2018 · 06 · 10 (Sun) 14:42 ✎
□『ゲット・アウト』"Get Out" 2017(Blu-ray)
白人の恋人ローズの実家に週末行くことになった写真家のクリスは、彼女が両親に自分が黒人であることを言っていないことに不安を抱くが、「両親は人種を気にしたりしない」と言う言葉を信じ、山深い湖畔のほとりにあるアーミテージ家を訪れる。彼女の両親は温かく迎えてくれたが、使用人二人は黒人であり、彼らの言葉の端々に微妙な違和感をクリスは抱く。(監督:ジョーダン・ピール 出演:ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、キャサリン・キーナー、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、他)
白人の恋人ローズの実家に週末行くことになった写真家のクリスは、彼女が両親に自分が黒人であることを言っていないことに不安を抱くが、「両親は人種を気にしたりしない」と言う言葉を信じ、山深い湖畔のほとりにあるアーミテージ家を訪れる。彼女の両親は温かく迎えてくれたが、使用人二人は黒人であり、彼らの言葉の端々に微妙な違和感をクリスは抱く。(監督:ジョーダン・ピール 出演:ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、キャサリン・キーナー、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、他)
見終わって最初に思ったのは、
「このオチの脚本にアカデミー賞あげたのか! すげえ(゚д゚)!」
でした。
いえ、決して悪い意味ではありません。ある意味、『シェイプ・オブ・ウォーター』にも通ずる。私が子供の頃から親しんできたオカルト映画や恐怖マンガ──特に少女マンガ系、ぶっちゃけ高階良子さんなんですけど(´ω`;)、それに代表されるような物語ですよ。長い間軽んじられていたジャンルのストーリーがアカデミー賞獲るって素晴らしい!
だからつい、「なつかしい」とも思ってしまいました。私たちからすれば手垢のついたアイデアなんだろうけど、今の若者からすれば一周回って新鮮、ということになるのかな。なんか最近、そういう傾向があるような気がする……。
とはいえ、それを「工エエェェ(´д`)ェェエエ工工」と思って幻滅してしまう人もいるかもしれない。「そんなオチかよ!」と言われる可能性も高いというのもわかります。私は好きだけど。
けど実際のところ、脚本として評価されたところはオチではなく、展開というかセリフというか──もちろん、そのセリフが持つ雰囲気を正確に映像化したからなんだと思う。
白人の恋人ローズの家に遊びに行く黒人の青年クリスは、歓迎はされるけどなんとなく居心地が悪い。あからさまな人種差別的なことはもちろん言われないんだけど、相手が自分に対してすごく「決めつけ」ているような気がするわけです。それは次の日に開かれたパーティーでも感じる。近所に住んでいるお金持ちの白人たちは皆「あなた素晴らしいわ」みたいなこと言うんだけど、うーん(´ω`;)──それって、なんなの、社交辞令? 適当なこと言ってその場を切り抜けるみたいな感じでもなく……バカにされているわけではないけど、はっきり言って気味悪い。それだけでははっきりと反論もできないし……自分の味方はローズしかいないけど、彼女に迷惑をかけたくないし──そんなふうにモヤモヤしたまま、パーティーを二人で抜け出す。二人がいない間、パーティーでは謎のオークションが行われ、盲目の画商(クリスの作品をとても評価していた)がクリスを競り落としていた。
この一連のクリスに対する会話は、いわゆる「マイクロ・アグレッション」というものの積み重ねで、無知や無意識の偏見から言葉の端々に浮かんでくる差別意識なのです。この映画の登場人物たちは、「自分たちは本当に黒人の人たちを賛美しているのよ」みたいな気持ちを本気で持っている。ただし、全然正しくないものなんだけどね。「差別意識なんてないよ」というのは彼らにとっては大真面目なことなんだけど、根本が間違っているからクリスはそれに違和感を抱くわけです。
こういう微妙な雰囲気を描くのは、とても繊細な作業だと思います。問題自体も繊細だし、正しく伝えないといけないし、しかもホラーだし。監督のジョーダン・ピールはコメディアンだそうですが、「喜劇」と「恐怖」と「狂気」はかなり似た要素があるとよくわかっている人なんだろうな。
まあ、オチに関しては見ての楽しみということで──ローズの父は脳神経外科医、母は催眠術を操る精神科医、というところからお察し。そして、ネットで見た感想で「うまいこと言うな」と思ったのは、「ローズはメーテル」ってやつでした。そこからもまたお察し──そして、こういうことってまだまだSFだよね、という……。
(★★★★)
「このオチの脚本にアカデミー賞あげたのか! すげえ(゚д゚)!」
でした。
いえ、決して悪い意味ではありません。ある意味、『シェイプ・オブ・ウォーター』にも通ずる。私が子供の頃から親しんできたオカルト映画や恐怖マンガ──特に少女マンガ系、ぶっちゃけ高階良子さんなんですけど(´ω`;)、それに代表されるような物語ですよ。長い間軽んじられていたジャンルのストーリーがアカデミー賞獲るって素晴らしい!
