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2016 · 09 · 26 (Mon) 14:02

▽『獄門島』横溝正史

▽『獄門島』横溝正史(角川e文庫)
 昭和21年9月。探偵の金田一耕助は、復員船の中で死んだ戦友・鬼頭千万太の紹介状を持って、瀬戸内海の孤島・獄門島を訪れる。網元の息子である千万太には、三人の異母妹がいた。彼は、自分が帰らなければその妹たちが殺される、と恐れていた。金田一は戦友の「おれの代わりに獄門島へ行ってくれ」という頼みを叶えるためにやってきたのだ。
・〈金田一耕助〉シリーズ(金田一耕助ファイル3)

 ついこの間、長谷川博己主演(もちろん金田一耕助役)でNHKドラマ化、という話を聞き、ようやく読みました。Kindle版を買ったのは、確か『愛人島』を読んですぐ(´∀`;)。
 ドラマ化を聞いて真っ先に思ったのは、

「え、アレがあるのに、ドラマ(´д`;)?」

 アレというのはですね、物語の重要な手がかりである和尚のセリフ、

「気ちがいじゃが仕方がない」

 ですよ。それだけじゃなく、本文中にもやたら「気ちがい」が連発されている。三姉妹はもとより、座敷牢に閉じ込められている人もいるし、「島の人みんなそんな感じ」とか、もう放送禁止用語だらけの物語で──まあ、そういうのはいくらでもごまかせますけど、和尚のセリフはどうにもならないじゃないですか。だって、「気ちがい」という言葉自体を変えてしまったら、面白さ半滅ですよ!
 とはいえ、今まで何度もドラマでは変えていたんですけどね……。横溝好きな人にとって、ある意味そこをドキドキして見守るというか──あんまりいいドキドキじゃないですけど(´・ω・`)。さすがに映画(市川崑版)はそのままだったけど。
 そこはドラマの問題なので、その時楽しみにするとして(BSプレミアムなので見られるのかうち?)、原作はとても面白かったです!
 けっこうシンプルな話だったんだな、と読み直して思いました。三姉妹の見立て殺人のみで構成されている。金田一の奔走虚しく、すべて無残に殺されてしまう美しい姉妹。最初の末妹の殺人の際、梅の木に吊るされた彼女の死体に対し、念仏とともに和尚がかけた言葉──
「気ちがいじゃが仕方がない」
 これに翻弄されていく金田一。
 ラストまで読むと、すべて間の悪い時に起こった出来事なのだな、という虚無感が漂います。閉鎖的な島の空気、そして戦争後の疲弊した世間の雰囲気と相まって、横溝正史の小説によく感じる清浄さはほぼありません。今で言うイヤミス系の後味。
 それでも面白く感じるのは、シンプルな構成とスピーディーな展開にある。説明的な部分ですらまるで講談を聞いているようないい意味のケレン味を感じる。重要な鍵を握る人物、鬼頭嘉右衛門が芝居や雑俳などを好む趣味人だからなのか、そういう軽さがあって、非常に読みやすいです。
 読んでる最中に『本陣殺人事件』も買ってしまった(´д`*)。『八つ墓村』も読まねば。『八つ墓村』はなかなかのロマンスなんですよ。当時も読んで萌えた記憶がある。金田一のじゃないけどね。
 この作品では、鬼頭家に住んでいる千万太の従妹の早苗に、金田一が「一緒に東京へ行こう」と誘って振られる、という有名なシーンがあるんだけど、二人の交流自体はほとんどないから、好きだとかそういうんじゃない気もする……。島でまともな人は早苗だけ、という状況から言った言葉なんじゃないだろうか。その因習を断ち切ってあげたかったとか。しかし、早苗は島で生きることを選ぶ。彼女が東京へ行っていたら、全然違う読後感になっただろうな、と思ったわ。
(★★★★)

最終更新日 : 2016-09-26

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