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◆『誰でもない人』エマ・ダーシー

◆『誰でもない人』エマ・ダーシー(ハーレクイン文庫)
 4年前、ジュネヴラはオーストラリア人のルークと恋に落ちた。しかし彼は別れの手紙を寄こして姿を消す。ジュネヴラは彼の子供を生み、本屋を営みながら一人で育ててきた。だが、仕事で訪れたロンドンで、彼女は愛しいルークの後ろ姿を見つける。急いで駆け寄って声をかけるが、振り向いた男性の顔にはひどい傷あとがあり、ルークとは目の色も違っていた。("Always Love" by Emma Darcy, 1988)



 この記事でリクエストされていたのですが、かなり時間がたってしまいました。ごめんなさい……。おすすめありがとうございました。

 さて──面白かったのですけど、かなりモヤモヤが残りました……。いろいろ考えていたら、ヒーローのルークがすごくかわいそうに思えてきて。
 時系列に沿って話を書き出すとですね、まずルークの母でアメリカ人のアンナとオーストラリア人の富豪ジャック・プレストンが出会うところから始まります。アンナは結婚していたので、惹かれ合いながらもいったんは別れる。その後、アンナは夫に暴力を振るわれ死亡(このDV夫は妻と息子を日常的に虐待していたと思われる)。ジャックはルークを引き取ってオーストラリアへ帰る。彼は幼い病弱な娘ヴィクトリアと二人暮らし(妻は事故で亡くなっている)なので、ルークはヴィクトリアと兄妹同然に成長。しかしヴィクトリアは彼を男性として愛するようになる。
 そして、ルークがイギリスへ旅行に行って、ヒロインのジュネヴラと出会い、結婚しようと決意する。ところがそれを知ってヴィクトリアはショックを受け、ますます病状は悪化する。ジャックはルークをオーストラリアに呼び戻し、ヴィクトリアと結婚してくれと頼む。このままだと娘が死んでしまうから、と。ルークは恩義のあるジャックの説得に屈し(ジャック曰く「あの手この手で心理的な脅しをかけた」)、ジュネヴラに別れの手紙を送り、ヴィクトリアと結婚する。ジュネヴラに対して、亡き母の名を冠した基金を相続させる、という手続きをして。
 ジュネヴラは一人で息子ジョニーを出産する。その数ヶ月あとにヴィクトリアも娘フェリシティを生むが、出産時に死亡。数週間後、ルークはイギリスへ向かっていたが、搭乗した飛行機が墜落。全身にひどい怪我を負い、顔が傷だらけの別人のようになってしまう。三年間、何度も手術をしてやっと回復し、歩けるようになって、ついに恋い焦がれていたジュネヴラに会いにやってくる。でもなぜか本人としてではなく、アメリカ人の編集者クリスチャン・ネモという名で。ひどい仕打ちをして、外見も変わってしまった自分としては会わす顔がない、と思って。哀れみを持たれたくない、一人の男としてまた愛してほしい、という気持ちもあったようだけど。
 ジュネヴラは「ルークじゃない」と本人が言っているにもかかわらず、クリスチャンがルークだと確信している。目の色が違う、背中のほくろがない、など別人である証拠があっても。しかし、友人の弁護士に調べてもらったら、「ルークは死んだ」と言われてしまう(調べた探偵がポンコツだったのです)。事故の記事などもあり、さすがにそれは信じるしかないな、と思ってたら、ついにルークの嘘がバレてしまい、ジュネヴラは激怒する。
 というようなお話なのですが──幼い頃はDVな父に母を殺され、生まれ故郷から遠く離れて暮らすことになり……大人になってやっと愛する人と幸せになれるかと思ったら、命の恩人から「娘と結婚しろ」と強要され、妻は出産時に亡くなり……愛する人の元へ戻ろうとしたら飛行機事故で生死の境をさまよい、歩けるまで何年もかかる怪我を負い、何回手術をしても顔は戻らず──悲惨すぎるだろ、ルーク(´・ω・`)。誰も彼のことを心から考えてあげる人がいない人生だったのね。そうしてくれる唯一の人が、ジュネヴラだったわけだ。
 ルークの謎の行動も、背景がわかれば「なるほど」と思えるのですが、ジュネヴラの怒りももっともなんですよ。わかった瞬間「バカにして!(`;ω;´)」みたいな気持ちが爆発したんだと思う。それにかなり引きずられてしまって、実は読んでいる最中はルークにあまり同情できなかったんだよね。
 ジャックも気の毒な人だから、どうしても娘の望みをかなえてやりたい、という気持ちに無理はない。仕方なかったこととはいえ──まあ、ここら辺にモヤモヤが残っちゃうんですよね。いろいろと彼が事情を話して、ジュネヴラを説得するんですけど……多少「お前が言うな(゚д゚)」感があったりなかったり。けど、この人しか話せる人はいないのよね(´ω`;)。
 読み終わったあとにいろいろ考えるとなかなか感慨深い作品なのですが、読んでいる最中のモヤモヤがどうしても払拭できなくて、私の正直な評価としてはこのくらい。でも、いい作品だと思いますよ。
(★★★☆)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : コンテンポラリー ハーレクイン(文庫含む) ★★★☆

