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▼『八つ墓村』横溝正史

▼『八つ墓村』横溝正史(角川e文庫)
 母を幼い頃に亡くし、養父家族とも戦争で離れ離れになった寺田辰弥は、ある日、岡山の旧家・田治見家の跡取りだとわかる。ところが彼を迎えに来た母の父が突然倒れ、亡くなってしまう。辰弥は、田治見家の双子の大伯母から依頼を受けた未亡人の森美也子に連れられ、八つ墓村を訪れる。田治見家には病弱な異母兄姉がおり、兄の久弥は床に臥せっていた。その久弥が、辰弥の目の前で祖父と同じように亡くなる。
・〈金田一耕助〉シリーズ(金田一耕助ファイル1)



 あらすじが書ききれない……。
 八つ墓村の名の由来になった歴史もまた、重要なのです。戦国時代、財宝を抱えて逃げ延びた落ち武者たち8人を、村人たちが報奨金目当てで皆殺しした。そののち、若大将の「七生(しちしょう)まで祟ってやる」という言葉のとおり凶事が続いたため、8人を手厚く葬ったことから「八つ墓村」と呼ばれるようになる。落ち武者たちが村の下に張り巡らされた鍾乳洞に隠したという財宝は、いまだ見つかっていない。
 落ち武者たちを殺害した首謀者の子孫であるのが辰弥の父・田治見要蔵。辰弥の母・鶴子は要蔵にむりやり犯され、仕方なく妾になっていた女性。赤ん坊の辰弥に焼きごてを当てるなど残虐な要蔵から鶴子が逃げたことから、彼は狂い、村人を32人殺して山に逃げ込み、以来行方不明になる。(このエピソードにはモデルの事件があります)
 ここまででもだいぶひどい話です(´ω`;)。最初の村人というか、田治見家の人間がクズすぎる。
 しかし、辰弥の一人称で語られる物語は、実はこんな感じ。



 ……あれぇー(°∀。)? 私、昔読んだ時、「とてもロマンスだわっ(´Д`*)」と萌えた記憶があるのだが、読み直したらエロゲーというか、ハーレムもののラノベみたいじゃねえか!(まあ、一応ロマンスカテゴリには入れておこう)
 実はこのツイートは微妙にネタバレなんです。けど、私は気づかなかった。「義姉」という言葉がネタバレなんですね。異母姉の春代とは、血がつながっていない。というか、要蔵は辰弥の父ではないのです。
 とにかく、辰弥がこの三人(人妻っていうか村のもう一つの旧家の未亡人・美也子、義姉の春代、天真爛漫な少女(っぽいだけで年齢は少女ではない)典子)にモテまくって、人がどんどん殺されて、最後は鍾乳洞で大捕り物&宝探しで大変! という物語なのです。
 辰弥もけっこうまんざらでもなく、「困っちゃうな〜(・ω<)テヘペロ」みたいな感じで誰にするかいっちょ前に迷ったりする。美也子には大人の魅力を感じ甘えたい気持ちがあるし、一途に慕ってくれる典子と一緒にいると庇護欲が湧いてくる。春代は姉だと思っているから一線を画しているが、その優しさとけなげさをひたすら信頼している。
 これだけなら「俺、人生で最大のモテ期だな(´∀ `)〜」とか、喜んでればいいんですが、何しろバンバン人が殺されるわけです。しかも、なんかみんな自分が犯人みたいになってるけど!? 村人は「八つ墓明神がお怒りじゃ!」ばかりで「警察が逮捕しないのなら、俺たちでぶち殺してやる!」とリンチ宣言をし始める。仕方なく、迷路のような鍾乳洞に隠れて何日も過ごすはめになる辰弥。
 岩影でクスンクスン泣いているところに、三人のヒロインが入れ代わり立ち代わりお弁当持ってやってくる。しかし、実はその中の一人が犯人なんですよねー。
 ──って、ここまで金田一耕助の名前がないですね(´ω`;)。この作品、金田一自らも言っているけど、「ぼくにいいところは少しもなかった」お話なのです。辰弥の一人称というのもあって、金田一があまり活躍しないというか、できないのですよね。しかも、最初から犯人の見当はついているというか、別件で「こいつが犯人なんじゃないか」という形で依頼されている。でも、この祟りをカモフラージュにした連続殺人では、運も犯人に味方してなかなか尻尾をつかませない。そんな状況に、金田一も辰弥も村人たちも翻弄されるわけです。
 しかし、金田一が活躍しないからといってつまらないわけではなく、ものすごく面白いんですよ。なんだろうね、このサービス精神。次から次へと繰り出される劇的な展開は盛りだくさんなのにスピーディーでまったくダレない。特に後半はほとんど鍾乳洞での逃亡劇なのですけど、冒険活劇的なワクワク感にあふれている。そういう軽い読み口と凄惨でえげつない過去とが絶妙に混じり合っているんだよなあ。
 そして、もちろんミステリとして読み応えあります。清涼感は薄めですがちょっとある。でも過去がひどすぎるし、一人かわいそうな人がいるんだよね(´・ω・`)。長い目で見るとよかったことではあるのだが、彼が幸せになるといいな、と思いました。

[2/8追記]
 前出ツイートの「義姉」というネタバレなんだけど──実は、他の2つも微妙に変えてあると原作の最初の段階でわかるんだよね。「人妻」は「未亡人」、「少女」は「少女っぽいだけ」と。そうなると読んだことない人は、「義姉」が「異母姉」となっていてもそれがネタバレとは気づかないんじゃないかな。考えすぎかもしれないけど、そういうミスリードを利用して読んだことのない人に配慮したツイートだったんだろうかと思いました。
(★★★★☆)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : サスペンス/ミステリ ★★★★☆ 角川文庫 シリーズ

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    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
    評価は★★★★★が満点、★★★が標準点クリア。
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