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2016 · 10 · 05 (Wed) 15:23

◆『アラビアの花嫁』リン・グレアム

◆『アラビアの花嫁』リン・グレアム(ハーレクイン文庫)
 シングルマザーの従姉エリカが事故で亡くなった。残された子供ベンの面倒を見ながら、フレディは途方に暮れていた。お金も仕事もなく、このままではベンと離れ離れになってしまう……。そこへベンの父親の弟と名乗るジャスパーが現れる。彼はなんと、アラブのクアマール王国の皇太子だった。("An Arabian Marriage" by Lynne Graham, 2002)
・〈華麗なる転身〉第1作

 最近、リン・グレアムを読むと、すごくヒロインのアホさが気になる(´ω`;)。
 いや、違うな。アホとかバカとかよりも、「愚か」というのがぴったりかも。アホやバカには面白いキャラも含まれる(人間的 or 物語的に)んだけど、「愚か」というのには他に何も意味がない。ただただ「愚か」なのですよ。哀れみも加味されるかなあ……。「頭悪い」となると、哀れみは入らない感じなんだよね。
 救いがたいほどのお人好し、というのが最近読んだリン・グレアムのヒロインの定番で、「だまされても裏切られてもすべて受け入れる」というような聖母的なキャラなんだと思う。成功すれば感動的な物語になるけれど、この作品ではそうとは言い難い。そうなると、ただの愚かなどんくさい女の子の話になっちゃうんだよね。
 まあこれは、私の苦手な「ヒロインが嘘をついている話」だったから、とも言える。ヒロインのフレディは従姉と同姓同名で(従姉の呼び名はエリカ)、事故死した彼女の息子ベンの面倒を見ている。それがアラブの王国クアマールの皇太子(こちらも死亡)の子供だったので、皇太子の弟でヒーローのジャスパーが取り戻しに来る。しかし調査がずさんで、エリカが死んだことが伝わってないのをいいことに、ベンを手放したくないフレディはエリカになりすます。
「ヒロインに関する調査がずさん」というのはハーレ定番の設定ですけど、こんな調査しかできない王国なんて未来が暗すぎる(´ω`;)。会社の社長とかが外部の探偵に頼んでハズレっていうのならまだありえるだろうけど。これじゃ皇太子自身のボンクラ度が上がるだけじゃんか。
 ツッコミどころは「急いでたから」「わがまま言われたから」「ちょっと錯乱して」みたいな行き当たりばったりな言い訳でむりやり話を進めていく。フレディはフレディで、すぐにバレる嘘をついた上に、ナニーによってクアマールへ誘拐されたベンを取り戻すためジャスパーに結婚を迫り、本当に結婚してしまう。ただの思いつきで、バレた時のことを一つも考えていない。すごく愚かな行為です。
 わけがわからない話だな、と書いてて思いました。見通しが甘い上にすべて人まかせにして国王の暴走(誘拐は彼の指示)を止められなかったジャスパーもアホですけど、基本的には波乱を起こすためだけのプロットとしか思えない。従妹だからなんの権限もないとしても、ナニーとしてクアマールへ行ってそこからいろいろあって、みたいな話でも全然かまわないのに。もちろん、そんな話に新鮮味はないでしょうけれど、バレた時の思考が、

「あっちの方が誘拐とかして、ずっと悪い! だからあたしは悪くない(゚Д゚)!」

 というような逆ギレヒロインよりはずっといい気がするんだよね(´・ω・`)。人間的にその思考はヤバいですよ。しかも後半、父親が隠していた母親の真実の姿というのがわかるんだけど、それともシンクロする。
 ヒロインは愚かなだけでなく、実はヤバい思考の持ち主だった、というお話だったのかもしれない。ただ愚かな人なので、これ以降ストレスや葛藤のない楽な暮らしをしていけば、多分ヤバい部分は表に出てこないはず。
(★★☆)

最終更新日 : 2016-10-05

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