Top Page › 読書の感想 › 横溝正史 › ▽『死仮面』横溝正史

2021 · 03 · 13 (Sat) 21:42

▽『死仮面』横溝正史

▽『死仮面』横溝正史(角川e文庫)
 八つ墓村の事件を解決した金田一耕助は、岡山県警に立ち寄り、磯川警部から奇妙な告白書を見せられる。ある女性の不気味なデス・マスクにまつわる話だ。東京に帰った金田一の元にその死んだ女性の姉が訪れるが──。(表題作)
・〈金田一耕助〉シリーズ

 去年の終わりの記事(『ソウルフル・ワールド』)でも書きましたが、ただいま本が読めない時期に来ています。脳が疲労しているのですね。
 以前もそういう時期があったのですが、その時はロマンス小説だけが読めました。そのおかげでこのブログをやっているのですが、今回はロマンスも読めない。
 しかし! なんと金田一耕助ものだけは読める、ということを発見しましたよ!
 何も読めないより読めるものがわずかでもあった方が気が楽になります。読めるものがあるなら、そのうち他のものも読めるようになるでしょうからね。多分(´ω`;)。まあ、あまり焦らず行きます。
 そんなわけで、金田一耕助ものの読んでいなかった短編集や中編などをKindleで買って読んでいます。『死仮面』も初読で、中編くらいの量かな。短編の『上海氏の蒐集品』も入っているのですが、なんとこれ、横溝正史の絶筆作品だそうですよ。

「死仮面」は、ある有名女子学園の女性経営者・夏代とその異父妹たちの物語です。金田一を訪ねたのは、夏代の上の妹で秘書の里枝、デス・マスクが取られた死んだ女性は一番下の妹・君子です。殺人を犯し、東京から岡山へ逃げた君子は、そこで知り合った芸術家の男に自分が死んだらデス・マスクを作って東京へ送るように、と遺言を残す。その後、学園には不気味な男の影がちらつくようになり、ついに夏代が殺されて──というお話。
 途中でどういう顛末かは察しがついてしまいましたが、それでも読まされてしまう。こちらの調子の悪さを考えると、これはすごい。途中でわかったら興味を失ってもおかしくないのにね。
 金田一のにわか助手みたいになる生徒の澄子さんがいい子で、これからもっと幸せになってほしいな。

「上海氏の蒐集品」──はっきり言ってしまうとこっちの方がよかった。というか、ミステリーとしてではなく、短編小説としてとても面白かった。
 絶筆というのは読んでから知ったのですが、それがこのような「金田一のいない世界線上の物語」になったというのは感慨深い。
 戦後の高度成長期のなかば、戦争で記憶を失った男がある少女のためにやったこととは──という話なのですが、ラストはなんとも切ない。意外性はあまりないけど、それはこの物語の本質ではないのです。
 彼がやったことは、この物語では読者以外誰にも知られない。それは彼も望んでいなかったことだろう。でもきっと、金田一がいれば、それは暴かれてしまう。金田一は、いい意味でも悪い意味でも、それを暴きたいと思うキャラであったのだな、とわかります。
 ずっと真実が明らかになることを描いてきた人が、こういう短編を最後に残したのか、と不思議な感動を覚えました。
 しかし本としての評価はどうしようかな(´ω`;)。「死仮面」は割とこぢんまりとしている印象なのですよね。「上海氏〜」の方がずっしり来る。『殺人鬼』に入っていた「百日紅の下にて」と同じくらいの満足感です。だけど……全体的には……このくらいにしとこうかな。「上海氏〜」は★★★★なんですけど。
(★★★☆)

最終更新日 : 2021-03-14

Comments







非公開コメント