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◆『最後のおおいなる情熱』エマ・ダーシー

◆『最後のおおいなる情熱』エマ・ダーシー(ハーレクイン)
 舞台デザインの仕事をしているアンは、7年ぶりにサディ・リオダンと再会する。7年前、私の心を奪ったまま黙って姿を消した男。今は天才劇作家として名を馳せているが、一度としてアンへ連絡をしてこなかった。彼の舞台のセットデザインを手掛けた彼女に、サディは言う。「君と僕は同じ情熱をわかちあっているんだ」──いまさら私の人生に舞い戻って、何をしようとしているの?("The Last Grand Passion" by Emma Darcy, 1993)



『誰でもない人』でおすすめいただいた(ありがとうございます!)エマ・ダーシーの問題作その2。
 読んでいて、実はオチがわかってしまったのです。以前ペニー・ジョーダンの『あなただけを愛してた』へのコメントにこの作品らしきことが書いてあり「そういうの私も読んだことある」という話をしていたのですよね。それでピンと来ちゃった。
 知らなかったら読後感が変わっていた可能性はあるけれど、今回は推測できたからこそ冷静に読めて、ヒーロー・サディの分析ができたと言える。
 サディ、実は既婚者なのです。ただし奥さんは病気(グッドパスチュア(グッドパスチャー)症候群)で10年前から植物状態。7年前にヒロイン・アンに出会って、彼女が結婚を望んでいることに気づき、別れも告げずに姿を消します。その1年後から彼は劇作家として売れ始める。別れて7年たって戻ってきたのは、奥さんの人工呼吸器がはずされるのが近いから、だよね? 少なくとも私はそう思いました。
 そこまで切羽詰った状況なのに、彼はアンに事情を説明することなく、彼女を愛人にする。承知して愛人になったはずなのに、アンはどうしてもあきらめきれず計画妊娠。それにサディも喜ぶんだけど、彼は再び姿を消す(奥さんの病院へ行ってしまう)──。
 うーん、いろいろと作為が見え隠れする作品です。ヒロインのアンに「言わない理由」は単に「言いたくない」あるいは「言う勇気がない」ということなのです。最初に出会った時は深い関係にならなかったのでまあいいとしても(それでもけじめをつけないのはひどい)、そのあと不倫関係になった段階でも言わないのはズルい以外の何者でもない。「言ったらアンに捨てられるかも(´;ω;`)」と思う気持ちもわかるけど、もはやそういう次元の問題じゃないだろ、と。あまりにも深刻だから他人は口を出せないしさあ。10年間、周りがみんなサディに気を遣っていてそれに甘えているなあ、とも感じました。もちろん現実のことであるなら、こんなに悲しくつらいことはないし、10年こうやって過ごしたきたのならば、そのストレスは当人にしかわからないだろうから、どんな態度でも無理はないとは思うのですが──ロマンスは基本ファンタジーなフィクションですんで。そこらのさじ加減は難しい。「ロマンス」として読めば、