だからつい、「なつかしい」とも思ってしまいました。私たちからすれば手垢のついたアイデアなんだろうけど、今の若者からすれば一周回って新鮮、ということになるのかな。なんか最近、そういう傾向があるような気がする……。
とはいえ、それを「工エエェェ(´д`)ェェエエ工工」と思って幻滅してしまう人もいるかもしれない。「そんなオチかよ!」と言われる可能性も高いというのもわかります。私は好きだけど。
けど実際のところ、脚本として評価されたところはオチではなく、展開というかセリフというか──もちろん、そのセリフが持つ雰囲気を正確に映像化したからなんだと思う。
白人の恋人ローズの家に遊びに行く黒人の青年クリスは、歓迎はされるけどなんとなく居心地が悪い。あからさまな人種差別的なことはもちろん言われないんだけど、相手が自分に対してすごく「決めつけ」ているような気がするわけです。それは次の日に開かれたパーティーでも感じる。近所に住んでいるお金持ちの白人たちは皆「あなた素晴らしいわ」みたいなこと言うんだけど、うーん(´ω`;)──それって、なんなの、社交辞令? 適当なこと言ってその場を切り抜けるみたいな感じでもなく……バカにされているわけではないけど、はっきり言って気味悪い。それだけでははっきりと反論もできないし……自分の味方はローズしかいないけど、彼女に迷惑をかけたくないし──そんなふうにモヤモヤしたまま、パーティーを二人で抜け出す。二人がいない間、パーティーでは謎のオークションが行われ、盲目の画商(クリスの作品をとても評価していた)がクリスを競り落としていた。
この一連のクリスに対する会話は、いわゆる「マイクロ・アグレッション」というものの積み重ねで、無知や無意識の偏見から言葉の端々に浮かんでくる差別意識なのです。この映画の登場人物たちは、「自分たちは本当に黒人の人たちを賛美しているのよ」みたいな気持ちを本気で持っている。ただし、全然正しくないものなんだけどね。「差別意識なんてないよ」というのは彼らにとっては大真面目なことなんだけど、根本が間違っているからクリスはそれに違和感を抱くわけです。
こういう微妙な雰囲気を描くのは、とても繊細な作業だと思います。問題自体も繊細だし、正しく伝えないといけないし、しかもホラーだし。監督のジョーダン・ピールはコメディアンだそうですが、「喜劇」と「恐怖」と「狂気」はかなり似た要素があるとよくわかっている人なんだろうな。
まあ、オチに関しては見ての楽しみということで──ローズの父は脳神経外科医、母は催眠術を操る精神科医、というところからお察し。そして、ネットで見た感想で「うまいこと言うな」と思ったのは、「ローズはメーテル」ってやつでした。そこからもまたお察し──そして、こういうことってまだまだSFだよね、という……。
(★★★★)
最終更新日 : 2018-06-10