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2016 · 08 · 04 (Thu) 09:46

□『シン・ゴジラ』

□『シン・ゴジラ』2016(7/29公開)
 東京湾で謎の大量水蒸気噴出があり、東京湾アクアラインが崩落する。対応に追われる日本政府。内閣官房副長官の矢口蘭堂は東京湾を映した動画の中に巨大生物の影を発見する。やがて巨大生物は海上に姿を現し、東京へ上陸する。(総監督・脚本:庵野秀明 監督・特技監督:樋口真嗣 出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、高良健吾、大杉漣、柄本明、他)

 私は、最近は特に日本映画は見ていないのですけど、『シン・ゴジラ』を見て、

「ようやくハリウッドの真似ではないアクション映画を見た」

 と思った。
 あ、いや、アクション映画ではないな……ごめんなさい(´・ω・`)。パニック映画? ディザスター映画? うーん……「災害対策映画」かな?
 ……アクション映画とはだいぶ離れてしまいました、すみません。けど、地震や津波や噴火、竜巻やハリケーン、隕石や宇宙人、そして怪獣が襲ってくる映画は、基本「災害」を描く物語である。災害に対して、誰が主人公になるかでお話は変わっていくんだけれど、基本的にハリウッドは誰が主人公でもアクションの要素は入る(´ω`;)。だからつい、最初に「アクション映画」って言っちゃったのだ。
『シン・ゴジラ』を見て、どれだけ日本の映画やテレビドラマがハリウッド的な「ウケてる(ように見える)物語」や「要素」や「演技」に毒されているかがわかったよ……。『シン・ゴジラ』には派手な兵器も感情むき出しの怒鳴り合いも恋愛要素も話をむりやり回すアホも出てこない。声を荒げるシーンは多少ありますけど、最低限。
 でもまあ、そういう派手な演出や要素というのは、ハリウッドから日本のマンガに、そしてアニメへとつながってはいるんだよね。わかりやすい演出のやり方として、感情表現を大げさにして、物語の展開にも目立つキャラを置く。マンガやアニメだと確かにわかりやすいし、絵からの情報で補うこともできるしで効果的だったりもするけど、実は日本の実写にはそぐわないとずっと思ってきたわけですよ。日本人って派手な感情表現はしないし、何か不測の事態が起こってもまず冷静になることを再優先にする。気質の問題なのでいい悪いじゃないけど、やはり演出からすると「地味」になるわけです。でもそれだって悪いわけじゃない。どう描くかなのだし、そういう日本人の気質をちゃんと描こうとするものは昔はもちろんあった。しかし、今はそういうものが目立たないし、ずっと「ウケない」と思われてきたのです。
 日本映画がそういう呪縛から解き放たれたように思いました。
 それをゴジラでやるなんて──。いや、ゴジラだからできたのかもしれない。でも、東宝としては失敗もしたくないはず。うるさく横槍を入れる人はいなかったんだろうか? どうやって黙らせたの? よくこんなふうに徹底的に、というより、執拗に細部にこだわって自由に撮れたな、と思った。悪名高き委員会形式(噂でしか知りませんけど……)ではなかったから? 「お金をちゃんと才能ある人に使わせるとこういう作品ができるんだー」と関係者は思い知ってくれたかしらー?
 政治家を主人公にしたことで、「災害対策映画」として政府で実際に起こり得ることを順番に淡々と描いていく話になったわけですが、怪獣映画なのに会議ばっかりが続く。しかし、それが面白い。緻密なシミュレーションというかドキュメンタリーを見ているよう。会議とか言ってる間も東京を破壊し続けるゴジラは確実に政府を追い詰めていく。地震の時も、こんな感じなんだろうな、と思わないわけにはいかない。
 この映画の欠点としてよく言われているのは、被災者の立場からの表現がほとんどないこと。主人公たちは皆対策本部に詰め、比較的安全なところから指揮を取る。逃げ惑う人たちや避難をしている人たちの映像は出てくるけど、具体的な表現はほぼなし(ハリウッド映画だと主人公は必ず現場へ行くから、それでアクション要素が加わるんだよね)。
 だけど、私は別に欠点とは思わなかったし、それは実際の被災者への配慮と取る人もいた。瓦礫の山は出てきたけど、それだけでフラッシュバックする人もいるだろう。だから(というのも悲しいけど)、たったそれだけでも充分インパクトはあったと思う。それより、中盤の展開にダレる部分があって、そっちの方が残念だ。他にもたくさん不満はあるし、いまいちノレないという人の気持ちもわかる。しかしそれも、私の個人的な意見でしかない。
 物語をすべて描くことは、実際のところ可能なんだけど(映画はお金がかかり時間が長くなり、小説はやたらぶ厚くなる)、それで面白くなるかどうかは別問題。「いらない」と思うところをどうカットするか、そしてどこをカットするかで個性が出る。被災者のことを描かなかった上で119分の上映時間なわけだから、当然被災者のことを入れたらそれ以上の時間になる。「印象的なシーンを入れるだけでも」というのもあるだろうけど、きちんと描けない可能性もある。何しろ被災者ですから。当事者が日本中にいて、それぞれ抱えている気持ちが違う。それすべてに配慮してそういうシーンを作る、というのは──「中途半端になるくらいなら、全部カットする(゚Д゚)!」という気持ち、なんとなくわかる。いや、単なる推測ですが。
「全方向へ配慮したはずなのに、結局中途半端で全滅」の方がひどい。というより、そういう自滅の方が割とある。「徹底的に表現できるものを集めて二時間」というのは非常にうまくまとまっていると思うから、そのバランスを崩すのももったいないです。
 そんなこんなで、いいも悪いも含めて、いろいろと言いたくなる映画でした。言い足りない気もするけどこの辺で。評価は、いろいろ考えてオマケしとく。少なくともギャレス・エドワーズの『ゴジラ GODZILLA』よりも面白いのは確かだし。
 あ、あと一つだけ。米国大統領特使役の石原さとみ──予告編では「うわー、英語が下手ー(´Д`;)」と思ったんですが──見てもやっぱり下手でした(´∀`;)。しかも彼女が出てくると一人だけコントをしているような雰囲気に包まれる……。が、全編超シリアスなムードの中で、彼女の存在はコメディリリーフとして光っていました(ごめんよ(´ω`;))。他の女子たち(小池百合子を意識したとしか思えない余貴美子、オタクな雰囲気が印象的だった市川実日子、あと片桐はいり!)もよかったです。
(★★★★☆)
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最終更新日 : 2016-08-04

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