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△『トマシーナ』ポール・ギャリコ

△『トマシーナ』ポール・ギャリコ(創元推理文庫)
 スコットランドの片田舎に住む男やもめのマクデューイ氏は、獣医であるにもかかわらず動物に愛情を抱かない。一人娘メアリ・ルーがかわいがっていた猫トマシーナが病気になっても、治療せずに安楽死を選んだ。メアリ・ルーはトマシーナの葬儀を行い、森に墓標を立てる。それを見守っていたのは、住人たちから“魔女”と呼ばれる女性、ローリだった。("Thomasina" by Paul Gallico,1957)



 高校時代に読んだものの再読です。新訳本。
 ポール・ギャリコといえば、『ジェニィ』が一番有名ですが(いや、ほんとは『ポセイドン・アドベンチャー』なのかもしれないけど)、猫文学としてなら『トマシーナ』も負けず劣らず名作です。トマシーナと彼女に乗り移ったバスト・ラーの語りは猫らしき誇り高さにあふれ、猫好きとしては読んでおかねばならぬもの。『ジェニィ』は私、読み返せないんで……(あの唯一無二のラストに打ちのめされて以来)。
 舞台はハイランドですよ。ロマ本読みにはおなじみですね。トマシーナは由緒ある家系の高貴なハイランダー。って、雑種なんだけどね。幼くして母を亡くしたメアリ・ルーはトマシーナをどこへ行くにも連れていくほど溺愛していた。それを奪った父と口をきくのを拒み、心を閉ざし、ついには生きる気力すらなくしてしまう。
 父親のマクデューイは、暴君のような自分の父から管理され、言いなりになるしかなかった人生を憎み、そこから救ってくれなかった上、妻まで奪った神を恨む。けど、親友は牧師で、娘のことは心から愛している。血も涙もないわけじゃないけど、夢への想いが強すぎ、叶えられなかった失望感が大きすぎて、彼自身の心も壊れたままです。
 この壊れた父子を救おうとするのがローリだけれど、彼女もまた閉ざされた人であったと思われます。いきさつはよくわからないけど、俗世では生きづらくて、若いうちから世捨人のようにならざるを得なかったような。アウトドア系のひきこもり?
 ギャリコの小説は、人間の内面の対比が鮮やかです。愛と冷酷が同居するという複雑な人間も厭わず描くし、わずかなことで人生が変わる瞬間を示そうとする。きれいなものと汚いものを、あるがまま常に平等に扱っている。海外文学には欠かせない要素である信仰についても、キリスト教の神について語ると同時に、古代エジプトの猫神も登場させる。物語の最後、マクデューイが信じた“神”は、どちらなのか。奇跡を与えたのは、誰なのか。
 でもそれって、多分どっちでもいいのです。つまりは、“神”を信じるのは、人だから。
 もしかしたら、一片の曇りなく“何か”を「信じる」ということが、一番難しいことなのかも、と思います。裏切られた時の凄まじい傷を恐れることもあるけれど、それにも負けずに信じられる人の強さを、私は信じたいな。
(★★★★☆)
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tag : ロマンス以外 創元推理文庫 ★★★★☆

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    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
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