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2018 · 01 · 10 (Wed) 15:54

▽『刑事マルティン・ベック 笑う警官』マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー

▽『刑事マルティン・ベック 笑う警官』マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー(角川文庫)
 1967年11月、ストックホルム市の路線バスで、乗客8人が銃殺された。その中の一人は、殺人捜査課の刑事だった。マルティン・ベックは、同僚の死にショックを受ける。彼はなぜそのバスに乗っていたのか、そして、唯一の生存者が口にした謎の言葉はなんなのか──。("Den Skrattande Polisen" by Maj Sjowall & Per Wahloo, 1968)
・〈刑事マルティン・ベック〉シリーズ第4作

 シリーズ第4作なのに、一番知名度があるからと最初に出た作品。
 まあ、こういうのはロマ本読みにはおなじみのことですな(´ω`)。だ・か・ら! 3作目読み終わるまで我慢しましたよ! 紙の本で買ったけど、自炊して!
 順番に読んでよかった。これまでの事件を知っていないといけないわけじゃもちろんないのですが、マルティン・ベックたち捜査員の微妙な心境の変化がわかるのですよね。
 そして、改めて読んでみて思ったけど、すごく面白い! 昔読んだ時のことは全然憶えていないんだけど、オープニングの雨のシーンを読んで、「ああ、なんかずっと雨が降っていて陰鬱な印象が残ってるな」というのは思い出しました。
 決してずっと降っているわけではないんだけど、真冬に向かっていくのでどんどん寒くなって、結果陰鬱であるのは変わらなかったんですが、それがこのシリーズへの昔の印象を決定づけたんだな、というのはわかりました。前3作とも(『ロセアンナ』『煙に消えた男』『バルコニーの男』)夏が舞台なのにね。
 その雨の中、バスに乗り合わせた人たちが無残にも銃殺される事件が起こる。その中の一人は殺人捜査課の若い刑事ステンストルムだった。非番にもかかわらず銃を携行していた彼は、同棲している恋人にも「仕事だ」と嘘をついていた。マルティン・ベックたちも彼が何をしていたのかわからない。彼の机の中には恋人を撮った写真が入っていたが、それは意外なものだった。
 若い刑事の謎の行動、顔を撃たれ識別できない男の身元捜査、生存者が死に際に発した聞き取れない言葉の解読など、いくつかのとっかかりを捜査員たちがそれぞれに粘り強く考え、聞き込みをしながら話は進んでいくのですが、なかなか突破口にはたどりつかない。この一つ一つの地道な捜査が、ものすごく地味なのにワクワクするんですよ。本当にパズルを解くようにして、ありとあらゆる可能性や違う視点などを試していく。それぞれ別の人間なのでアプローチは異なるけれど、皆に共通しているのは「あきらめない」ということ。「しつこい」とも言える。でも、人が殺されているんだから、しつこかったりあきらめないのは当たり前のことなんだよ。
 こういう手法って、当時はやはり新鮮だったのかもしれませんが、今はもちろん珍しくない。なのにとても面白いってすごいな、と感じました。
 ステンストルムが何をやっていたかが次第にわかるにつれ、若い彼が感じたであろう興奮が移ってくるようでした。だからこそ、彼は一人で行動してしまった。野心があったから。出世がしたかったから。それが悲しい。マルティン・ベックたちも多分、それを感じたはず。
 そう、謎が解けていく過程で、捜査員たちの気持ちはほとんど書かれていないんだけど、おそらく読んでいるこっちと同じように思っているんだろうな、というのが感じられるんだよね。犯人に対しての不快感も含めて。
 またその不快な犯人とラストに対峙したのが、グンヴァルト・ラーソンという空気読まない刑事なのが絶妙だったな、と思いました。余計なことばかり言う奴なんだけど、精神的に非常強靭で、彼ならこの犯人と対話してもダメージ受けそうにないんだよね(´ω`;)。他の刑事だと、その人のダメージがダイレクトに読者へ伝わってしまう。うまい緩衝材になっていて、これまたすごい。
 あと6作、楽しみだなあ(´∀ `)。でも、マルティン・ベックはどんどん疲れていくような(´・ω・`)。最後どうなってしまうんだろう、とちょっと心配です……。
(★★★★☆)

最終更新日 : 2018-01-10

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