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2020 · 08 · 07 (Fri) 21:06

■『エターナル・サンシャイン』

■『エターナル・サンシャイン』"Eternal Sunshine of the Spotless Mind" 2004(Netflix)
 平凡な会社員ジョエルは、ある日別れた恋人クレメンタインが記憶除去手術をしたことを知る。ひどい別れ方をしたジョエルの思い出を消したのだ。ショックを受けたジョエルは、自分も同じように彼女の記憶を消そうと決心する。(監督:ミシェル・ゴンドリー 出演:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルスティン・ダンスト、マーク・ラファロ、イライジャ・ウッド、トム・ウィルキンソン、他)

 あらすじ、難しいな。
 実は冒頭にけっこう長いプロローグみたいなのがあるんですよね。それが終わって、ようやくタイトルが出てくるのです。これがなんなのか、というのはラスト近くになってわかるのですが。
 ネットであらすじを読むとみんな「ひどい別れ方をして」みたいなことが書いてあるから、どれだけひどいのか、と覚悟したりしたのですが……確かに円満な別れではないが、怖がるほどのものではなかった。よくあるといえばよくあること。ケンカしているうちに、ジョエルがクレメンタインにひどい言葉を投げつけてしまうのです。ケンカで言った言葉とはいえ、それをどうしても許せなかった──というか、ひどく傷ついてしまったクレメンタインは、記憶除去を行っている会社に申し込んで、ジョエルに関する記憶を消去してしまう。おそらく発作的に。クレメンタインは衝動的に行動する人で、ジョエルは反対に慎重派。そのことが二人の大きな齟齬になっていたのは否めない。
 いやな記憶だけを安全に確実に失くしてしまえるものなら利用したいという人は、はっきり言ってシャレにならないくらいたくさんいることでしょう。ただこの映画の中でも言っていたけど、「記憶を失くす」ということは「人工的に脳障害を起こす」ということらしく、どう考えてもリスクが大きすぎる。なのに、一般的とはいえないまでも知る人ぞ知る手術という扱いがちょっと怖い(しかも病院でやっているわけじゃない)。ベタな施術ヘルメットでちょっとごまかされてしまいますが、これは立派なSF映画だな、と思ったりしました。
 記憶除去手術を受けている間のジョエルは、消えていくクレメンタインの姿に改めて彼女を愛していることを悟り、記憶の中をさまよいながら、忘れないようにと必死に彼女を隠そうとする。
 一方、ジョエルに施術している側の人間たちにもいろいろとやっかいなことが起こる。ジョエルを忘れて新しい彼氏ができたはずのクレメンタインにも。現実の出来事とジョエルの思い出と、彼の頭の中のクレメンタインとの会話など、時系列もバラバラに描かれるのですが、特に頭の中の画面の作り方が夢の中みたいに飛躍していって楽しい。
 記憶除去手術なんて現実には(少なくとも私が生きている間くらいは)起こらないでしょうけれども、自身でいやな記憶を封印することはまれにある。それは永遠に思い出さないものなんだろうか。生きていけないくらいつらい記憶だから思い出さないと聞きます。ふとした瞬間に思い出したら、その人は生きる力を失うのだろうか。
 そういう人の記憶って、「いやな思い出」みたいなレベルではないのかも、と思ったりする。思い出すたびに生命力を削るから、「このままだと死ぬ!」という身体のSOSに脳が反応した、みたいな感じなのかな。「つらい思い出」「いやな思い出」と主観的に言えるうちはまだ納得の道もあるのかもしれない。しかしそこら辺を超えてしまっているからこそ、脳も消去に踏み切るのか、と考えたりしました。しかし、そんな都合良く動いてくれない気もするし……。
 ……話がズレました。
 いや、「いい思い出」と対になっている「つらい思い出」というのは、確かに消したいほどつらいものであったとしても、結局「いい思い出」も消してしまうことになるし、視点を変えれば「いい思い出」の方を大切にできるかもしれない、ということです。時間がたつと、いい方しか憶えていなかったりというのもよくある話。
 本当のハッピーエンドかどうかなんて死ぬまでわからないけど、それまでは一緒に生きていきたいし、生きていけるように、お互いを許し合っていこうよ、という物語でした。
(★★★★)
[Tag] * ★★★★ * ロマンス映画

最終更新日 : 2020-08-07

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