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▼『心閉ざされて』リンダ・ハワード

▼『心閉ざされて』リンダ・ハワード(二見文庫)
 アラバマきっての名家ダベンポート家は、ロアンナの祖母ルシンダが君臨していた。七歳のロアンナは両親をなくし、ルシンダの暮らすダベン・コートへ引き取られた。そこには同じく親を亡くした従姉妹のジェシー、そして又従兄弟のウェッブ・タラントがいた。優秀なウェッブは祖母から信頼され、ダベンポート家を継ぐべく、10年後ジェシーと結婚する。しかし、ロアンナがある秘密を目撃し、ウェッブとジェシーが激しい口論をした日の夜、ジェシーが無残な死体で発見される。("Shades Of Twilight" by Linda Howard, 1996)



 この記事のコメントでおすすめしていただきました。ありがとうございます!
 実はブログ開設前に読んでまして(ってもう10年前かよっ(´Д`;))、久々の再読です。
 これもまたリンダ・ハワードの脂が乗りに乗っている頃のロマサスです。とはいえ、当時の読書メモのありかがわからない(探してみたんだけど……)。なんだかやたら腹を立てたような……あの人が犯人だったような……いや、何かと混同しているような──というおぼろな記憶が甦る。
 おすすめされたポイントは「自己評価低めヒロイン」です。私の好みのヒロイン。
 ロアンナは、リンダ・ハワードのヒロインにしては確かにおとなしい。ただし子供の頃は少し多動気味なくらい元気いっぱいで、彼女を理解していた両親以外の大人からはいつも叱られてばかり。両親が亡くなってダベン・コートに引き取られてからは、ヒーローのウェッブ以外からは持て余され、萎縮して育つ。特に年上の従姉妹ジェシーからは何かといじめられ、けなされ、下に見られてばかり。それを助長するのは祖母のルシンダで、この人もジェシーを甘やかしているという自覚はあるんだけれど、落ち着きがなく失敗ばかりのやせっぽちロアンナより、外面が完璧なお嬢様な上に超美しいジェシーの方をどうしてもひいきしてしまう。ただ、ルシンダがかばったとしても、そして実際にウェッブがかばったりすると、結局矛先はロアンナに向かうわけです。
 かつて私は、このようなみそっかす主人公が最後にみんなを見返す物語って大好きだった。いや、今も好きです。ラストはスカッとする。けど、年取った今は途中のストレスがつらい……。昔よりがんばらないと読めない……。それでも読むけど。やっぱり好きだし(´・ω・`)。
 ただしこの作品では、一番ロアンナをいじめていたジェシーが割と最初の方で殺されてしまいます。犯人と疑われたのは、夫のウェッブか、夫婦ゲンカの原因を作ってなおかつ第一発見者であるロアンナか、ということになる。ただ、やせすぎ(拒食症気味と言われていた)のロアンナでは凶器と推察される重いものは使えないだろう、というのが警察(保安官)の見解。ウェッブは、実は動機も充分だが(保安官には言わなかったけど、ジェシーが自分以外の男の子供を身ごもっていた)、証拠不充分で釈放。しかし結局、祖母も含めダベンポートの親族は誰も彼を信じてくれなかったことに失望して、地元を出ていく。信じてくれたのは、ロアンナと母親と母方の叔母だけ。しかしロアンナはこの騒ぎの原因を作ったようなものだから──というわだかまりを残したまま。
 そして10年たち、残された孫はロアンナ一人というルシンダを助け、彼女はダベンポートの事業を切り盛りしている。大好きな馬の調教もあきらめている。がんを患っているルシンダがウェッブに会いたがっているので、ロアンナが連れ戻すことになる。
 で、ウェッブは戻ってくるんだけど、立派な大人の女性になったロアンナが、全然笑わなくなったことにショックを受ける。そして、戻ることを約束するかわりに彼女を利用したことを恥じる。自分は、疑われていた時に信じてくれた彼女を拒絶したのに。10年の間、彼女は誰からも顧みられず苦労ばかりしていたのに。昔のように素直に自分を崇拝し、愛してくれたロアンナを取り戻したい。しかし、また不可解な出来事が起こり始める。
 この不運な名家の雰囲気が、ゴシックロマンっぽい。運が悪いというか、人間が悪い。クズが一人混じってその毒素が広がる過程のドロドロさ加減が、横溝正史っぽくもある。いや、横溝正史はゴシックロマンなんですけど、なんだかその湿気の多さというか、クズのサイコパス度の高さがね──つまり、日本的な村社会も南部の取り繕った上流社会も同じという後味の悪さを生んでいるのですよ。
 名家なんだけど長生きできない人ばかり(しかも事故が多い)、子供も多くもうけられない、という悲劇性がリンダ・ハワードにしては珍しいと感じました。ロアンナも、見た目はそうエネルギッシュではない。でも、「居場所がない」と感じていた少女時代を経て、次第に「この家から出て自分一人で生きていこう」と思うようになって、初めて本来の生気が戻ってくるところがすごくよかった。本当の意味で強い女性になっていくんだよね。
 ウェッブも、ジェシーと結婚したままでは地獄だったろう。離婚しようとしても、おそらくは無理だったろうし、彼もお坊ちゃんのままだったろうし。そして、ゆっくりと一族は滅ぶしかない。だいたいロアンナ以外、大なり小なりクズかダメな人ばかりだしねー。その中でもジェシーは最大の毒素であった。性格が悪いというレベルではなく、良心がない。だから、それを断つべき人が殺した、という状況だったのです。
 そう、犯人は私の記憶と同じだったんだけど、似たような別の小説があってですね──腹を立てたのはそっちらしい(´ω`;)。そして、犯人の設定も同じだった(ありがちな気がするのは気のせい?)。しかし、犯人へのモヤモヤや、全体的な後味の悪さはあっても、この作品の方がずっと面白かった。こういうお話の場合、もっともクズでゲスな人間が殺されるっていうのは大切なことなんだなあ。
(★★★★)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : サスペンス/ミステリ 二見文庫 ★★★★

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Re: No title

>Sさま
コメントありがとうございます。
こちらこそリクエストありがとうございました。久々に読んで、昔よりも面白く読めた気がしました。
笑顔を数えるところ、いいシーンでしたね。彼自身の優しさも同時に戻ってくるようで。

それはそうと、大変だったのですね。Sさまも体調崩されませんように。
落ち着いたら、ぜひまたリクエストしてくださいませ。お待ちしております。
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