2022 · 02 · 26 (Sat) 20:41 ✎
△『プロジェクト・ヘイル・メアリー』アンディ・ウィアー(早川書房)
目を覚ますと、彼は見知らぬ部屋にいた。変わったベッドの上に横たわっており、無機質な声がわけのわからない質問をしてくる。答えようとしてもうまく声が出ない。それでも懸命に応じるが、彼は疲れてすぐにまた眠り込んでしまう。("Project Hail Mary" by Andy Weir, 2021)

目を覚ますと、彼は見知らぬ部屋にいた。変わったベッドの上に横たわっており、無機質な声がわけのわからない質問をしてくる。答えようとしてもうまく声が出ない。それでも懸命に応じるが、彼は疲れてすぐにまた眠り込んでしまう。("Project Hail Mary" by Andy Weir, 2021)
あらすじとしては、これが精一杯だな。
出版されてから大変な話題で、映画化も決まっているSF小説です。アンディ・ウィアーは映画『オデッセイ』の原作『火星の人』の作者。映画は見ているけど、原作は読んでいない。こちらも面白いらしいけど。
今回はなんとなく原作を先に読みたくなって、Kindle版を購入。「内容についてなんの事前情報なしに読んでいただくのがいちばんいい」と巻末の山岸真さんの解説に書いてあるようなことが日本語訳出た直後から飛び交っていたので。こういう煽り文句にはけっこう弱いのですよね。
そのことについては、読み終わってからとある事情でKindleの目次を見ようと思ったら、なんと目次がないことで「徹底してんな」と実感。ある程度の情報(もちろんネタバレではなく)を載せている下巻の巻末にある解説にすらすぐにアクセスできないようになってる! けど、X-RAY(登場人物や用語の情報を拾い上げる機能)はある……。まあ、中身を読まないと「用語」だけ見てもわからないよね(´ω`;)。
このブログは一応「ネタバレブログ」なんですけど、この作品の決定的ネタバレをする勇気はなかなか湧かない。そうだな……せいぜい「宇宙もの」であり、主人公が目を覚ましたのはヘイル・メアリー号という宇宙船の中で、記憶を失っていて……他の乗組員はすでに亡くなっている。時間がたつにつれて、少しずつ記憶を取り戻していく主人公は、太陽の出力が減少しているため、30年ほどで地球の気温が下がり、生物が死滅する可能性があることを思い出す。それをなんとかするための「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の中心にいることも。彼は、太陽のエネルギーを「食っている」極小地球外生命体を発見した科学者だから。
「ヘイル・メアリー」というのは「アヴェ・マリア」のことなんだけど、
「アメリカンフットボールの試合終盤に、劣勢のチームが一発逆転を狙って投げる“神頼み”のロングパスを『ヘイル・メアリー(メリー)・パス』と呼ぶ」(解説より)
というように、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は、その極小地球外生命体をどうにかするためのぶっつけ本番ワンチャン計画のことなのです。
ただこの作品の本当の肝は、上巻の半分くらいから出てくる主人公の新たな「パートナー」なのですよね。
まあ、このくらいにしとこう(´ω`;)。
いろいろと考えさせられました。この間の『ドント・ルック・アップ』とかもそうだったけど、実際にこのような地球の危機に際して、人類は団結できるのかと。ただしこの作品の場合、そこら辺の調整をやるのは主人公ではなく別の人で、彼はただただ科学的な危機にぶつかっては乗り越え、ぶつかっては乗り越えをくり返すだけ。けれどそれはすべて命を失うことに直結しているから、もうメンタル弱々のおばちゃんは読んでてつらかった(´・ω・`)。それでも面白いから挫折しないですんだけど。
ウクライナ情勢とか見てると人類の団結はダメそう、としか思えないな……。この作品でも、ロシアは重要な役割を果たしてるので、ちょっと悲しくなりました。けどそれは、また別の話……。
SFだし、舞台はほぼ宇宙船の中なので、難しい用語もたくさん出てくるのだけど、よくわからなくてもその後の展開とその用語が直結しているので全然大丈夫だし、なんなら理解した気分になれる。それにしても、真面目な宇宙の話って未知の冒険フィクションというより、死ぬ可能性をどれだけ避けられるかというリアルなシミュレーションに思えてきて、本当に怖い。安心できる場所なんてない、というストレスにも満ちている。それがあまりにもリアルでねー、なんだかSFじゃないもの読んでる気分になる時もありました。一番SFって思ったのは、ラスト近くでわかる記憶喪失の解明部分だったな。「なんで?」と疑問に感じていたから、余計に。あそこはなんだか、すごくフィクションっぽかった。いや、実際にあるのかもしれないけど。
映画化、楽しみです。あれをどう描くのかなー。かわいいかなー。
