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2016 · 12 · 25 (Sun) 16:28

●『メイフェアの不運な花嫁 英国貴族の結婚騒動』M・C・ビートン

●『メイフェアの不運な花嫁 英国貴族の結婚騒動』M・C・ビートン(ラズベリーブックス)
 1807年、ロンドン。メイフェアのクラージズ通り67番地の屋敷は「呪われている」と評判だ。借り手が次々と不運に見舞われ、今では法外に安い家賃にもかかわらず、新しい借り手が現れない。執事のレインバードをはじめとする常勤の使用人たちは、腹黒い代理人に悩まされながら、気前のいい入居者がやってきて、自分たちの運も上向くことを願っていた。そこへスコットランドから美しい令嬢フィオナを連れたシンクレア氏がやってくる──。("The Miser Of Mayfair" by M. C. Beaton, 1986)
・〈メイフェアの不運な屋敷〉シリーズ

 クリスマスなので、昨日クリスマスらしいロマンスをKindleで買ったりしていたのですが、それ自体はクリスマスが終わるまでに読み終わらない、と気づいたりして(´∀ `;)。
 しかし、クリスマス前から読んでいたこのメイフェアシリーズが、雰囲気的にはクリスマスにぴったりな物語だった。
 ほのぼのと温かく、そしてちょっぴり切ない中編二編『メイフェアの不運な花嫁』『メイフェアの勇敢なシンデレラ』が入っています。切ないと言っても、それはロマンスのカップルたちに対してではなく、屋敷常勤の使用人たちのこと。彼らがすごくいい味を出しているのです。読んでるとついつい彼らに感情移入してしまう……。やはり庶民ですから(´ω`;)。弱い立場の人たちの寄せ集めではあるんだけど、ささやかな幸せやお金や食べ物を分け合って生きる「家族」のような絆が切なくも温かい。これが書かれたのは1986年で、日本だとバブル真っ盛りの頃──昔読んだら貴族たちのロマンスの方に感情移入したのかもしれないよねえ。ただ、私は昔も今も貧乏で、やっぱり使用人たちに肩入れしていたかもしれない。今読むからこそ、より心に来る気がします。
 もちろん、彼らの主人である上流階級のロマンスも面白いです。HOTシーン(ない)に頼らずストーリーで読ませます。ヒーローの方は貴族だけど、ヒロインはちょっと訳ありという感じ。『〜不運な花嫁』の方は孤児院から引き取られた女の子、『〜勇敢なシンデレラ』は美しい姉ばかり優遇されてみそっかすにされている女の子です。
 どちらも面白いけど、物語としては『〜不運な花嫁』の方が好きかなあ。スコットランドの弁護士シンクレア氏は、兄が亡くなり、その「遺産」として孤児院から引き取って兄が後見人をしていたフィオナだけが残されたと知り、己の不運を嘆くけれど、フィオナがすごい美人だったので、社交界で裕福な花婿を探そうと画策するのです。とはいえ、このシンクレア氏、賢くもずるくもない。そのかわりフィオナが頭からっぽを装いながら社交界を渡り歩き、意中のハリントン伯爵をものにしようと使用人たちも巻き込み、計画を練るのです。
 フィオナのいわゆる天然を装った“養殖”で賢さを隠すところが痛快です。ヒーローのハリントン伯爵は自身が決めていた花嫁の条件を覆さるを得なくなる。
『〜勇敢な花嫁』は少しミステリー仕立てです。まだ若いというより幼く、でも優しくいじらしく、好奇心旺盛ゆえに失敗もするヒロイン・ジェーン。彼女に会うと、なぜか無意識に「いいかっこしい」をしたくなるヒーローのトレガーサン卿。屋敷の昔の借り手の娘、クララ嬢の死にまつわる謎を二人で解こうということになって──というお話。このなりゆきも、結局彼女の気を引こうとしてなんだよね。でも、自覚はない。
 カップル二人の幸せよりも、執事レインバードの恋が切なくて、ちょっと彼に持ってかれてしまった感じです。でも、どちらのお話も、気持ちよい読後感。続きも買ってあるんだ。六話で完結ということなので、あと一冊で終わりなのかな? なんとか出てくれるといいなあ。使用人たちもみんな幸せになるといいなあ。
(★★★★)

最終更新日 : 2016-12-29

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