2020 · 11 · 11 (Wed) 16:37 ✎
■『レベッカ』"Rebecca" 2020(Netflix)
雇われコンパニオンの「わたし」は、モンテカルロでイギリスの紳士マキシム・ド・ウィンターと出会う。彼はマンダレイという有名な領地に住んでいる。マキシムとわたしは結婚し、マンダレイへ戻ることになるが、美しい領地や屋敷には一年前に船の事故で亡くなった前妻レベッカの痕跡がそこかしこに残っていた。(監督:ベン・ウィートリー 出演:リリー・ジェームズ、アーミー・ハマー、クリスティン・スコット・トーマス、キーリー・ホーズ、アン・ダウド、トム・グッドマン=ヒル、他)
雇われコンパニオンの「わたし」は、モンテカルロでイギリスの紳士マキシム・ド・ウィンターと出会う。彼はマンダレイという有名な領地に住んでいる。マキシムとわたしは結婚し、マンダレイへ戻ることになるが、美しい領地や屋敷には一年前に船の事故で亡くなった前妻レベッカの痕跡がそこかしこに残っていた。(監督:ベン・ウィートリー 出演:リリー・ジェームズ、アーミー・ハマー、クリスティン・スコット・トーマス、キーリー・ホーズ、アン・ダウド、トム・グッドマン=ヒル、他)
ダフネ・デュ・モーリア原作『レベッカ』の再映画化です。Netflixオリジナル作品。
アルフレッド・ヒッチコック監督の1940年の映画が大変有名ですが、旧作であまり描かれなかった広大で壮麗な領地マンダレイが、今回ロケで存分に描かれています。豪奢なお屋敷の内部も実在のマナーハウスなどで撮っているらしく、それだけでも大満足の作品です。
名無しのヒロインは、家政婦長でレベッカとともにマンダレイへやってきたダンヴァース夫人(今回もやっぱり怖い!)に何かにつけてレベッカと比べられたり、マキシムが何か隠している様子に疲弊してくる。そんな中、入り江で船が座礁し、それを引き上げた際にレベッカの小舟も発見され、中から彼女の遺体が出てくる。殺人を疑われたマキシムは、検死審問を受けることになるが──。
ストーリーは、細かい違いはあっても、原作、旧作、そして今回の新作ともほとんど同じです。ていうか、この作品、ストーリーラインが強すぎる! 長い作品なんだけど、それ以上面白くしようにも変えようがないくらいインパクト抜群のエピソードばかりだと改めて思いました。
ただ、物語自体はロマンスの基本中の基本で──身寄りのない若い貧乏な女の子が、妻を亡くした年上の大富豪と出会い、身分違いの結婚をし、まったく違う世界に放り込まれ、慣れない生活習慣や前妻への嫉妬、夫とのすれ違いを経験しながら成長する──という物語。これ自体が強いよね。
原作の感想にも書きましたが、とにかくこのロマンスの定番に、「亡き妻」、つまりレベッカを強烈なキャラにしたことが、エンタメ的には天文学的な発想なのですよね。亡くなってなお誰よりも魅力的。だからといって「幽霊」として描かれるのではなく、人々の記憶の中の存在であっても、ヒロインを追い詰める力を持つというもので、
「ただの人間じゃ(レベッカには)太刀打ちできなかった」
とマキシムの姉が言ってたのが印象的です。一部の人には「怪物」と思われていた、とわかるシーンでもあります。
今作は、こんなふうにセリフが印象的な作品でもあった。後半、ダンヴァース夫人にかけるヒロインのセリフも強かった。「よく言った!」と思うようななかなか意地悪なセリフです。原作よりヒロインが強くなっている! まあ、原作でもあからさまに描かなかっただけだと思いますけどね。マキシムのキャラはみんな同じ(弱々なお坊ちゃん)なんだけど。
あと、結局のところレベッカ(&ダンヴァース夫人)はマンダレイを手に入れたつもりになっているのかもしれないけど、ヒロインがそれに対して、
「たかが家じゃんか」
という態度なラストも印象的だった。マンダレイはこの物語の本当の主役で、結局のところレベッカはそれを手に入れるためにいろいろ画策してきた人だったんだよね。だから、それを手放さなければならなくなった時、
「あたしのものにならないのなら、誰のものにもさせない」
みたいな激情にかられて、ああいう顛末になり、なおかつ死んだあとにも手先に仕上げをさせた、というね……。
