カテゴリ

    ユーザータグリスト

    最新コメント

    最新トラックバック

    リンク

    RSSリンクの表示

    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    メールフォーム

    名前:
    メール:
    件名:
    本文:

    検索フォーム

    English Translation

    English English得袋.com

    アンケート

    QRコード

    QRコード

    FC2カウンター

    カレンダーと月別アーカイブ

    プルダウン 降順 昇順 年別

    08月 | 2019年09月 | 10月
    1 2 3 4 5 6 7
    8 9 10 11 12 13 14
    15 16 17 18 19 20 21
    22 23 24 25 26 27 28
    29 30 - - - - -


    プロフィール

    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
    評価は★★★★★が満点、★★★が標準点クリア。
    ★★★★からがおすすめです。
    くわしい注意書きは→コチラ
    リクエストは→コチラ

    最近読まれている記事

    ブログパーツ

    最近の拍手ランキング

    人気の記事

    本ブログ村PVアクセス

    ユーザータグ

    ★★☆ ロマンス映画 ★★★☆ ★★★ シリーズ コンテンポラリー ハーレクイン(文庫含む) ヒストリカル ライムブックス ★★★★ ★★★★☆ 扶桑社ロマンス 新潮文庫 サスペンス/ミステリ 資料用 ロマンス以外 角川文庫 ★★★★★ ハヤカワ文庫 マグノリアロマンス フローラブックス 創元推理文庫 集英社文庫 パラノーマル アンソロジー 二見文庫 ヴィレッジブックス ★★ MIRA文庫 ランダムハウス講談社 ラズベリーブックス その他の出版社 ★☆ ソフトバンク文庫 サンリオ 文春文庫 ラベンダーブックス ラベンダーブックス(幻冬舎) オーロラブックス(宙出版) 講談社文庫