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2018 · 08 · 23 (Thu) 13:27

▲『龍の騎手』エル・キャサリン・ホワイト

▲『龍の騎手』エル・キャサリン・ホワイト(創元推理文庫)
 古種と呼ばれる人外の生き物と人類が共存するアール王国。メリーボーン荘園は、グリフォンの群れに領地を荒らされ、退治のために龍の騎手たちを雇う。その中の一人、アラステア・デアレッドは優れた騎手であったが、非常に高慢な人物だった。妹をグリフォンに殺された荘園事務官の次女アリザは、反発を覚えながらも敷地の案内役として彼らに同行する。("Heatstone" by Elle Katharine White, 2017)
『高慢と偏見』のネタバレもあります。ご注意ください。

 ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』を下敷きにしたファンタジーです。
『高慢と偏見』を下敷きに、といえば、『高慢と偏見とゾンビ』もありますけれど、あれはオースティンの文章そのままにゾンビ要素を加えたものでした。今回の『龍の騎手』は、「翻案」ですかね。キャラクターの名前などは変えてあるけど、ストーリーの大筋は同じ。キャラはそれぞれ掘り下げてあって、基本的に気持ちのいい方向に落とし込んでいる。
 とはいえ、私も『高慢と偏見』を読んでだいぶたっているけどね……。ただ、感想のこの部分、

「だいたいさあ、いい人の方が少ないじゃん。ほとんどやな奴ばっかじゃん! けど、どう見てもやな奴の方が生き生きしてる……(中略)みんなお金と老後のことばっか考えてるか、何も考えてないかだもんなあ」

 ヒロインとヒロイン姉以外がみんなこんな感じだったのが、すごく(微妙に?)変わっている。たとえば、『高慢と偏見』ヒロイン・エリザベスの親友は、感じの悪いお金持ちとお金のために結婚するんだけど、『龍の騎手』の方は当初そんな印象を抱かせておいて実は──という展開になる。それがヒロイン・アリザが抱く「偏見」の強調にもなっていて、物語に説得力を上乗せしている。あと、あの困り者の母の出番が少ない(´ω`;)。
 それから、私が『高慢と偏見』をいまいちと思う最大の理由は、ヒーロー・ダーシーのキャラなんだよね。何も知りもしないくせに勝手に邪推して、親友ピングリーとエリザベスの姉ジェーンの仲を引き裂くとかさあ──自分の相手に邪推して誤解ならまだしも、親友とはいえあまりにもおせっかいだし、頭悪い行為だよな、と思って。これはあれか、「金持ちのくせに調査が甘い」みたいなその後のロマンスの定石の源流か。まあ、「自分の考えていることに間違いはない」というまさに「高慢」の表れではあるんだけど、私の中ではほんとに頭悪すぎてダーシーダメなんすよ(´・ω・`)。
『龍の騎手』のヒーロー・アラステアはその点、かなり無理のない肉付けをされていました。単に金持ちだから高慢、というだけでなく、誇り高く強大な古種・龍(ドラゴン)と友好的な絆を結び、かつそれを駆る騎手は、本人の能力ももちろん高く、人々に尊敬される存在という設定になっている。ある意味、原作よりも高慢になりやすい状況です。親友で騎手仲間ブリズニー(ピングリー)にアンジェ(ジェーン)のことを悪くは言ったし、それはやっぱりおせっかいなんだけど、純粋にブリズニーを心配する友情からであり、決定的な事柄(二人の文通を邪魔する)には関与していないのです。印象をよくしようと作者が努力してくれている! もしかして、「ダーシーのことは好きでも、この頭悪いところはどうにかしなきゃ(´ω`;)」と思ったのかもしれない!
 ここら辺に原作だとちょっと印象薄いあの人を使うところがいいセンスだわ、と思いました。クライマックスでの行動に「いきなりどうして(゚д゚)!?」と驚いたけど、真相がわかると「あー、なるほどね」と納得しました。
 あと、ある意味原作でのクライマックスであるダーシーの叔母とエリザベスの会話みたいなのもちゃんとあって──相手が叔母さんでないところも面白かった。「あれ、叔母さん、いい人じゃん?」と思っていたから余計に。
 アラステアとアリザの「高慢と偏見」が、多彩なキャラ(人間、人外様々)による龍アクション多めの起伏ある物語が進むうちに自然になくなっていくのが楽しかったです。『高慢と偏見』を知っているとさらに楽しめるところはあるんですけど、読んでなくても全然平気だと思います。ちょっと長くて、読むのに時間かかったけど、それは多分、私の集中力の問題だな(´-ω-`)。
(★★★★)

最終更新日 : 2018-08-23

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