2018 · 11 · 23 (Fri) 21:16 ✎
●『くちづけは嵐とともに』アン・グレイシー(フローラブックス)
メリデュー家の末っ子グレースは、親友メリーのため付添人に変装してウルフストーン城を訪れる。城主のデーカー卿ドミニク・ウルフとメリーは会ったこともないが許婚であり、二人が結婚しなければデーカー卿はウルフストーンの領地を相続することができない。そのため彼は、形だけの結婚をして妻とは接触しないつもりだ。さらに彼は、会ったばかりのグレースをいきなり口説き始める。("The Perfect Kiss" by Anne Gracie, 2007)
・〈麗しのメリデュー姉妹〉シリーズ第4作
メリデュー家の末っ子グレースは、親友メリーのため付添人に変装してウルフストーン城を訪れる。城主のデーカー卿ドミニク・ウルフとメリーは会ったこともないが許婚であり、二人が結婚しなければデーカー卿はウルフストーンの領地を相続することができない。そのため彼は、形だけの結婚をして妻とは接触しないつもりだ。さらに彼は、会ったばかりのグレースをいきなり口説き始める。("The Perfect Kiss" by Anne Gracie, 2007)
・〈麗しのメリデュー姉妹〉シリーズ第4作
やっとメリデュー姉妹を全部読めた……。
これが2007年(日本での翻訳出版は2009年)ですか。時間かかりすぎだな(´・ω・`)。まあ、でもこれが私のペースなので仕方ない。
シリーズが読み終わったのはうれしいのですが、内容は少しモヤモヤ……。すごくサービス精神旺盛な展開だと思うのですが。最初からハッピーエンドフラグが折られまくり。しかも状況がかなりめんどくさい。
まずヒーローのドミニクが、ヒロイン・グレースの親友メリーの婚約者だというところ。そして、彼が領地を手に入れるためにはメリーと結婚しなければならないというところ。ここら辺はヒストリカルにはよくある設定です。ただ、ドミニクは別に領地は必要ない。自分の財産があるので、メリーと結婚する必要はないんですが、ひどい目に合わされ続けた父への復讐のため、「形だけの結婚」をして、そののち分割して領地を売り払おうとしている。貧乏なメリーたち父娘の生活は保証した上で。
ただメリーは子供がとても好きで、自分の子をほしいと思っている。だからできればせめてちゃんとした結婚生活は送りたい。でもドミニクは子供なんて絶対に作りたくないと思っている。「俺の代でこの家はつぶす!」という勢いです。
この婚約を破棄するためには、メリーの父が違約金を払うしかないのですが、そんな金はないし、彼は娘の幸せのためにはこの結婚が一番望ましい、と頑固に思い込んでいる。誰に説得されても納得しない。そして、病気の父の身体を気遣うメリー自身が説得する勇気を持てない。
ここまでが前提。グレースはお話の冒頭に出てくるんだけど、付添人のふりをしているままでドミニクにチャラく口説かれるんだけど、なんとなく見下されているような態度。これから彼は形だけとはいえ「結婚」しようとしているんだから、グレースには最初から「愛人」を望んでいるんだよね。母とともに残酷な父親から逃れ、幼い頃から外国で苦労し働いてきたドミニクにとって、誠実な恋愛関係などはないに等しかったので仕方ないのですけど、ちょっと冒頭でいきなり私はモヤる。いやでも、このモヤッたところが後半のカタルシスにつながる可能性も高い。ドミニクが自分の信頼をどう取り戻すのかな、と思いながら読み進めていったら、割とこう……グダグダな展開になっていく(´ω`;)。
問題は、話の障害をすべてメリー父に頼っているところなんだと思うんだよね。状況を複雑──というかめんどくさくしているのは彼の頑固さなのです。メリーの気弱さもあるんだけど、頑固な人と弱い人を物語の障害にするって、ちょっと苦手……イライラしがちだから。あと、グレースが何もできないってところも問題か。つまり部外者なんですよ、状況的に。
ドミニクはドミニクで、母親がこの領地のことを好きだったと知ったり、領民が長い間苦労していたことに罪悪感を抱いたりし始める。そして、本当に好きな人と結婚したいけどできないジレンマに陥っていく。
「金持ちなんだろ? ちゃちゃっと金で解決しろよ(゚Д゚)!」
とかつい思っちゃうけど、なんかこうやたらドミニクが悩み始めてしまうわけです。でもグレースには「仕方ないから愛人になってよ」と言い続ける。「形式にこだわらなくたっていいじゃん」と言う気持ちもわからんではない。とはいえ、グレースとメリー、どちらかと結婚するとなると、どちらか片方の名誉は必ず堕ちてしまう(グレースの場合は愛人になったら、ですけど)。しかもこの二人は親友同士──ああ、めんどくさい(´ω`;)。だからグレースは、ドミニクの元から去ることを決意する。
