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2018 · 10 · 27 (Sat) 15:02

●『月影のメロディーを胸に』アン・グレイシー

●『月影のメロディーを胸に』アン・グレイシー(フローラブックス)
 運命の相手だと思って結婚した相手には妻子がいた。フェイスはそれを知って、逃げ出し、あてもなくフランスの砂漠をさまよっていた。彼女を助けてくれたのは元軍人のニコラス。これまでのいきさつを知った彼は、フェイスに結婚を申し込む。彼にも何か思惑があっての申し出らしいが、何もかも失ったフェイスにはそれを受け入れるしかなかった。("The Perfect Stranger" by Anne Gracie, 2006)
・〈麗しのメリデュー姉妹〉シリーズ第3作

 この本がなかなか手に入らなくて、アン・グレイシーの本が読み進められなかったのですよねー。他のは全部買ったのに(´ω`;)。微妙に世界がつながっているようだし。
 なんにせよこれでそろったので、ちまちま読んでいこうと思います。

 メリデュー姉妹の双子の片割れ、フェイスの物語です。もう一人の双子ホープの話『ラストワルツはあなたと』を読んで三年もたってるよ(´Д`;)! もうなんだかいろいろ忘れてますけど、気にしないことにする。
 フェイスもホープも、夢に現れた男性と結ばれると確信をしていて、ホープはそのとおり結婚をしたんだけれど、フェイスが「この人!」と思った人は実は故郷に妻子がおり、身分も偽っていた。それを知って一人逃げ出したフェイスは、砂漠で暴漢に襲われそうになったところを元軍人のイギリス人ニコラスに助けられる。
 彼はここからスペインのある場所まで向かっているのだが、フェイスの名誉回復のため、そしてイギリスに残している母のため、彼女と結婚しようと申し出る。どうしてそこまでしてくれるのかフェイスにはわからないんだけれど、選択の余地はなく、結婚をしてしまう。
 この間読んだ『魔法のキスは銀の瞳の伯爵と』でも「いきなり結婚!」という展開になってましたが、この作品ではその唐突さが一種の謎になっている。惹かれる気持ちはもとより、「なぜ私を選んだの? そんなことしてもこの人何も得しないんじゃない?」という疑問と、彼を襲う突然の発作など、フェイスは彼のことをちゃんと知りたいと思ってくる。ニコラスはスペインへ向かう前に彼女をイギリスへの船に乗せようとしたんだけど、彼女はそれを拒否。“白い結婚”も返上させ、スペインまでついていくこととなる。
 その旅路が舞台なので、華やかな社交界などは一切出てきません。お話はほとんど路上で展開する(´ω`;)。それが悪いというわけではもちろんないんですが、世間知らずのフェイスがよかれと思ってやることが裏目に出やすかったりする。あるいは彼女が強く出ると男たちは何も言えなくなり、少し都合のよさが目立つかしら、と思いました。忙しくすさんだ中で読んだせいかもしれない……。アン・グレイシーのにハズレはないと今までは思ってましたが──いや、ハズレというわけではない。少しヒロインが私の好みからズレているかな、という程度。
 その証拠に、ラスト近くはとてもよかったのです。ニコラスがなぜその地を目指していたのか。そして、そこで何をしようとしていたのか、というのがわかった時、私ショック受けてしまった……。なんだろうか、そこまでの悲壮感を前半には感じなかったから、余計に。もう少しニコラスがその悲壮感を出してくれていたらツボだったかなあ、と大変惜しい気分になりました。とはいえ、そのバランスは難しいというのもわかる。話が暗くなるとまた読みにくいし……そういう部分があったからこそ、前半、フェイスが強引に「帰らない!」みたいなこと言っても強く出られなかったんだろうな。説明できないし、したらもっとややこしい(´ω`;)。
 ジプシー娘のエストレリータをもっと早めに出せばよかったのかな? うーむ、このエストレリータの曾祖母の家でのシーンとか、すごくいいからそう思うんだけど、ちょっとスピリチュアルな話になるからそれが気になる人もいるかもしれないし。
 とにかく、私の好みや萌えからほんのちょっとずつズレているという、大変に惜しい作品でした……。でも、面白いですよ。
(★★★☆)

最終更新日 : 2018-10-28

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