「変なポエム詠んでないで、さっさと奥さんのこと話せよ(゚Д゚)ゴルァ!!」

 と思ってしまう。
 ヒーロー以前に人間的なズルさがあるとしか思えず、キャラとして破綻しているんですよねー。「言わないこと」は単なる作者の都合──奥さんのことを最大のクライマックスにしたいという作為にしか読めない。
 ただひねくれて考えると、ちょっと別の解釈というか、もう一つの「作為」も感じました。それはサディの天才的な劇作家という評価が、アンと別れた一年後からであるというところ。アンに対する未練という苦悩を戯曲にぶつけて、それが素晴らしいものになる、ということに対して、依存はしていなかったのか? 「作品の出来とかどうでもいい」と本人は言ってますけど、そこらはクリエイターとしての複雑な感情が入り混じっていると思う。苦悩から生まれた作品が素晴らしいのか、それとも作品のために「苦悩」するのか。どちらが先なのかわからなくなるというか、そんなことすら考えず無意識に作品を書くという行為を重ね、それをしないではいられなかったのではないかと。
 そんな状態であれば、アンに奥さんのことを話さないという選択には説得力が出るんですよね(もはやロマンスじゃないけど)。話してしまえば苦悩も終わりを告げる。この苦悩がなくなったら、俺はもう芝居を書けないかもしれない(実際、アンと暮らし始めたら書かないでいたし)。できればギリギリまで粘りたい、どうせいつかは俺は終わるんだ(つД`)みたいな、悲劇のヒーロー気取り。
『愛の旋律』っていうアガサ・クリスティーの恋愛小説があるんですけど、これの原題は「巨人の糧(Giant's Bread)」。天才は何を糧に作品を生み出すのか、という話なんですよね。天才劇作家サディの糧が「アンと結婚できない」という苦悩だったとしたら──というか、そう考えないとこいつのズルさは消化できませんよ(´ω`;)。苦悩するヒーローは好きだが、苦悩に酔う奴は(現実でも)嫌いだ。
 ロマンスではなく恋愛小説ならば、アンはサディのこういう特殊な部分も理解してすべて受け入れて、二人にしか理解できない愛もある、というような方向になっていくんでしょうけれど、ハーレのヒロイン設定ではそうもできず、結局ちぐはぐな感じで終わる。ちょっとヒロインがだまされた感がなきにしもあらず。奥さんが亡くなったあと、サディはちょっと「一人になりたい」と言って故郷に帰るんですが、その時に彼は芝居を書いているんですよね。それがタイトルの「最後のおおいなる情熱」なんですが──私には、「あ、別に苦悩をネタにしなくても、けっこう書けるな(゚∀゚)」と気がついたとしか思えず……。
 いや、これは私の妄想です。実際の終わり方は、ちょっとスピリチュアルな感じで奥さんの意思を汲むというハーレらしいフォローも入ったものです。評価は正直よくわからない……わからない時は「★★★」なんですけど、ツッコミが多すぎて「まあまあ」とも言い難く、こんな感じで。
(★★☆)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : コンテンポラリー ハーレクイン(文庫含む) ★★☆

そうでした!

白さま、こんにちは。久々にコメントさせていただきます!
そうでした!これ、でした!
改めて、おさらいしても、やはり許せないなぁ。などと、感じました。私は「ロマンス」としてしか、読まないので、情状酌量をヒーローにしてあげません
ヽ(♯`Д´)ノコリャーッ
まぁ、ヒーローに腹をたてるのも、読む目的にもなるのですけど。このヒーローは、ダメダメ(*_*)
何はともあれ、これをアップして頂き有り難うございます。ダメダメヒーローに、他の方も、こいつ、ダメじゃん。って、意見を聞くと、嬉しいです。

やはりー

>かなさま
コメントありがとうございます!
やはりそうでしたかー。
こいつの思考は単純に「言いたくないから言わない」という子供みたいなわがままであり、やはりそれはロマンスによくいるガキっぽいヒーロー像と比べても人間的に破綻しているとしか思えませんでしたねえ。この作品で気の毒なのは本人じゃなくて奥さんですし。
ただ、別解釈の方向性の恋愛小説はちょっと読みたいって思っちゃったんですよね。ハーレでは無理だし、ネタを使うのはもったいなかったんじゃないかしら(´ω`;)。

No title

白さま、早速のアップ、ありがとうございました。

白さまの的確なレビュー、さすがです。私がモヤモヤすると思っていたのが整然と文章になっているー!とすっきりしました(^^)
以前三大クズヒーローを記事にされていましたが、このサディなんかも候補に上りませんか?

加えました

>しなもんさま
 コメント&おすすめありがとうございました!
 三大クズヒーローの記事はさっそく更新して、サディをこっそり加えておきました。もう全然三大ではなく、11人になっております。
 エマ・ダーシーは割と公平なヒーローを書く人だと思っていたのでがっかりです(´∀ `;)。
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    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
    評価は★★★★★が満点、★★★が標準点クリア。
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