これどうすんのかな、と思ったら、ここでもまたメリー父頼りになってしまう。しかも、経緯はメリーの語りだけですまされてしまって……伏線もあるようなないような……なんだろうか、ただ駄々こねて話を長引かせていただけ? という印象が残ります。ハッピーエンドフラグを折り続けるためだけの存在? つまり悪役? でも、ちょっと中途半端……。当初予想していたドミニクに対するカタルシスもないまま終わってしまう。
でも、決して悪くはない、というところがまた困るところだ……。
シリーズ最後にモヤるとはちと微妙な気分ですけど、これからも続けて読んでいきますよー。
(★★★☆)
これが2007年(日本での翻訳出版は2009年)ですか。時間かかりすぎだな(´・ω・`)。まあ、でもこれが私のペースなので仕方ない。
シリーズが読み終わったのはうれしいのですが、内容は少しモヤモヤ……。すごくサービス精神旺盛な展開だと思うのですが。最初からハッピーエンドフラグが折られまくり。しかも状況がかなりめんどくさい。
まずヒーローのドミニクが、ヒロイン・グレースの親友メリーの婚約者だというところ。そして、彼が領地を手に入れるためにはメリーと結婚しなければならないというところ。ここら辺はヒストリカルにはよくある設定です。ただ、ドミニクは別に領地は必要ない。自分の財産があるので、メリーと結婚する必要はないんですが、ひどい目に合わされ続けた父への復讐のため、「形だけの結婚」をして、そののち分割して領地を売り払おうとしている。貧乏なメリーたち父娘の生活は保証した上で。
ただメリーは子供がとても好きで、自分の子をほしいと思っている。だからできればせめてちゃんとした結婚生活は送りたい。でもドミニクは子供なんて絶対に作りたくないと思っている。「俺の代でこの家はつぶす!」という勢いです。
この婚約を破棄するためには、メリーの父が違約金を払うしかないのですが、そんな金はないし、彼は娘の幸せのためにはこの結婚が一番望ましい、と頑固に思い込んでいる。誰に説得されても納得しない。そして、病気の父の身体を気遣うメリー自身が説得する勇気を持てない。
ここまでが前提。グレースはお話の冒頭に出てくるんだけど、付添人のふりをしているままでドミニクにチャラく口説かれるんだけど、なんとなく見下されているような態度。これから彼は形だけとはいえ「結婚」しようとしているんだから、グレースには最初から「愛人」を望んでいるんだよね。母とともに残酷な父親から逃れ、幼い頃から外国で苦労し働いてきたドミニクにとって、誠実な恋愛関係などはないに等しかったので仕方ないのですけど、ちょっと冒頭でいきなり私はモヤる。いやでも、このモヤッたところが後半のカタルシスにつながる可能性も高い。ドミニクが自分の信頼をどう取り戻すのかな、と思いながら読み進めていったら、割とこう……グダグダな展開になっていく(´ω`;)。
問題は、話の障害をすべてメリー父に頼っているところなんだと思うんだよね。状況を複雑──というかめんどくさくしているのは彼の頑固さなのです。メリーの気弱さもあるんだけど、頑固な人と弱い人を物語の障害にするって、ちょっと苦手……イライラしがちだから。あと、グレースが何もできないってところも問題か。つまり部外者なんですよ、状況的に。
ドミニクはドミニクで、母親がこの領地のことを好きだったと知ったり、領民が長い間苦労していたことに罪悪感を抱いたりし始める。そして、本当に好きな人と結婚したいけどできないジレンマに陥っていく。
「金持ちなんだろ? ちゃちゃっと金で解決しろよ(゚Д゚)!」
とかつい思っちゃうけど、なんかこうやたらドミニクが悩み始めてしまうわけです。でもグレースには「仕方ないから愛人になってよ」と言い続ける。「形式にこだわらなくたっていいじゃん」と言う気持ちもわからんではない。とはいえ、グレースとメリー、どちらかと結婚するとなると、どちらか片方の名誉は必ず堕ちてしまう(グレースの場合は愛人になったら、ですけど)。しかもこの二人は親友同士──ああ、めんどくさい(´ω`;)。だからグレースは、ドミニクの元から去ることを決意する。
これどうすんのかな、と思ったら、ここでもまたメリー父頼りになってしまう。しかも、経緯はメリーの語りだけですまされてしまって……伏線もあるようなないような……なんだろうか、ただ駄々こねて話を長引かせていただけ? という印象が残ります。ハッピーエンドフラグを折り続けるためだけの存在? つまり悪役? でも、ちょっと中途半端……。当初予想していたドミニクに対するカタルシスもないまま終わってしまう。
でも、決して悪くはない、というところがまた困るところだ……。
シリーズ最後にモヤるとはちと微妙な気分ですけど、これからも続けて読んでいきますよー。
(★★★☆)
最終更新日 : 2018-11-24