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▼『私でない私』サンドラ・ブラウン

▼『私でない私』サンドラ・ブラウン(新潮文庫)
 テレビリポーターのエイブリーは、病院で目を覚ました。包帯でぐるぐる巻きにされ、手足も動かせず、声も出せない。飛行機事故に巻き込まれ、全身に傷を負ったのだ。特に顔がひどいらしい。皆が自分のことを「キャロル」と呼び、見知らぬ男性の「妻」だと言う。違うと否定したくてもできない状態のまま、エイブリーは上院議員候補テート・ラトレッジの妻キャロルとして形成手術をされてしまう。だが彼女は、自分が誰であるか告白できる状態まで回復しても、それを言うことはなかった。("The Mirror Image" by Sandra Brown, 1990)(※2016年、改題にて再刊『コピーフェイス ─消された私─』)



『北と南』を読み終わってこれを読み始めた(NHKでドラマになるというので)時、「なんて読みやすいんだ!」と感動したくらいだったのですが、読み進めていくうちに気づく。

「これは──私が苦手な『ヒロインが嘘をついている話』の究極体ではないか(゚д゚)!」

 と。
 そうなんですよ。ヒロインのエイブリーは、手術が成功して筆談ができるまで回復しても、自分の正体を明かさず、ヒーロー・テートの死んだ妻キャロルになりすますことにしてしまうのです。それは、集中治療室で「テートを上院議員にさせるわけにはいかない。その前にあいつは死ぬ」と話しかけてきた男を見つけるため。この事件を追えば、ジャーナリストとして致命的な失敗のためくすぶっていた自分のキャリアを元に戻せるという気持ちもあったけど、主にはテートに惚れてしまったからです。
 エイブリーはとてもエネルギッシュな女性で、ジャーナリストとしての大きな野心も、ちょっとやそっとのプレッシャーに負けないタフさもある。でも、決して自己中心的な人ではなく、飛行機の中からテートの娘を助け出したのも彼女だし、以前の失敗だって、犯罪への憤りの気持ちを抑えられず、その感情のまま突っ走ってしまった、という正義感や思いやりも持つ。しかもそんな失敗をしても、またのし上がろうという情熱と気力がある。通常のロマンスでこれだけエネルギッシュというか、アドレナリンジャンキーっぽい人がヒロインだと、私はちょっと引いてしまうと思うんですが、このお話ではそういう人じゃなきゃこんな状況には耐えられないでしょう。キャラクター造形は見事です。
 だから、ヒロインが嘘をついててもしょうがない。私だって、お話的な理由としては超納得しますよ。しかも当然面白いですよ。入れ替えの発端にしたって、単純なことです。今はDNA鑑定がある、とかそういう問題じゃなく、単に歯科医療データの取り違いですからね。DNAのサンブルを取り違えていたら、現在だってありえることなのです。
 しかも、キャロルが実はとんでもない性悪女だとわかってきて、みんながエイブリーとのギャップに気づきながらも、「あんな大事故に遭って、人生観が変わったんだろう」と納得──したいけど、とてもできないくらいひどい奴、という……。そのギャップを埋めるため嘘に嘘を重ねるエイブリーに、私は「ああ、つらい(´;ω;`)」と思って、何度も本を閉じました。いや、「つらい」というより「怖い」のですよね(´・ω・`)。バレた時のストレスを思うと、もう自分がそれに襲われたようにしんどくなってしまう。しかし面白いから、また読み始めて、また「つらい(´Д`;)」と言って閉じる──というくり返しでした。そして当然、妻に冷めきっていたというより憎んでいたくらいだったテートは、生まれ変わった妻(別人ですけど)に再び惚れ直してしまって、という展開になるわけです。愛する人をだまし続けないといけないエイブリーは、さらにドツボにはまっていく。
 だから、後半でついにバレてしまった時は、かえって読むのが楽になった(´∀ `;)。そこからまたじれったい展開になるんですが、そんなの前半のストレスに比べれば屁でもなく、一気に読み終えることができました。
 ロマンスもさることながら、話の根幹である「テートを殺そうとしている身内」を探す、というのも面白かったです。だいたいの見当(その理由も含めて)は読んでてついたのですけど、ラストは私としては意外な展開になったので、そういう点でも満足。
 でも、最後まで読むとちょっとモヤモヤが残った……。いや、面白さは損なっていないのですが、この長い長い「復讐」の原因の二人へのモヤモヤは、どうにも拭えない。
 いや、犯人はひどい奴だと思うのですよ。子供にはなんの罪もない。なのに、その子たちを復讐の道具として使っていたんだからね。
 でも、そういう親だったのにもかかわらず、子供たちはちゃんといい子に育ってるのよね……。それは、原因の一人の努力があったからだとは思うんだけど、そもそもあんたがあんなことしなければ、というツッコミはどうしても入ってしまう。
 とはいえ、その人は一人でずっとそういう奴隷のような生活に耐えていたとも言える。この人の判断ミスはいくつかあるけど、一番大きかったのは犯人の病的なプライドの高さを見誤った、というところか。
 そう考えると、一番悪いというか、モヤモヤするのは原因のもう一人だな。だって、この人だけ蚊帳の外っていうか──「ひどく傷ついた」とか言ってたけど、それは犯人だって(その当時は)そうじゃないですか。もう一人はずっと奴隷のような生活を強いられてたけど、この人は偶然にもそれから逃れられたわけだし。
 結局、この人がことの発端時に何かしら犯人の気の済む方法でどうこうし(され)ていたら、こんな騒ぎにはならなかったということだ。悪い人というか、ダメだな、ブライアン(´ω`;)。
 モヤモヤは払拭されていませんが、それでも面白かったです。サンドラ・ブラウン作品、やっとピンと来た(´д`;)。NHKのドラマはだいぶ変わっている感じ……あらすじ読んだだけだけど。
(★★★★)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : サスペンス/ミステリ 新潮文庫 ★★★★

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    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
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