ただそこまでしてもマンダレイが失ったのは「たかが家」だけであり、領地自体はマキシムの持ち物のまま。しかもよく考えたら、そこに住む必要なんかないのよね。そこしか住むところがないわけじゃないんだから。お金持ちなんだしさ。ある意味、それがマキシムを追い詰めてもいたのだし。
そういう発想の転換を夫にもさせて、「本物のふるさとを探そう」というラストになっていたのでした。
まあでも、レベッカの死因は原作どおりなので、モヤモヤがないわけではない(´ω`;)。後味がいいとは言えないのですが、やはり一級品の物語と美しいマンダレイを現代に蘇らせた、という点ではおおいに堪能しました。
(★★★★)
アルフレッド・ヒッチコック監督の1940年の映画が大変有名ですが、旧作であまり描かれなかった広大で壮麗な領地マンダレイが、今回ロケで存分に描かれています。豪奢なお屋敷の内部も実在のマナーハウスなどで撮っているらしく、それだけでも大満足の作品です。
名無しのヒロインは、家政婦長でレベッカとともにマンダレイへやってきたダンヴァース夫人(今回もやっぱり怖い!)に何かにつけてレベッカと比べられたり、マキシムが何か隠している様子に疲弊してくる。そんな中、入り江で船が座礁し、それを引き上げた際にレベッカの小舟も発見され、中から彼女の遺体が出てくる。殺人を疑われたマキシムは、検死審問を受けることになるが──。
ストーリーは、細かい違いはあっても、原作、旧作、そして今回の新作ともほとんど同じです。ていうか、この作品、ストーリーラインが強すぎる! 長い作品なんだけど、それ以上面白くしようにも変えようがないくらいインパクト抜群のエピソードばかりだと改めて思いました。
ただ、物語自体はロマンスの基本中の基本で──身寄りのない若い貧乏な女の子が、妻を亡くした年上の大富豪と出会い、身分違いの結婚をし、まったく違う世界に放り込まれ、慣れない生活習慣や前妻への嫉妬、夫とのすれ違いを経験しながら成長する──という物語。これ自体が強いよね。
原作の感想にも書きましたが、とにかくこのロマンスの定番に、「亡き妻」、つまりレベッカを強烈なキャラにしたことが、エンタメ的には天文学的な発想なのですよね。亡くなってなお誰よりも魅力的。だからといって「幽霊」として描かれるのではなく、人々の記憶の中の存在であっても、ヒロインを追い詰める力を持つというもので、
「ただの人間じゃ(レベッカには)太刀打ちできなかった」
とマキシムの姉が言ってたのが印象的です。一部の人には「怪物」と思われていた、とわかるシーンでもあります。
今作は、こんなふうにセリフが印象的な作品でもあった。後半、ダンヴァース夫人にかけるヒロインのセリフも強かった。「よく言った!」と思うようななかなか意地悪なセリフです。原作よりヒロインが強くなっている! まあ、原作でもあからさまに描かなかっただけだと思いますけどね。マキシムのキャラはみんな同じ(弱々なお坊ちゃん)なんだけど。
あと、結局のところレベッカ(&ダンヴァース夫人)はマンダレイを手に入れたつもりになっているのかもしれないけど、ヒロインがそれに対して、
「たかが家じゃんか」
という態度なラストも印象的だった。マンダレイはこの物語の本当の主役で、結局のところレベッカはそれを手に入れるためにいろいろ画策してきた人だったんだよね。だから、それを手放さなければならなくなった時、
「あたしのものにならないのなら、誰のものにもさせない」
みたいな激情にかられて、ああいう顛末になり、なおかつ死んだあとにも手先に仕上げをさせた、というね……。
ただそこまでしてもマンダレイが失ったのは「たかが家」だけであり、領地自体はマキシムの持ち物のまま。しかもよく考えたら、そこに住む必要なんかないのよね。そこしか住むところがないわけじゃないんだから。お金持ちなんだしさ。ある意味、それがマキシムを追い詰めてもいたのだし。
そういう発想の転換を夫にもさせて、「本物のふるさとを探そう」というラストになっていたのでした。
まあでも、レベッカの死因は原作どおりなので、モヤモヤがないわけではない(´ω`;)。後味がいいとは言えないのですが、やはり一級品の物語と美しいマンダレイを現代に蘇らせた、という点ではおおいに堪能しました。
(★★★★)
最終更新日 : 2020-11-24