Top Page › 映画の感想 › 旧作の感想 › □『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』

2022 · 05 · 16 (Mon) 13:35

□『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』

□『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』"Stuntwomen: The Untold Hollywood Story" 2020(Netflix)
 映画史に残る名アクションシーンを演じてきた、スタントウーマンたち。命がけで危険なスタントに挑んできた女性たちの歴史と、プロフェッショナルな素顔に迫る。(Netflixの紹介文より)(監督:エイプリル・ライト 出演:ミシェル・ロドリゲス、エイミー・ジョンソン、アリマ・ドーシー、シャーリーン・ロイヤー、ジーニー・エッパー、他)

 たまに昔の子供向け特撮ドラマを見ると、見ているだけでも怖いアクションシーンがてんこ盛りだったりします。命綱なし(にしか見えない)で煙突やケーブルカーや廃墟で格闘したり、子供を宙吊りにしたり、車の屋根にしがみついたり、バイクで引きずられたりと枚挙にいとまがない。東映の作品が多いと感じるのは、単純に私がそれ系のものばかり見ているせいなのかな。円谷プロや東宝のではそれほど憶えがないんだけれども。
 この『スタントウーマン』の冒頭には、そういうのとあまり変わらないハリウッド黎明期の女性スタントの怖いシーンがあります。バイクから機関車に乗り移ったり、列車に飛びついたり、落馬したり、馬から車に飛び移ったり……。
 しかしこれも、賃金が安いから、という理由があったようで。移民や女性の活躍で支えられていた映画が「儲かる」と知られてしまうと、男性たちが入り込んできて、女優のスタントも男性がやるようになってしまう。
 途中に出てきた映画(?)のシーンはなんなの、女性のスタントシーンをこなした人(実は男性)に女の人が近寄って、
「女性なのにすごいわ。サインくださる?」
 って言ったら、「キスしてからだ!」って言って勝手にキスしてカツラを脱ぐシーン。「なんだお前(゚д゚)」と思いましたよ。まあ、そういう時代の象徴的なシーンだよね……。
 そういう時期を経て、次第に女性のスタントは女性が演るようになってくる。スタントと言っても、女優の代役やアクションシーンばかりではなく、爆発や銃撃などのシーンでは通行人であっても危険と段取りを知った上で演じなくてはならない。日本のスーツアクターの人も、そういうことやってるって聞いたことあるな。
 得意なことに特化した人もいれば、どんな場合にも対処する人もいて、自分が何を売りにするのか、ということを模索するのは、どの職業でも同じことだよね……。いつまでもできることではないから、と思いつつ、この映画に出てくるスタントウーマンたちは、鍛錬して長く続けていけるように努力している。若い人たちがもっと仕事しやすくするために尽力していると感じました。
 そういう女性スタント業界を長年生き抜いてきた人のインタビューで、一番印象的だったのは、テレビドラマ版『ワンダーウーマン』でリンダ・カーターのスタントを務めたジーニー・エッパー。『ワンダーウーマン』、大好きだったからー。なつかしい。
 今はその頃と比べても絶対的に求められるレベルが上っているのでしょうし、ある程度は女優本人が演じることも求められる。安全策やそれを支える技術をちゃんとしていないと冒頭に書いた怖いスタントみたいに余計なノイズが入ってきて、見ている方としても安心して作品世界に入り込めない。つまり、スタントウーマンたちを含めた裏方の人たちって、そういうノイズを取り除こうと努力してくれている人たちなんだよね。労働環境とかも含めてさ(この作品でも、取り上げられていたけど。ひどい話だ(´・ω・`))。映画業界のいやなニュースが流れるたびに、フラットに作品を見ることができなくなったりするじゃないですか。それはやっぱり、残念なことですよ。
 観客たちが楽しく映画を見られるよう心砕く人たちも、こっちと同様楽しく働けるといいな、と思います。いろいろあらわになる話はつらいものも多い……。でもそれは多分、過渡期だろうから──これからよくなっていくと信じたいです。
(★★★★)
[Tag] * ★★★★

最終更新日 : 2022-05-16

Comments







非公開コメント