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2018 · 05 · 21 (Mon) 15:51

●『悪魔のような男』ロレイン・ヒース

●『悪魔のような男』ロレイン・ヒース(マグノリアロマンス)
 ラヴィングドン公爵である夫を亡くしたオリヴィアは、息子ヘンリーの後見人として賭博場を運営するジャック・ドジャーが指名されたことにショックを受ける。しかも、限嗣相続権に由来する財産以外、すべてが彼に遺贈されてしまった。今住んでいる屋敷すら自分のものにはならない……。オリヴィアには、亡夫の遺言の意図がわからない。それは、ジャックも同じだった。公爵のことはほとんど何も知らないのだ。("Between The Devil And Desire" by Lorraine Heath, 2009)
・〈Scoundrels Of St. James〉シリーズ第2作

 読むのにだいぶ時間がかかってしまいました(´・ω・`)。電子書籍がなかなか出ないので紙の本を買ったのに、今はもう出ちゃっているという……orz
 仕事が忙しかったというのもあるのですが、それに打ち勝つほどでなかったといえばそのとおりで──ストレスフルな毎日を送りながら読むには、ちとダークすぎた……。
 前作『悪魔とワルツを』に続き、貧民街で育った子供たちが成長し、それぞれ主人公になるというシリーズの2作目です。今回のヒーローのジャックは、前作ヒーローの兄貴分のような人で、今は貴族相手の賭博場を運営して成功している。ヒロインのオリヴィアは、親の言いつけどおりにラヴィングドン公爵へ嫁ぎ、期待どおりに息子を生んだわけですが、結婚生活は「ただそれだけ」で、夫とは他人も同然。息子の存在だけが慰め、という女性です。
 公爵とは生前ほとんど交流もなかったのに、どうして自分に財産を残したりヘンリーの後見人に指名したのか、というのは、ジャックにとっても謎なわけです。「もしかして」と思い当たることもなくはないけど、確信は持てないし、それだったらそれで非常に後味が悪い。
 なぜかというと、ジャックは幼い頃、母と二人で暮らしていたんだけど、その母が自分をある大きな屋敷に住む男に売った、という記憶があるのです。そこで虐待されたジャックは屋敷を逃げだし、貧民街でフィーガンという男に拾われて盗みを仕込まれながらなんとか生きていく。
 ラヴィングドンはその時の男なのかも、とジャックは思うわけです。その時の罪滅ぼしのつもりなのか、と。
 それはそれでいやなんだけど、当然そうじゃなくて別の真実が後半で明かされます。が、これがまた別の意味で後味が悪い。いわゆるミステリーやサスペンスでよく出てくる「何もしていないけど一番悪い人」になっていく。何もしてないからなんの罪にも問われず、めっちゃ腹立つ存在になる奴! たいてい悲劇のヒーローかヒロイン気取りなんだよなー、こういう奴って。お前がちゃんとしてなかったからこうなったんじゃねえか(゚Д゚)ゴルァ!! わたし的にはもっとも許せない人間です。
 まあけど、たいていは「こいつがいなかったら、二人は出会ってなかった」みたいにはなるんですけど、それをもってしても「ひどい」という感情は拭えない。さらには、ジャックの過去の傷がかなりハードで、重い……。さすがロレイン・ヒース、ヒーローに厳しい人だ。ただ、ジャック自身の魅力については──私としてはそう特出したものは感じられず、惜しい。そして、オリヴィアについても、ジャックや悪役たち(他にもいるんすよ)の強烈な影に隠れてしまっているようで目立たない。
 もう少し元気な時なら、もっと楽しめたというか、評価きっと高くなったと思う。疲れている時に読むものじゃなかった。こればっかりはタイミングだから、しょうがないんですけどねー。
(★★★☆)

最終更新日 : 2018-05-22

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