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ロマサス映画としての『ボーン・アイデンティティー』

『ボーン・アイデンティティー』“The Bourne Identity” 2002(DVD)
 チューリヒのアメリカ領事館で、マリーは途方に暮れていた。職も金も住むところもなく、アメリカへのビザもおりない──これからどうしたらいいの? そんな彼女の前に、ジェイソン・ボーンと名乗る謎の男が現れた。「その車で僕をパリまで乗せていってくれたら、一万ドル払う」──あとのないマリーは、その要求をのむしかなかった。数か国語を話し、瞬時に周囲の状況を把握し、銃器の扱いにも長け、襲いかかる敵をいともたやすく倒す彼は、自分のことを何一つ憶えていなかった。(監督:ダグ・リーマン 出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、クリス・クーパー、クライヴ・オーウェン他)
※映画ボーンシリーズ全般のネタバレを含みます。



 ヒロイン・マリーの視点であらすじを書くとこんな感じの始まりです。
 ロマンティックサスペンス(以下ロマサス)映画の傑作『ボーン・アイデンティティー』。誰もそんなこと言わないから、自分で言う。何度でも言う。『ボーン・アイデンティティー』はロマサス!
 しかし、一応ブログに記事は書きましたけれど、ずいぶんと適当だったなあ、と反省しまして、今回見直し、ちゃんとした「ロマサス映画としての『ボーン・アイデンティティー』」について書いてみることにしました。それと『ジェイソン・ボーン』についても。『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』も見直した方がいいんだろうけど、仕事が終わったとはいえ時間がそれほどないので……ごめんなさい。

 さて、『ボーン・アイデンティティー』──ヒロインがいるとはいえ、主役はもちろんジェイソン・ボーンの方ですし、彼のアクションに目を奪われてしまいます(何しろ、これ以降のアクション映画の傾向を変えた作品ですし)けど、マリーさえ出てくれば話の運びはほぼロマサス。しかも、もっとも大きなキーワードは「記憶喪失」
 彼女が出てくるまでが長いんだけどね。20分たたないと出てこない。しかも、二人が接触するまでさらに5分。その25分で、撃たれたボーンが記憶を失って海を漂流しているところを漁船に助けられ、尻に埋め込まれていたカプセルの情報を元にチューリヒの銀行へ行き、自分が「ジェイソン・ボーン」という名の男で、パリに住んでいると見当をつけるところまで描かれます。そこで、たまたまアメリカ領事館で見かけたマリーの車に乗せてと頼むわけです。
 とにかく「記憶喪失」って設定が往年のロマンスっぽいじゃないですか。今時はなかなか使いどころが難しいよ(゚Д゚)!
 そんな使い古したネタを面白くさせたのは、「襲われると身体が無意識に動いて反撃する」というところ。しかもめっちゃ強い。自分のことは何一つ思い出せないのに、かつての自分が身を守ってくれる。でもなんか「こいつヤバくね(´Д`;)?」というシャレにならない能力の持ち主──だったんだな、俺、という展開。
 そんな男であることがだんだんわかってきて、マリーも若干引き気味なのですが、そうなる前──パリへ行くまでの間に彼女がボーンに惚れてしまうのが、今回見直してよくわかりました。

「俺、記憶喪失なんだ……。ずっと眠れなくて、頭が痛くて(´・ω・`)」

 と訴えながら、自分の運転する車の中でぐっすり眠っている彼の横顔を見て、「(´Д`*)」となっちゃう。放浪癖はあるけど、基本ごく普通の女の子であるマリーは、パリに着いて、ボーンをアパートにまで送っていった時、つい、

「あたしのことなんかすぐ忘れちゃうよね?」

 と乙女なことを言ってしまうのですが、それに対してボーンは真剣な顔で言う。

「忘れっこないだろ?」

 一瞬、「*・゜゚・*:.。.ヽ(゚∀゚*)ノ パァァ.。.:*・゜゚・*:」となるマリーですが、そのあとに続くセリフに冷めなかった、いや覚めなかったのか?

