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2019 · 11 · 17 (Sun) 20:42

□『ロープ』

□『ロープ』"Rope" 1948(DVD)
 摩天楼を見渡すアパートの一室で、ブランドンとフィリップは、友人であるデイヴィッドを殺害する。理由は、デイヴィッドが自分たちよりも劣っているから、という身勝手なものだった。二人はその部屋で、デイヴィッドの父や恋人などを招いてパーティーを催す。ブランドンは自信満々だったが、フィリップは神経をすり減らす。勘の鋭いハーバード大時代の舎監であるルパート・カデル教授も招いたからだ。(監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:ジェームズ・スチュアート、ジョン・ドール、ファーリー・グレンジャー、他)

『レベッカ』を見るために買ったヒッチコックのサスペンス映画10本詰め合わせのうちの一つ。お安いDVDなので、画質に関してはお察しです。
 舞台劇の映画化で、監督のヒッチコックはこれをワンカットで、しかも映画内と実際の時間を同じに撮ろうと思ったのだそうです。ただ当時の技術的な問題(フィルムの長さ)からすべてワンカットというわけにはいかず、「あ、ここでつなげたんだな」とわかるところはある。それは今でも、たとえば『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』なんかでもそうだよね。『カメラを止めるな!』もワンカットにこだわった映画ですけど(英題が "One Cut Of The Dead")、映画を作る人にとって「ワンカット」というのは今も昔も特別なものなんだな、と思ったりします。
 ヒッチコックの試みは成功し、緊張感が途切れない、今見てもとても面白い映画になっていました。
 それにしても、殺人の理由がかなり鬼畜です。選民意識にあふれた動機は、ニーチェの「超人論」に基づいているそうですが、いやいやいや……私、ニーチェにはまったく疎いですけど、つまり「現実とフィクションを区別できなくなっている」人がやらかしてしまった殺人、という解釈でいいんですかね。哲学書をフィクションと言っていいかわかりませんが、「ニーチェが言ってた『超人』って、俺のことじゃんヽ(゚∀゚)ノ」と思うくらいには痛い奴ということです。
 ラスト、ルパートがブランドンたちに対し、「僕はやらなかったが、君たちはやった」というようなことを言ってましたが──頭では何を考えていてもかまわないんですよ。けど、それを現実にやらかすとまずいかまずくないか判断がつかないとか、あるいは、「自分はやっても許される」と思うのは怖いことです。
 シンプルな物語なので、そこら辺の人間心理が短いながらも的確に描かれています。ブランドンは典型的なサイコパスで、「絶対にバレっこない」と信じている。だから、ルパートをわざわざ予定なかったのに呼んでしまう(超人論について過去に彼と論じたという理由はある)。フィリップは殺してしまってから「ヤバい」と後悔し、でも今さらどうにもできずブランドンに従うしかない。パーティーの間中、ずっと「バレるのではないか」と神経をすり減らし、ヨレヨレになっていく。
 フィリップの方はこのようにわかりやすい。ブランドンの描き方は面白かったな。異様に興奮して失言も多く、招待客(「みんな鈍い」とバカにしてる)にも「なんか変だな」と思われていることに気づかないというか、ごまかせると確信していて、大胆なこともやってのける。普段からどんな人だったのか透けて見える。いるよね、こういうヤバい人。悪ふざけして怒られても「冗談だよー(゚∀゚)」ですます人。(自分の)冗談がわからない人の方が悪いみたいに言う人。友だちには絶対になりたくないね(´ω`;)。そういう点では、パーティーに来た人は鈍いというか、とても善良で、いくらなんでも彼らが犯罪、ましてや殺人を犯すとは思ってもいない、という人たちであった。ルパート以外は疑いもしてなかったもんね。そんな人たちの息子や恋人、友人を面白半分に殺すという卑劣な物語なんですよ……。
 原作の舞台も見てみたいな、と思ったけど、そっちの方がちょっと怖いかもしれないな……。スリラー劇って、暗転が怖いのよね(´・ω・`)。
(★★★★)
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最終更新日 : 2019-11-17

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