[2/28追記]
「一番SFって思った」箇所、もう一つ思い出した。
「そこら辺の調整をやるのは主人公ではなく別の人」の「別の人」ですよ。彼女、超絶有能過ぎないですか……。こんな人、現実に存在するとは思えない。まさにスーパーヒーロー的な活躍なのですが、人々の記憶にそんなふうに残るかというとそれは多分違うし、本人もそれを自覚しているのが実に味わい深いです。
(★★★★)
出版されてから大変な話題で、映画化も決まっているSF小説です。アンディ・ウィアーは映画『オデッセイ』の原作『火星の人』の作者。映画は見ているけど、原作は読んでいない。こちらも面白いらしいけど。
今回はなんとなく原作を先に読みたくなって、Kindle版を購入。「内容についてなんの事前情報なしに読んでいただくのがいちばんいい」と巻末の山岸真さんの解説に書いてあるようなことが日本語訳出た直後から飛び交っていたので。こういう煽り文句にはけっこう弱いのですよね。
そのことについては、読み終わってからとある事情でKindleの目次を見ようと思ったら、なんと目次がないことで「徹底してんな」と実感。ある程度の情報(もちろんネタバレではなく)を載せている下巻の巻末にある解説にすらすぐにアクセスできないようになってる! けど、X-RAY(登場人物や用語の情報を拾い上げる機能)はある……。まあ、中身を読まないと「用語」だけ見てもわからないよね(´ω`;)。
このブログは一応「ネタバレブログ」なんですけど、この作品の決定的ネタバレをする勇気はなかなか湧かない。そうだな……せいぜい「宇宙もの」であり、主人公が目を覚ましたのはヘイル・メアリー号という宇宙船の中で、記憶を失っていて……他の乗組員はすでに亡くなっている。時間がたつにつれて、少しずつ記憶を取り戻していく主人公は、太陽の出力が減少しているため、30年ほどで地球の気温が下がり、生物が死滅する可能性があることを思い出す。それをなんとかするための「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の中心にいることも。彼は、太陽のエネルギーを「食っている」極小地球外生命体を発見した科学者だから。
「ヘイル・メアリー」というのは「アヴェ・マリア」のことなんだけど、
「アメリカンフットボールの試合終盤に、劣勢のチームが一発逆転を狙って投げる“神頼み”のロングパスを『ヘイル・メアリー(メリー)・パス』と呼ぶ」(解説より)
というように、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は、その極小地球外生命体をどうにかするためのぶっつけ本番ワンチャン計画のことなのです。
ただこの作品の本当の肝は、上巻の半分くらいから出てくる主人公の新たな「パートナー」なのですよね。
まあ、このくらいにしとこう(´ω`;)。
いろいろと考えさせられました。この間の『ドント・ルック・アップ』とかもそうだったけど、実際にこのような地球の危機に際して、人類は団結できるのかと。ただしこの作品の場合、そこら辺の調整をやるのは主人公ではなく別の人で、彼はただただ科学的な危機にぶつかっては乗り越え、ぶつかっては乗り越えをくり返すだけ。けれどそれはすべて命を失うことに直結しているから、もうメンタル弱々のおばちゃんは読んでてつらかった(´・ω・`)。それでも面白いから挫折しないですんだけど。
ウクライナ情勢とか見てると人類の団結はダメそう、としか思えないな……。この作品でも、ロシアは重要な役割を果たしてるので、ちょっと悲しくなりました。けどそれは、また別の話……。
SFだし、舞台はほぼ宇宙船の中なので、難しい用語もたくさん出てくるのだけど、よくわからなくてもその後の展開とその用語が直結しているので全然大丈夫だし、なんなら理解した気分になれる。それにしても、真面目な宇宙の話って未知の冒険フィクションというより、死ぬ可能性をどれだけ避けられるかというリアルなシミュレーションに思えてきて、本当に怖い。安心できる場所なんてない、というストレスにも満ちている。それがあまりにもリアルでねー、なんだかSFじゃないもの読んでる気分になる時もありました。一番SFって思ったのは、ラスト近くでわかる記憶喪失の解明部分だったな。「なんで?」と疑問に感じていたから、余計に。あそこはなんだか、すごくフィクションっぽかった。いや、実際にあるのかもしれないけど。
映画化、楽しみです。あれをどう描くのかなー。かわいいかなー。
[2/28追記]
「一番SFって思った」箇所、もう一つ思い出した。
「そこら辺の調整をやるのは主人公ではなく別の人」の「別の人」ですよ。彼女、超絶有能過ぎないですか……。こんな人、現実に存在するとは思えない。まさにスーパーヒーロー的な活躍なのですが、人々の記憶にそんなふうに残るかというとそれは多分違うし、本人もそれを自覚しているのが実に味わい深いです。
(★★★★)
最終更新日 : 2022-04-14