No title

 リクエストしましたしなもんです。ありがとうございました。
 やっぱりモヤモヤしますよね。読んだのがかなり前なのでうろ覚えのこともあるんですが(好きな作品ですが再読する気になれなくて)、わたしが一番引っかかったのは、妻が亡くなってすぐにでもジェベヴラの元へ行こうとしている、そう思っていた状態で妻との間に子供を設けるという事なんですが....。
 ミラー・イメージ と 最後のおおいなる情熱 もかなり重くモヤモヤが残ります。機会がありましたら取り上げていただけると嬉しいです。

こんにちは。
いつもブログ、楽しく拝見しています。
わたしもローラ・リーの禁じられた熱情を読んだときに同じようにもやもやしました。
このお話もヒーローが別人になってヒロインの元に戻ってくる再生もののようなお話で、読んでる最中はもやもや(イライラ?)しました。
好きなシリーズもののロマサスなので何度も読んでしまうのですが(笑)
白さんも機会があれば是非!白さんの感想が気になります〜!

モヤモヤ満載

>しなもんさま
コメントありがとうございます。
こちらこそ読むのが大変遅くなってしまいまして、ごめんなさい。
私も確かに一番大きなモヤモヤはそこですね。ただルークは、「ヴィクトリアの前では完璧な夫としてふるまっていた」という文章があったんですよね。ほぼ脅迫というか、逃げ場がない状態で結婚したわけですけれど、本人がどうしてもいやなら拒否できたはず。でもルークは、そういう重荷というか、ジュネヴラに言えないような良心の痛む過去を抱えて彼女と結婚したくないと思ったんじゃないでしょうか。そして、いったん決心をしたならば、妹同然には愛していた妻を幸せにしよう、と努力をしたんじゃないでしょうかね。義父の目もありますし(´ω`;)。
ただ、子供を作る行為はしない方が妻が長生きできたかも、とも思うので、なんかこう……黒いものが見え隠れするような、私の深読みのような──妻はきっと、子供を産めて幸せだったんだとは思いますけど、自分の幸せのために妻に生きていてほしい、という部分が欠けてはいますよね……。
──って、またモヤモヤしてきました(´∀ `;)。問題作ですかね!?

すみません

>しなもんさま
すみません、おすすめしていただいたのにお礼言うの忘れてしまいました、ありがとうございます!
『最後のおおいなる情熱』はKindle版があったのでさっそく買います。『ミラー・イメージ』は前によく古本屋さんで見かけたんですけどねえ、最近はどうでしょう……。Kindle版がないのが残念です(´・ω・`)。

さっそく

>清水さま
コメントありがとうございます。
『禁じられた熱情』、Kindle版がありましたので、さっそく購入いたしますね。
感想は少し時間がかかってしまうかもですけど、気長にお待ちいただけるとうれしいです。おすすめありがとうございます!

No title

初めまして。いつも楽しみに拝見しています。
これ、私も読みましたが、子供まで作ったのはどうなんでしょうね。
そのせいで「愛はいつでもあったさ」で最後を締められても
へー…そうなんだ…いつでも?と微妙な読後感になってしまいました。短い間に違う女性に子を二人産ませ、兄妹として暮らすわけなので子供たちも将来傷つくんじゃないのかなあ?ヒーローの徹底した演技の一環に子作りも含まれていて、それを作家が良い事だと書いている感じがして、私としてはそこにちょっと嫌悪感があります。

一番モヤモヤするのは……

>まささま
 コメントありがとうございます!
 ルークの「結婚生活」というのがどんなものだったのか、と考えると、モヤモヤももちろんあるんですが、彼にとっては地獄のようだったのではないか、とも思えてくるのですよね。
 ルークとしては「白い結婚」にしたくても、妻からは「なんで抱いてくれないの!?」とか責められたり、義父にも言いつけて「君はどうして娘の願いを叶えてやらないんだ!」とまた責められたり──というのがあったんじゃないのかと。彼としては、どっちを選んでも病みそうですな……。
 男女を逆にすると、ハーレでもよくある設定になるんですけどね。
 ルークにもモヤモヤしますけど、私としては義父に一番モヤモヤするんです。しかし、彼を手放しに罵倒できない雰囲気もあって、そこもまた……ううう。

また追記……

>まささま
 あ、でも男女逆転だとやはり「白い結婚」が基本前提になりますね(´ω`;)。
 男性だと白くはならないんかい、という感じではあります……。
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    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
    評価は★★★★★が満点、★★★が標準点クリア。
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