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▽『本陣殺人事件』横溝正史

▽『本陣殺人事件』横溝正史(角川e文庫)
 昭和12年11月25日。岡山県の旧本陣の末裔、一柳家では、長男・賢蔵の婚礼が執り行われていた。深夜にお開きになったのちの明け方、新婚夫婦が眠る離れ家から悲鳴と琴をかき鳴らす音が聞こえる。駆けつけた人々が見たのは、血まみれになって死に絶えていた賢蔵と花嫁の姿だった。離れ家は雪に降り籠められ、雨戸も閉まっていた。密室状態で、夫婦は亡くなっていたのだ。花嫁の伯父・久保銀造は、探偵の金田一耕助を急いで呼び寄せた。
・〈金田一耕助〉シリーズ(金田一耕助ファイル2)



『獄門島』を読んで、横溝正史熱(中学の頃以来)が再発し、この作品もKindle版で買ってしまいました。金田一耕助初めての事件だけど、「金田一耕助ファイル」は『八つ墓村』が1なんだよね。
 金田一耕助のだけでなく、横溝正史の小説(時代物は除く)はあらかた中学生の頃に読んでいるのですが、もうこれだけ時間がたっているとほぼ初見と言っていいのであった。でもこの『本陣殺人事件』はもしかしたら読んでいないかも、と思ったよ。琴の糸を使った密室トリックであるというのは、映画(ドラマ?)で見て憶えていたんだけどね。
 これもまたシンプルな構成です。しかも短め。推理小説というより、作者が取材して、あるいは詳細な記録を元にした実録ルポみたいな雰囲気。
 そう、読んで思ったのですよね。私は昔から「不可解事件の真相」みたいなものが好きだったなあ、と(今ももちろん好きです)。『獄門島』にしろこの作品にしろ、書き方はそれに近い。あまりキャラクターを掘り下げないというか、非常に淡々と物語が進む。それがまた、実録ものみたいな妙な臨場感を呼ぶ──ような気がする。
 この作品の殺人の動機なんて、「工エエェェ(´д`)ェェエエ工、そんなことでー」みたいな話なんですが、「そんなことでー」みたいな事件の真相は今でもたくさんあるし、ここまでトリックを仕掛けないにしろ、そんなんで人を殺すことは充分ありえるわけです。「そんなこと」さえ起こらなければ、特に問題なく、普通にこの犯人は暮らしていったでしょう。きっと高潔な人として。そこを超えてしまうことと、止められたのに止めなかった人の存在、二つの怖さが後味の悪さを倍増させる。金田一耕助が、そういう悪意を見つけるたびに「うれしそう」というのがまた──いや、わかりますけどね(´ω`;)。難しいパズルの糸口が見つかると、すごくうれしいもんね。うれしいけどね……にこにこしすぎじゃねえか、とちょっと思ったり。
 私……何か勘違いしていたかしら。「横溝正史を読むと一種の清浄感が得られる」と思っていたんだけど、何かと勘違いしたのか、それとも映画やドラマがそういう配慮をしていたせいで混同したのか……。
 いや、これは他のも読んでみなければわからないな。シリーズが進むにつれて、変わるかもしれないしっ。長編は最後の章が「大団円」っていうのが多かったように思うけど、そうなるとまた違うかもしれない。

『本陣殺人事件』は短めなので、短編が2本収録されていました。『車井戸はなぜ軋る』と『黒猫亭事件』。
 横溝正史は、短編をのちに長編へ書き直したりすることが多かったそうなんですけど、『車井戸はなぜ軋る』はどう見ても『犬神家の一族』の原型であろうと思われる。
『黒猫亭事件』は、読者にフェアであろうとするのか、最初の段階で作者自らハードルを上げているのが面白い。短編なのに、金田一耕助は最後の方にしか出てきません(あ、頭にもちょっとだけ)。
(★★★★)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : ロマンス以外 角川文庫 ★★★★ シリーズ

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    三原 白

    Author:三原 白
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