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2017 · 03 · 13 (Mon) 16:15

◆『絆をもう一度』ルーシー・ゴードン

◆『絆をもう一度』ルーシー・ゴードン(ハーレクイン)
 ケリーは、テレビジャーナリストとして活躍する夫ジェイクと今日別れた。8回目の結婚記念日が離婚記念日になったので、それをお祝いしてパーティーを開いていると、ジェイクがやってくる。二人は互いに複雑な思いを抱きながら、最後の夜を一緒に過ごす。そして数週間後、ケリーはテレビで凶弾に倒れたジェイクの姿を目にする。("The Pregnancy Bond" by Lucy Gordon, 2002)

 8年間夫婦として暮らしていてもまったく噛み合わなかった二人が、ヒロイン・ケリーの思いがけない妊娠と、ヒーロー・ジェイクの怪我によって新たな絆を取り戻すお話です。
 野心と自信の塊であったジャーナリストのジェイクと、大学をあきらめたケリーは、彼女の高校卒業と同時にデキ婚をしたのですが、結局赤ちゃんは流産してしまう。そして、その時もそれ以降も彼はほとんど家にいず、世界を飛び回ることになる。
 離婚するまで8年は長いなあ、と思いましたが、それはきっと「また赤ちゃんができれば」みたいな望みがケリーにあったからなんでしょう。そう考えると、8年という年月はあきらめる妥当な年月とも言えるかも。
 しかし、それまで全然できなかったのに、「最後だから」って一晩一緒に過ごしたら、それでまた妊娠してしまう。大学にも入り直し、忙しいケリーが「どうしよう」と迷っているうちに、ジェイクが紛争地域を取材中、銃で撃たれてしまう。
 帰国して入院した彼を見舞うと、なんだかとても元気がない。二人とも身寄りもいないし、ケリーは妊娠していてバイトもできないので、彼の具合がよくなるまで同じ家でルームシェアすることになる。
 しかしジェイクの身体は思うようによくならない。ケリーが妊娠しているのは自分の子なのかそれとも別の男の子なのかわからないし、前に流産した時期も近づいてくるし、彼に横恋慕しているテレビプロデューサーの女はしょっちゅうちょっかいをかけてくるし──という気苦労(ケリーもですけど)も多いけど、この「よくならない」というのには、実は理由がありました。彼はうつに陥っていたのです。
 ハーレではなかなか見ませんよ、ヒーローがうつに陥るとは! ちょっとぼかした書き方ではあったけど、薬も服用しているとあったし、列挙されている症状からして「うつ状態」ではなく「うつ病」になっていた、と言えるのでしょう。ショッキングなことからうつ病にかかってしまうのは、ある意味避けられないことでもあります。
 ハーレのヒーローといえば、うつ病どころかサイコパスを疑うほどの反省や落ち込みのなさが特徴ですから、これは本当に珍しい。後半、ボロボロな状態でケリーにすがって今までの後悔を語るシーンは、反省という生易しいレベルではありません。「もう二度と元の自分には戻れない」「俺は君を失って当然の男だった」という絶望を伴った心からの告白です。
 失って初めてわかる大切だったものを本気で切望し、涙ながらに懺悔する姿にはこちらももらい泣きです(´;ω;`)。うつ病もそうなんですけど、一度信頼を失った関係をやり直すために努力すべきことは、「元に戻す」のではなく「新しい関係や環境を作り出す」ことだと二人とも気づく。なんという真っ当な結論の上でのハッピーエンドだ!
 ほら、ちゃんとやればこんなにも許してもらえるやんけ(`Д´)>他のハーレヒーロー
 ルーシー・ゴードンは、ほんとに欧米男のきちんとした反省や、ヘタレ具合を書くのがうまい作家です。あと、お邪魔女に効果的なやり返しもする。溜飲下がるわ〜。
(★★★★☆)

最終更新日 : 2017-03-13

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