「君しか知らないのに」

 いや、これってむしろ萌えるポイントとも言えるんだろうか。「あたししか知らないなんて(゚д゚*)!」みたいな。ボーン、天然人たらしだな、と思った。
 しかしそのあとにアパートでの格闘を目の当たりにして、「ヤバい奴にかかわってしまった(´;ω;`)」と思うんだけど、それでも一緒に逃げるマリー。彼の別偽名の人間の情報を手に入れるために協力も惜しまない。
 後半30分は、ボーンとCIAの攻防が描かれるので、マリーは退場となる。銀行の貸金庫に入っていた大金を渡して、彼女を逃してあげるのです。
 普通のロマサスだと主役はヒロインの方ですから、ここからラストまで出てこないなんてことはありえない。「彼は大丈夫だろうか」と心配するヒロイン、そして彼女のことを想うヒーローを交互に描くことぐらいはするはずだから、そこは「ロマサス」としては残念。でも物語としては妥当です。
 実はボーンは、CIAの「トレッドストーン」という計画での成功者の一人。この計画は、洗脳や薬剤まで使用して優秀な暗殺者を育て上げるもので、ボーンには3000万ドルかかっており、非常に優秀な「マシン」であったわけです。でも、冒頭の海での漂流は、暗殺に失敗してのこと。なぜそうなったかというと、ターゲットの政治家ウォンボシをまさに今撃とうとした時、彼の子供たちが一緒の部屋にいることに気づいたから。それでためらってしまったので、背後から撃たれ、海に落ちた。
 昔、このシーンを見た時、

「ええー、それだけの理由(´д`;)?」

 と正直思いました。そりゃ子供の目の前で、というのはためらう、あるいは暗殺をやめる理由には充分なるだろうけど、今まで淡々と殺人をこなしてきたはずのボーンの心変わりは、どうしても「いきなり!?」という気持ちがつきまとった。
 でも、『ジェイソン・ボーン』を見て思った。あれは、自分の父親のことを思い出したからではないかと。『ジェイソン・ボーン』では、トレッドストーン計画に参加する前の彼の目の前で父親が殺されているんだよね。子供と一緒にいるウォンボシを見て、その子供たちに与えるものは昔の自分が味わったのと同じものだ、と悟り、「何やってんだ、俺」となった──のかもしれない。
 そこまで考えてのあのシーンだったんでしょうかね?
 ルーシー・ゴードンの『奇跡のロマンス』は、記憶喪失になったヒーローが前にいろいろやらかしていたひどいことを自分の所業とは思えず、記憶を失っている間に人間らしい感情を取り戻していく話なんだけど、ジェイソン・ボーンのシリーズも、そうやって過去となんとか決別しようともがく男の物語なのですよね。ただ、やっぱりやってきたことは人殺しですから、そう簡単には、自分すら納得させることができない。
『ボーン・アイデンティティー』は一応ハッピーエンドなんだけど、これ以降のシリーズを知っていると最初に見た時のような激しい萌えが削がれてしまうことは否めず。
 それと見直してみて思ったけど、ボーンのマリーに対する気持ちは、実はほとんど表には出てない。なんとなくぎこちなくて、そっけない。ラストの再会シーンも、キスすらしてないし!(特典に入ってる「もう一つのエンディング」だと、すごいロマンス感のある終わり方でした)
 でも、私はそういうところが好きなんだなあ、と思った。それに関連しているかもしれない別の萌えも『ジェイソン・ボーン』を見て──というか、パンフレットに載っていたマット・デイモンへのインタビューを読んで生まれたことも確かで。

──ボーンはひとりで過ごす時間が多いですね。
2作目『ボーン・スプレマシー』でフランカ・ポテンテ演じるマリーが死んでから、ボーンは完全にひとりだ。


 そうなんですよ。マリーは二作目の冒頭で死んでしまうんです。これ以降、ボーンシリーズにはヒロイン的な女性は出てこない。しかし、彼女のことが具体的に描写されなくても、愛する人をもう失いたくないから一人で生きていくみたいなところが垣間見えて、そこが切なくて好きなんだよなあ。ジェイソン・ボーンになる前のデイヴィッド・ウェッブという青年が、愛国心と正義感が強く、死んだ父親のためにトレッドストーン計画に参加するという優しく真面目な人というのがわかってくると、マリーの存在というのは、孤独な彼にとってとても大切なものだったんだな、と──そういうことが、今回よくわかりました。
 何しろ、「君の前には二度と姿を現さない」みたいなことを言っていたのにもかかわらず、探し出して会いに行っちゃったくらいだからね。今見ると、ちょっと悲しい。

 ここまで書いて思ったのは、「どう考えても、ボーンが幸せになれる要素はない」ということだ(´ω`;)。人気があるうちは(あるいはマット・デイモンのやる気があるうちは)、きっと作り続けるんだろうけど、だんだん見ててかわいそうになってくるんだろうな……。もうすでにかわいそうだし。
 でも、見るけどね! 話がグダグダでもね!ヽ(;`Д´)ノ
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    プロフィール

    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
    評価は★★★★★が満点、★★★が標準点クリア。
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