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2017 · 03 · 08 (Wed) 18:54

◆『プレイボーイの罪』キャサリン・スペンサー

◆『プレイボーイの罪』キャサリン・スペンサー(ハーレクイン)
 キャロラインの姉夫婦が双子の子供たちを残して海難事故でなくなってしまった。葬儀のため、イタリアへ向かうキャロラインを迎えに、双子の叔父であるパオロがやってくる。9年前、姉夫婦の結婚式のあと、二人は熱い夜を過ごした。だが、プレイボーイの彼にとってそれは取るに足らないことだと、彼女はすぐに思い知る。("The Italian's Convenient Wife" by Catherine Spencer, 2005)

 プレイボーイっつーか、ただの「ヤリ逃げ男」です(´-ω-`)。
 若い頃のヒーロー・パオロ、ヒロイン・キャロライン(キャリー)の処女を奪い、もちろん避妊もなし。そして、「俺のような男は純粋な彼女にふさわしくない」という謎理論であっさり逃げる。別の女とのイチャイチャを見せつけるという追い打ちまでして。クズでアホで外道な男です。だから、「少しはましな男になったんだ」と言われてもまったく説得力がありません。
 そして、そんなクズにまたポーッとなるキャリー。こっちも全然成長してない……。自分の産んだパオロの子供(双子)を引き取った姉夫婦の死によって、はからずも彼と夫婦になり双子を育てよう、ということになるけれど、本当のことはなかなか言えず──というお話です。
 もう12年前とはいえ、2005年の段階でこんな古風な話でいいのかよ、と思いました。妊娠したことを話さないで一人で育てたり、この話のように身内の子供のできない夫婦へ養子に出す、というのはハーレではよくあることなのですが、子供の権利とか、本当の父親の責任というのを無視して話を進めることにもう、リアリティはないんじゃないかと思うのです。いかにハーレであっても。
 まあ、これは今の私の考えであって、現実にはこういうことってきっとあると思うので、シークレットベイビーという人気のジャンルがなくなりそうにはないですが、DNA鑑定でいくらでも証明できる今となっては「バレなきゃいいだろ」みたいな雰囲気が漂ってしまうんですよねえ。鑑定が難しかった頃なら、フィクションとして楽しめるんですけど。
 しかも、妊娠のことを姉夫婦に打ち明けたら、義兄が激怒して「弟に責任を取らせる!」となるのはいいんですけど、そのあとがまた謎展開なんですよ。

「結婚したくないと思ってる人と結婚はしたくない」

 とキャリーが言うのもわかる。それに姉夫婦が納得して、生まれた赤ちゃんを引き取るということになるのも、とりあえずはけっこう。でも、結局パオロに知らせない理由は、

(パオロと義兄の)両親にバレたら、家名を傷つけられた父親は面目を失い、母親はうちひしがれるだろうから」

 ってことなんですよね。母親はともかく、古い考えに凝り固まった頑固な父親が知ったら、確かにそうでしょうね。
 でも、親に知らせる必要なんかなくね(゚д゚)?
 知らせる必要があるのは、妊娠させたパオロだけでしょ。未成年でもないんだから、親には黙ってればいいじゃん? まあ、キャリーは18歳なので、それが話す必要性になるとしても、姉夫婦もいるんだから、とりあえずはちゃんと当事者と事情を知っている者が話し合って決めればよくね?
 父親がかなりめんどくさい人で、説得力はなくても「言いたくない気持ち」というのがあるのはわかりましたよ。黙っていても無駄な何かがあるのかもしれないし──となんだかんだ言い訳をしながらも結局、「めんどくさいから言わない」みたいな方向に落ち着いたとしか見えないわけですよ。
 1970〜80年代の話だったら、別に気にならないと思うんですけどねえ……。めんどくさい家族はいつの世にもいますけど、結局そういう人がゴネ得する話になるのもハーレは多いよね。「お前がいるからややこしいんじゃねえか(;`Д´)」と言いたくなって、モヤモヤするんですよ。父親だから、母親だから許される、というテンプレもきっとハーレにはあるんだろうなあ(´・ω・`)。

 なんとなくKindleで買ったのですけど、読んでて「なんでこんなの買っちゃったんだろう」と思った(´・ω・`)。古本で100円で買いたかった(それでも評価は変わらないけど)。古本ですごくいいのを読むと、

「ああっ、ちゃんとお金払いたかった! でも絶版で、もう買えない!」

 というのもあるので、それにお金を払ったと思えばいいか──となるか(゚Д゚)ゴルァ!! 

[3/26追記]
 おすすめしていただいた荻丸雅子さん画のコミカライズを読みました。
「ダメ」とか「足りない」と思ったところがすべて補ってあった……。ストーリーはほぼ同じだが、まるで別作品のようにさわやかなお話に生まれ変わってる!
 ラストも、原作は子供たちをダシにしてうやむやに終わるんだけど、そういう逃げを排し、義父にすら忘れずお仕置きをするという──いやあ、日本のマンガ家さんってほんとにすごいですね!(水野晴郎風に。古い)
(★★)

最終更新日 : 2017-03-26

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